AI時代の雰囲気読書「バイブリーディング」とは。 これからは“人に読まれない”前提のコンテンツ戦略が必要になるか?|東京のWEB制作会社・ホームページ制作会社|株式会社GIG
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AI時代の雰囲気読書「バイブリーディング」とは。 これからは“人に読まれない”前提のコンテンツ戦略が必要になるか?
2025-08-21 制作・開発

生成AIを使いこなしている先駆者たちが、もはや「コンテンツを読んでいない」のはご存じですか?
もしかすると、この記事も読まれていないかもしれません。読んでいるのは人ではなく……AIなのです。
これからの時代、コンテンツは人に直接読まれるのではなく、AIが読み解き、その要約を人間が読む「バイブリーディング」が当たり前になることが予想されます。(その是非はともかくとして)
この記事では、そんな狂った未来において、コンテンツクリエイターがどう生き残り、読者を集め、収益を上げていくのか。自分たちのコンテンツが、AIに「選ばれる」ための具体的な4つの戦略を解説します。
著者:内田 一良(じきるう)
早稲田大学および同大学院卒。株式会社GIGにてMarketing事業部長。日本最大級のフリーランス・副業メディア『Workship MAGAZINE』のほか、数々のメディアのプロデュースを担当。メディア運営、コンテンツ制作、SEO、SNS、AIに詳しい。ウイスキーがお好き。
そもそもバイブリーディングとは?AIがコンテンツを読む時代
「バイブリーディング(Vibe Reading)」とは、コンテンツをまずAIに読んでもらい、AIが要約・解説したものを人間が読むという、AI時代に生まれた新しいコンテンツ消費体験です。……というか、筆者である私がたったいま提唱したものです(笑)。
「バイブリーディング」という概念を正しく理解いただくには、その基盤となる「バイブコーディング」の考え方から説明する必要があります。バイブリーディングは、バイブコーディングが提唱するAIとの協働のあり方を、コンテンツの消費体験に応用したものだからです。
「バイブコーディング(Vibe Coding)」とは2025年初頭、OpenAI共同創業者であるアンドレイ・カーパシー氏によって提唱された、AI時代の新しいプログラミング手法です。カーパシー氏は「コードの細部にこだわらず、AIに“雰囲気(vibe)”や意図を自然言語で伝え、AIに実装を全面的に委ねる」というスタイルを「バイブコーディング」と名付けました。
バイブコーディングの最大の特徴は、従来の「自分でコードを書く」から「AIと対話しながら、アイデアや要件を自然言語で伝える」へと開発プロセスを変化させた点にあります。この手法は、プログラミング経験の少ない人でもソフトウェア開発に参加できる「開発の民主化」を促進した点で評価されています。一方で、AI任せにしすぎることで品質やセキュリティ、保守性の問題、コードの理解不足によるトラブルも指摘されています。
……こうしたバイブコーディングの考え方をコンテンツ消費体験に応用したのが、筆者が提唱する「バイブリーディング」です。生成AIを活用してコンテンツを要約し、ユーザーがその要約を読んで手軽に(雰囲気で)情報を得たり、あるいはコンテンツそのものをAIとの「壁打ち相手」として活用したりしながら、より深い理解や新たな発想を得るという、AIを通した新しい読書体験を指します。
バイブコーディングが「AIに意図を伝え、AIが実装する」ことで開発のあり方を変えたように、バイブリーディングは「AIにコンテンツを解釈させ、AIが人間に最適化された形で提示する」ことで、コンテンツの消費体験を根本から変える可能性を秘めています。
バイブリーディングの具体例
「で、結局バイブリーディングってどういうものなの?」という声が聞こえてきそうなので、ここからは具体例をご紹介します。
もっともわかりやすいのは、読みたい(=とりあえずざっと内容を知りたい)記事のURLをChatGPTに伝えて「この記事を要約して」とお願いするケースでしょう。
▲生成AIに記事を要約してもらった様子(ChatGPT)
上記のように、とりあえず雑に生成AIに投げて要約してもらうだけでも、普通に記事を読むよりは格段に早く情報摂取できるかと思います。
また、最近は『Dia』などのAI搭載ブラウザも登場しており、ブラウザ上でそのまま記事を要約してもらう体験も増えてきています。
▲画面左側に記事ページを移し、画面右側で記事の要約を聞く様子(Dia)
また先述したとおり、その記事の内容をもとに生成AIをとおして「壁打ち」することも可能です。
▲記事を提示しながら「生成AIに自社ブランドを表示してもらうためにはどんな施策が有効なの?」と聞き、記事の内容をベースに生成AIに答えてもらっている様子(Diaを例として使っていますが、ChatGPTや他の生成AIでも可能です)
