入札の予定価格とは?事前公表のメリット・デメリットと決め方|東京のWEB制作会社・ホームページ制作会社|株式会社GIG

入札の予定価格とは?事前公表のメリット・デメリットと決め方

2024-06-04 制作・開発

入札の予定価格の決め方は、過去の取引や市場調査を分析して適正な価格を設定するのが一般的です。

予定価格や公表のタイミングによっては、競争が制限されたり、落札価格が安くなりすぎたりとリスクがあります。適正な予定価格を決めるには、案件の内容を把握しておくことが大切です。

この記事では、入札予定価格の決め方について解説します。事前公表・非公表のメリットとデメリットについてもまとめました。入札担当者で適正な価格で事業者を選びたい方は、ぜひ参考になさってください。

入札の予定価格とは

予定価格とは、公共入札における参考見積のこと。入札で支払われるお金はすべて税金のため、できるだけ低い価格で発注するために、予定価格を決めておくのです。

競争入札では、この予定価格を下回る金額で入札をした事業者が落札となるわけです。

予定価格は価格を重視する競争入札だけではなく、随意契約でも契約金額を決めるために設定されます(予算決算及び会計令第99条5項)。

随意契約の予定価格は、地方自治体法で定められており、県や政令指定都市では100万円以下、他自治体では50万円以下です。事前に予定価格で契約金額を決めておくことで、競争入札の手間を省くことができます。

関連記事:システム開発の入札・調達方法は?入札の流れと成功させるコツ

入札予定価格の公表方法

入札予定価格は、入札公告時に公表する「事前公表」と落札決定時に公表する「事後公表(事前非公表)」の2つの方法があります。それぞれどのような特徴があるのか解説します。

事前公表

事前公表は、入札の予定価格を公告するときに公表する方法です。事前に基準となる価格がわかるため、透明性と公正性の確保も期待されていました。

しかし、実際は事業者間の談合や職員への賄賂など、法令違反を助長していることが発覚。価格競争の激化によるダンピング受注(低下価格受注)も多発したのです。さらに受注後の不履行などの問題も多発しました。

そのため、地方自治体によっては、予定価格の事前公表が競争に制限を設けてしまうとして、事前公表を取りやめているところもあります。

参考:総務省「予定価格の事前公表のメリット・デメリット

事後公表(事前非公表)

落札結果の公開時に公表する方法です。事前公表は不正や不履行などのリスクがあるため、近年は予定価格の事後公表(事前非公表)が増えてきました。

事後公表は予定価格が非公表ということもあり、事業者の技術力や実績等が重視されます。公的機関は履行可能な事業者を選定しやすいうえに、合理的な価格を提案しやすくなります。

事前公表よりも効率よく、技術力のある事業者を選定することが可能です。

入札予定価格の設定基準

落札相場は、予定価格の約80%です。これより高すぎても低すぎてもいけません。競争入札と随意契約で入札予定価格がどのように決まるのか、それぞれの設定基準について解説します。

一般競争入札・指名競争入札

予決令第80条2項では、以下のように定められています。

予定価格は、契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない。
出典:e-GOV法令検索「予算決算及び会計令


競争入札の入札予定価格を設定するときは、以下の項目を考慮します。

取引の実例価格

過去の類似案件における取引価格、市場調査を参考に設定する

需給の状況

市場における需要と供給のバランスを考慮して設定する

履行の難易度

契約履行に必要な技術やリソースの難易度を評価して設定する

数量・履行期間

契約業務の数量や履行期間を考慮して設定する


これらの項目をもとに、競争入札の予定価格を適正に設定することが可能です。ただし、落札実績を持つ事業者は、その経験から予定価格の範囲を推測できてしまいます。

そのため、入札担当者は市場調査や履行難易度、履行期間などのバランスが取れた価格を設定することが大切です。

公的機関の負担も大きいですが、参加事業者も提案書などの用意が必要なため、プロセスにはゆとりをもたせておくとよいでしょう。

随意契約

随意契約で予定価格を設定する理由は、効率的に契約を結ぶためです。契約後に契約金額を決めるための基準として設定されるため、最終的な発注価格は前後します。

契約金額は地方自治体法や予算決算及び会計令にもとづいて、各自治体で規則として定められています。原則、市場価格よりも低い価格で契約を結ばなければなりません。

そのため、以下の価格が上限として設定されています。

自治体

予定価格の上限

都道府県・政令指定都市

100万円

市町村

50万円

しかし、Webシステムを調達する場合、その相場は数百万円以上です。市場相場を踏まえると、発注できる業者や案件の範囲が限られてしまいます。

随意契約では50万円または100万円を超える発注や、意図的に分割をして発注する行為は禁じられています。

そのため、予定価格の上限を超えると判断したときは随意契約ではなく、一般競争入札やほかの入札方式を検討しましょう。

競争入札から随意契約へ切り替えたときは、競争入札で定めた当初の予定価格と条件を変更することはできません(予決令99条の2項)。この場合に限り、予定価格を分割して契約を結ぶことができます。

プロポーザル方式

プロポーザル方式で予定価格を決めるときは、提案内容や技術力、実績などを総合的に評価して設定します。

プロポーザル方式は地方自治体法第167条にもとづき、特定の条件下では予定価格の上限を超えたときに結べる随意契約です。緊急性や専門的な技術が求められる以下のような案件が対象となります。

・システム開発
・コンサルティング業務など

公的機関にとっては市場価格より低く、技術力のすぐれた事業者と契約を結べるメリットがあります。

随意契約は予定価格に上限が設けられていますが、プロポーザル方式では提案内容によっては予定価格を超える契約の締結が可能です。

調達したい案件にあわせて、予算も踏まえつつしっかりと吟味をして事業者を選ぶことができます。

入札予定価格を決める要素

入札予定価格は、調達仕様書をもとに案件の内容を理解したうえで決めていきます。入札予定価格を決めるにあたって考慮すべき要素について解説します。

プロジェクトの難易度

専門的な技術や知識が求められる案件の場合、難易度が高くなるため、それなりのリソースを確保しなければなりません。またプロジェクトの規模が大きくなると、管理や調整も複雑化するため、難易度が高まります。

つまり難易度が上がると、多くのリソースが必要となるわけです。ほかにも以下の要素が難易度に影響を与えます。

・法的規制・遵守
・制作環境
・プロジェクトの期間

プロジェクトに関するこれらの要素を確認し、適切なリソースの確保やリスクを管理して難易度を設定しましょう。

技術的要件

技術的要件は、そのプロジェクトを達成するために必要な技術力がある場合、予定価格も挙げなければなりません。

難易度と通じるものがありますが、システム開発でいうとプラットフォームごとの開発環境やCMSのカスタマイズ、アクセシビリティ基準を満たすための追加作業などが該当します。

一般的な技術や知識よりも、技術力が必要なときは相当の予定価格を設定してほうがよいでしょう。

プロジェクトの納入期限

システム開発など役務の提供では、工数が予定価格に影響します。いつまでに成果物を求めているのか、納入期限を決めたうえで具体的な履行期間を設定しましょう。

プロセスが複数に分かれる場合、各プロセスの納期も明確に決めておいてください。納入期限の長短により、必要なリソースが変わるため予定価格にも影響します。

関連記事:工数とは?人日・人月の定義、計算方法、工数管理のポイントを解説

市場価格・相場

適切な予定価格を設定するには、市場相場の理解が必要です。一般的にWebシステムの相場は200万円以上、なかには5,000万円を超えるものもあります。

開発に携わる人数や期間で大きく変わるため、どれくらいかかるのか知りたいときは似たようなプロジェクトの価格設定を参考にするとよいでしょう。

関連記事:システム開発の費用/料金相場はいくら?現役エンジニアが解説!
関連記事:Webサイト制作の見積もりはどう決まる?費用内訳と依頼時のポイントを解説

入札予定価格の決め方

予定価格の決め方は「市場価格方式」と「原価計算方式」が一般的です。それぞれの方式について解説します。

市場価格方式

市場価格方式は、過去の落札価格や見積もりなどから予定価格を決める方法です。

競争入札のようにより良く安いものを選ぶ場合、案件そのものの低価格化が進んでしまう懸念があります。

市場相場から逸脱した価格での発注が当たり前となると、相場が下がり、それだけ人件費を割くことが難しくなってしまうためです。

市場の値崩れの原因を作らないために、まずはしっかりと市場を調査することが大切です。

これまでと同じような取引から落札額を調査します。プロジェクトの遂行に必要なシステムやソフトウェアがある場合、それらの購入費用も調査しておくとコストを把握することが可能です。