壁打ちをすることで、「ただ記事を読んで終わり」ではなく、「自分の知識としての定着」を高めることもできます。これは通常の読書体験よりも優れている点かもしれません。
その他、一般的なWeb記事だけでなく、最近はPDFや論文データ / 動画 / 音声などを読み取り、生成AIに要約・壁打ちすることもできます。
▲YouTube動画の内容をテキストで要約してもらっている様子(Diaの例ばっかですいません、Dia超便利なんです…)
コンテンツの形式を問わず生成AIが処理できるようになってきている現在において、生成AIをとおしたバイブリーディングはこれからますます普及すると筆者は考えています。
バイブリーディングの現状とこれから
とはいえ、現状バイブリーディングはどの程度行われているのでしょうか?
簡易的ではありますが、以下は筆者のXアカウントにて実施した、Web記事の読書体験に関するアンケート調査です。
「読んだらきっと役に立つけど、読むのに体力の要りそうなWeb記事に出会ったとき、あなたはどうしていますか?」という“よくあるシチュエーション”の質問に対し、18.7%の人が「生成AIに要約してもらう」と答えています。あくまで筆者のXアカウント上での簡易的な調査ではありますが、すでに5人に1人程度がバイブリーディングを事実上行っていることがうかがえますね。
また、58.7%の人が「ひとまずブックマーク or ブラウザで開いておく」という読書の先延ばし行為を行なっているほか、9.7%の人が「読むのを諦める」という選択をしています。別の角度から捉えると、彼らは生成AIを使ってバイブリーディングを行えば、先延ばしや諦めを選ばずに済み、読書体験を拡張できる余地があるのです。
このように、バイブリーディングはすでに一定数の人によって行われており、今後ますます広まる可能性を秘めているのです。
バイブリーディングのメリット
バイブリーディングは単なる効率化だけでなく、知識の深化や新しい価値創出にもつながる、次世代の情報消費スタイルとして多くのメリットがあります。
- 情報取得を“超”効率化できる:
長文や専門的な記事でも、AIが要点を抽出してくれるため、短時間でわかりやすく情報にアクセスできます。「読むのに体力が要る」記事も、AI要約によって読むハードルを大幅に下げられます。 - 知識の定着・深掘りを進められる:
AIを壁打ち相手として活用することで、要約だけでなく、内容の理解を深めたり、自分の疑問をその場で解消できます。単なる受動的な読書から、能動的な学びへと体験を進化させられます。 - 多様なコンテンツ形式に対応できる:
テキストだけでなく、PDF、論文、動画、音声など、さまざまな形式の情報をAIが処理・要約できるため、情報収集の幅が広がります。とくに動画や音声など、自身で情報取得速度をコントロールしにくいフォーマットにおいては効果を発揮します。 - 情報をパーソナライズ化させて取得できる:
AIがユーザーの関心や目的に合わせて要約や解説を最適化することで、より自分に合った情報摂取が可能になります。 - 読書体験の拡張と新たな価値創出:
ただ読むだけでなく、AIを介して「自分の知識として定着させる」「新しい発想を得る」など、従来の読書体験を超えた価値が生まれます。
バイブリーディングのデメリット
バイブリーディングの主なデメリットとして、コンテンツを“雰囲気”で読むことによる消費の質や深度の低下リスクが挙げられます。
- 情報の深度・文脈を失う恐れがある:
AIによって要点を抽出できる一方で、細かなニュアンスや文脈、著者の意図、感情表現などは削ぎ落とされやすい傾向にあります。本来のコンテンツが持つ「空気感」や「ストーリー性」が伝わりにくくなるのです。 - 誤要約・誤解釈のリスクがある:
AIの要約精度は年々高まってきていますが、未だに誤解釈や重要ポイントの抜け落ちが発生するリスクがあります。とくに専門性の高い分野や複雑な議論では、仮に誤った抽出をしてしまった場合、ファクトチェックも難しいという欠点があります。 - 情報の均質化・独自性の消失の恐れがある:
AI要約だけを読むことで、情報摂取が画一的になり、独自の視点や新しい発見が減少する恐れがあります。 - 受動的なコンテンツ消費が進む可能性も:
要約だけを読むことで、深く考えたり自分で調べたりする能動的な学びの機会が減る恐れがあります。情報の「受け身化」が進み、思考力やリテラシーの低下につながる懸念も。 - 収益モデルの課題がある:
どちらかというとコンテンツ提供者側の視点ですが、AI要約が主流になると、元記事へのアクセスや広告収益が減少し、コンテンツビジネスの持続性に影響を与える可能性もあります。
バイブリーディング時代において、コンテンツは“人に読まれない”のか?