原価計算方式

原価計算方式は、仕様書やシステムの設計書にもとづいて「経費」を割り出して、それらを積み増し計算する方法です。

たとえば以下のような経費があります。

直接材料費

サーバー代
ソフトウェアライセンス費用

直接労務費

プログラマーやデザイナーなどの人件費

直接経費

テストツール、分析ツールなどの費用

間接材料費

デザインソフトのライセンス費用

間接労務費

コンテンツ管理をおこなうスタッフの人件費

間接経費

オフィスの賃料や光熱費

利益

プロジェクトの適正な利益率

こうした各項目の費用を詳細に見積もり、利益をくわえてからかかるコストを求めます。

新たな要件が追加された場合、積み増していく形で計算すればよいため、プロジェクトの変化にも柔軟に対応が可能です。

WTO協定の適用基準額も考慮する

国や地方公共団体が基準額以上の物品・役務の調達をする場合、WTO政府調達協定の対象です。国際的な政府調達において、透明性と公平性を確保するためのフレームを提供しています。

WTO協定は一定の条件をクリアしていれば、海外企業も入札に参加してもらうことが可能です。対象は都道府県、政令指定都市、中核都市(特例政令第2条、第3条)になります。

役務・サービスの適用基準額(予定価格)は3,600万円以上※です。一般競争入札の予定価格が適用基準額3,600万円以上となる場合、この規定が適用されます。

大規模なシステム開発や技術的に複雑なプロジェクトの調達もしやすくなるでしょう。

※2024年4月1日~2026年3月31日までの契約の基準額は3,000万円
参考:総務省「地方公共団体の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令

入札予定価格を決めるポイント

入札予定価格を決めるときは、いくつか押さえてほしいポイントがあります。

  • 入札条件を確認する
  • 2人以上から見積もりを取る
  • 過去の取引価格を確認する
  • 品質と価格のバランスを考慮する
  • 予算の範囲内で予定価格を決める
  • 専門家にアドバイスを求める

それぞれ簡単に解説します。

入札条件を明確にする

入札予定価格を決めるときは、まず以下の入札条件を明確にすることがポイントです。

プロジェクトの範囲

具体的な作業内容、作業範囲

技術要件

必要な技術や仕様

納期

プロジェクト完了までのスケジュール

品質基準

成果物に求める品質基準

評価基準

評価方法や選定基準

これらの条件は、入札公告時に事業者へ提供する仕様書などにまとめて提供します。これにより入札に参加する事業者が入札条件を理解し、公平に参加することが可能です。

2人以上から見積もりを取る

随意契約で予定価格を決めるときは、予決令(予算決算及び会計令)で以下のように定められています。

契約担当官等は、随意契約によろうとするときはなるべく2人以上の者から見積書を徴さなければならない。(予欠令第99条の6)

見積もりを取るときは、公平性と透明性を確保するため、事前に要求事項や納期などを明確にしたうえで見積依頼書を準備します。

見積もりが適正かどうかを判断するために、事前に市場調査をして相場を把握しておくことも大切です。このほかにも評価基準も策定しておきます。

随意契約は競争入札よりも契約をスムーズに結べることがメリットではありますが、適正な予定価格を決めるには、こうした準備が必要です。

少しでも時短化するには、見積依頼書のテンプレートの作成や信頼できる事業者のリストアップをしておくとよいでしょう。

過去の取引価格を確認する

競争入札の予定価格を決めるときは、過去の取引価格を参考にします。国の調達案件は『調達ポータル』で管理されており、落札実績のオープンデータをExcelファイルでダウンロードすることが可能です。

調達案件の名称と落札価格、事業者名などを確認できます。

地方自治体の過去の調達案件は、自治体のホームページの「入札情報」や「契約情報」のページを確認しましょう。東京都や大阪府などは独自で運用している調達システムがあり、入札結果の検索が可能です。

東京都電子調達システム
大阪府電子調達(電子入札)システム
かながわ電子入札共同システム

品質と価格のバランスを考慮する

調達するときは、案件の難易度によって価格を変えなければいけません。同じ業務内容でも、環境が異なることで難易度が高まることもあります。

過去の落札実績と明らかに環境や仕様が異なると判断できるときは、予定価格を上げることも検討することが大切です。

予算の範囲内で予定価格を決める

入札予定価格を決めるときに参考にされることが多いのが、事業者から取得した見積もりです。

見積もりをもとに、必要な経費や市場価格などを踏まえて、予算の範囲内で適正な入札予定価格を決定します。

適正であるかどうかは監査委員などが確認をして、修正が必要であれば修正をします。

官公庁の入札案件では、価格を決めるときに官民競争入札の実施に関する事務を担当する職員と、官民競争入札に参加する事務を担当する職員で、妥当かどうかを決めます。

専門家にアドバイスを求める

入札予定価格をどのように決めたらよいのかわからないときは、専門家のアドバイスを受けましょう。

システム開発の場合、企画・開発・運用管理に係る費用について、妥当なものであるか審査・評価をしたうえで決めることが大切です。

入札予定価格にもとづいた落札者の選定方法

近年、極端に下回る価格での入札が増えており、低入札価格制度及び最低制限価格制度が導入されています(地方自治体法第167条の1項・2項)。

これは基本的に最低価格で入札した事業者以外を落札者にできる制度です。それぞれの特徴について解説します。

低入札価格調査制度

「低入札価格調査制度」は、一般競争入札で入札価格が予定価格を大きく下回る場合に、その理由を調査する制度です(地方自治体法第167条10項1)。

システム開発を調達する場合、価格を重視すると低価格化が進み、調達できるシステムの質が落ちてしまうことがあります。これは市場価格にも影響を与えるため、あまりにも低い予定価格の場合、理由を調査するのです。

これにより、不当に安価な入札が減少し、品質を確保することができます。

参考:総務省「地方公共団体の入札・契約制度

最低制限価格制度

「最低制限価格制度」は、予定価格の最低制限範囲を下回る入札を失落とする方法です(地方自治体法第167条の10項2)。

一般競争入札で事前公表にもかかわらず、予定価格を下回った業者は一律失格とします。

入札の最低価格が予定価格を上回った場合、予定価格を下回るまでやり直したり随意契約への切り替えを検討したりすることが可能です(地方自治体法第167条8項)。もし何回やっても下回らないときは、原則「入札不落」となります。

一般的に、事前公表した予定価格を上回るときは入札を辞退するように定めている自治体もあるようです。自治体の規則を確認してください。

総合評価方式

総合評価方式は、価格だけではなく、事業者の提案力と技術力、過去の実績を総合的に評価する選定方法です。この選定方法はシステム開発など価格だけではなく、技術力や専門性が重視される案件に適用されます。

落札者の決め方は、価格よりも技術力を重視する除算方式と、技術力とあわせて価格も評価する加算方式の2種類です。

どちらを使用するのかは、プロジェクトの特性などを見て判断します。

プロポーザル方式で選ぶ方法もある

事業者がもつ独自の技術力を重視して評価したいときは、プロポーザル方式を選ぶ方法もあります。プロポーザル方式は、具体的な提案内容と技術解決策を重視しており、システム開発やWebサイト制作など、複雑なプロジェクトの調達に向いています。

とくにシステム開発は高額な取引が多く、スムーズに随意契約を結ぶのは困難なケースもあります。

品質を確保しつつ、適切な価格で委託するならプロポーザル方式で選定することを検討したほうがよいでしょう。

適正な入札予定価格を決めて、より優れた事業者を選定するときはプロジェクトの要件や目標にあわせて最適な方法を選ぶことが大切です。

Webサイト制作・システム構築はGIGにおまかせください

適正な予定価格を決めるには、過去の実績や市場価格などの調査が必要です。予定価格を決めておくことで、プロジェクトの予算が適正かどうかを判断したり、入札の透明性と公平性をたもったりすることができます。

しかし、システム開発やWebサイト制作など高額な取引の場合、プロジェクトを完遂させるための技術力を評価することが大切です。プロポーザル方式で調達する際に参加事業者の選定にお悩みなら、東京のWeb制作会社、株式会社GIGへご相談ください。

GIGはWebサイト制作の一般競争入札において落札実績があり、独立行政法人からのご依頼も受けています。大手企業からの依頼も多く、さまざまな要望に対応してまいりました。

Webサイト制作やシステム構築など専門性が高いプロジェクトの進め方や要件定義なども相談いただけます。以下より、お気軽にお問い合わせください。

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