結論から言えば、「半分はYESで、半分はNO」です。
バイブリーディングが普及した世界では、多くのコンテンツがAIによる一次フィルタリング、つまり「AIに読まれる」というステップを経ることになります。ユーザーはまずAIが生成した要約に目を通し、そこで興味を惹かれたり、より深く知る必要があると判断した場合にのみ、初めて元となるコンテンツにアクセスするようになるでしょう。
つまり、「AIに評価されないコンテンツは、人に読まれる機会すら失う」という厳しい現実が訪れるのです。
しかし逆に言えば、AIのフィルタリングを通過し、「これは読む価値がある」と判断されたコンテンツは、これまで以上に熱心な読者に読まれることになります。AIによる要約ではこぼれ落ちてしまう書き手の熱量、文脈、独自の視点、そして行間に込められた“Vibe(雰囲気)”を求めて、ユーザーは元記事へと回帰するのです。
そのためこれからのコンテンツクリエイターは、「AIに読ませる部分」と「人に直接読ませる部分」を明確に意識した、二段構えのコンテンツ戦略が必要になるかもしれません。
AIに“選ばれる”ための4つのコンテンツ戦略
では、どうすれば自分たちのコンテンツをAIに選ばれ、その先にいる読者に届けることができるのでしょうか。ここでは、バイブリーディング時代を生き抜くための具体的な4つの戦略を解説します。
戦略1. AIフレンドリーな構造化と意味の明示
まず大前提として、AIがコンテンツの内容を正確に理解できなければ話になりません。AIに「これは質の高い、信頼できる情報だ」と認識させるための技術的な最適化は必須です。
たとえば以下のようなコンテンツ構成が必要になります。
- 明確な階層構造:
<h1>、<h2>、<h3>といった見出しタグを正しく使い、記事の論理的な構造をAIに伝えます。 - 結論ファースト:
文章構成の技術として有名なPREP法のように、まず結論から述べ、その後に理由や具体例を続ける構成は、AIにとっても人間にとっても理解しやすい形式です。 - 構造化データの実装:
Schema.orgなどを用いて、記事の内容(例えば「レシピ」「レビュー」「イベント情報」など)をAIが解釈できる形式でマークアップします。これにより検索エンジンやAIは、コンテンツの「意味」をより深く理解できるようになります。
これは従来のSEO(検索エンジン最適化)と考え方が似ていますが、これからは検索エンジンだけでなく、あらゆる生成AIを読者として想定したLLMO(大規模言語モデル最適化)が重要になるのです。
戦略2. AIには生成できない「一次情報」と「体験価値」の提供
AIは既存の情報を学習してテキストを生成するため、まだ世に出ていない「一次情報」や、書き手自身の「独自の体験」を含んだコンテンツは極めて価値が高くなります。
たとえば以下のようなコンテンツはAIに評価されやすいです。
- 独自の調査・アンケート:
自分で実施した調査データやアンケート結果は、他のどこにもないユニークな情報源です。 - インタビュー記事:
特定の分野の専門家や、ユニークな経験を持つ人物へのインタビューは、AIには決して真似できない深みとリアリティを生み出します。 - 体験談・レビュー:
実際に製品を使用した感想や、現地に足を運んだからこそ書けるレポートは、単なるスペックの羅列ではない「生きた情報」として価値を持ちます。
AIによる要約では、こうした情報が持つ手触り感や信頼性は失われがちです。「この人の体験談だからこそ読みたい」と思わせるコンテンツが、AIのフィルタリングを突破する鍵となります。
戦略3. 「文脈」と「世界観」でファンを創る
さきほどバイブリーディングのデメリットとして「文脈の喪失」を挙げました。これを逆手に取り、単一の記事だけでは伝わらない「文脈」や「世界観」をメディア全体で構築する戦略が有効です。
ある特定のテーマについて、一貫した視点で複数の記事を発信し続けることで、メディアそのものに専門性とブランドが宿ります。読者は断片的な情報をAI要約で得るだけでなく、その背景にある思想やストーリーを求めて、メディア全体を回遊するようになります。
これは、書き手個人のキャラクターを確立することにも繋がります。この著者が書くから面白い、このメディアが発信するから信頼できる、といった「指名検索」される存在になること。これこそが、AIに代替されない究極の差別化戦略と言えるでしょう。
戦略4. マルチモーダルで「リッチな体験」を設計する
AIの要約然り、テキストだけの情報伝達には限界があります。これからのコンテンツは、テキスト、画像、図解、動画、音声といった複数の形式(モーダル)を組み合わせた、よりリッチな体験設計が求められます。
たとえば以下のようなコンテンツ設計はユーザーに求められるでしょう。
- 複雑な概念を「図解」する:
文章で長々と説明するよりも、一枚のインフォグラフィックの方が遥かに直感的に理解を促せます。 - 重要なポイントを「動画」で解説する:
書き手の表情や声のトーンを交えて語ることで、テキストだけでは伝わらない熱量や信頼感を醸成できます。 - 「音声」でながら聞き需要に応える:
「通勤中や家事をしながらでもインプットしたい」というニーズに応える音声配信やポッドキャストなども有効です。
AIはこれらの要素を個別に認識・要約することはできますが、それらを組み合わせた「総合的な学習体験」を設計するのはコンテンツクリエイターの役割です。AIの要約では味わえない満足感を提供することが、元記事へのアクセスを促し、読者をファンに変える力となるのです。
バイブリーディングの時代は「ハイレベルなクリエイター」と「徹底的なマーケティング戦略」が必要
本記事で提唱した「バイブリーディング」は、コンテンツクリエイターにとって脅威であると同時に、大きなチャンスでもあります。
バイブリーディングの未来は、決してクリエイターの仕事を奪う脅威ではありません。むしろ小手先のテクニックが通用しなくなり、「一次情報」「文脈と世界観」「マルチモーダル展開」といった、コンテンツマーケティングのリッチな施策が正しく評価される時代の到来を意味します。これは、真摯にコンテンツ作りに向き合うクリエイターや事業者にとって、大きなチャンスと言えるでしょう。
「AIに選ばれ、AIを通し、最終的に人々の心を動かすコンテンツとは何か?」
この問いに向き合い続けることこそが、これからの時代の羅針盤となります。
なお恐らくこの記事も、いくらかAIに要約されて読まれているのでしょう。7,000字以上もありますからね、読むのめんどくさいですよね。でも、それでも構いません。この「バイブリーディング」という概念が、あなたの頭の片隅に残り、これからのコンテンツとの向き合い方を考える一つのきっかけとなったのであれば、筆者としてこれほど嬉しいことはありません。
もし、あなたがバイブリーディングの未来を見据えたコンテンツ戦略の立案や、AI時代に通用する高品質なコンテンツ制作に課題を感じているなら、ぜひ一度、私たち株式会社GIGにご相談ください。
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内田 一良(じきるう)
早稲田大学および同大学院卒。株式会社GIGにてMarketing事業部長。日本最大級のフリーランス・副業メディア『Workship MAGAZINE』のほか、数々のメディアのプロデュースを担当。メディア運営、コンテンツ制作、SEO、SNS、AIに詳しい。ウイスキーとストリートダンスが好き。