アクセシビリティJIS X 8341-3の導入方法を解説|東京のWEB制作会社・ホームページ制作会社|株式会社GIG
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アクセシビリティJIS X 8341-3の導入方法を解説
2023-12-01 制作・開発
アクセシビリティのJISとは、日本産業規格の「JIS X 8341-3:2016」を指します。アクセシビリティを確保するために欠かせないガイドラインです。
標準規格「WCAG 2.0」の一致規格でありながら、独自の要求事項や表記方法などが定められています
この記事では、ウェブアクセシビリティの確保に必要な「JIS X 8341-3:2016」について解説します。ホームページのアクセシビリティの品質を確保したい担当者は、ぜひ参考になさってください。
アクセシビリティのJISとは
そもそもアクセシビリティは以下のような意味があります。
近づきやすいこと。物を得やすいこと。また、道具などの使いやすさ、情報やサービスに対する利用のしやすさ。 |
▲出典:goo辞書
JIS規格は、産業標準化法に基づく日本産業規格(日本工業規格※)です。
プロダクトを効率よくつくるために、仕様や制作方法などを統一することを目的に産業標準化法にもとづいて作られています。
アクセシビリティのJISとは、2004年6月に制定された「JIS X 8341-3」のことです。Webコンテンツにおけるアクセシビリティを確保するために作られました。
正式な規格名称は「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービスー第3部:ウェブコンテンツ」です。
ただし「JIS X 8341-3」はあくまでJIS規格にもとづいたガイドラインのため、規格を満たしたWebサイトやサービスを制作してもJISマークは付与されません。
規格を満たしているかどうかは、自己評価にもとづいています。
※法改正により2019年7月1日に名称変更
JIS X 8341-3:2016とは
「JIS X 8341-3:2016」は、国際規格「ISO/IEC 40500:2012」と整合性をたもつために作られた規格です。「-3」は第3部であること、「:2016」は改定年度を表しています。
国際規格「ISO/IEC 40500:2012」は、国際標準化団体「W3C」が策定した「WCAG 2.0」をベースに作られたものです。
そのため「JIS X 8341-3:2016」と「ISO/IEC 40500:2012」、「WCAG 2.0」は同じ内容になります。
ルールを統一することで、すべての人がインターネットを通して提供される情報にアクセスできる環境を整えることが可能です。
「JIS X 8341-3:2016」の策定に協力しているのは『WAIC(ウェブアクセシビリティ基盤委員会)』です。
WAICは日本国内でウェブアクセシビリティの推進と普及を目的に活動している組織で、「WCAG」を翻訳をして国内で使いやすいようにガイドラインを策定しています。
(参考:デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」)
JIS X 8341-3:2016の規格票の役割
「JIS X 8341-3:2016」の規格票は「日本産業標準調査会」のWebサイトにて閲覧・購入が可能です。また、日本規格協会の「JSA Webdesk」でも購入できます。
とは言え「JIS X 8341-3:2016」は「WCAG 2.0」と内容は同じなので、とくに要らないのでは?と考える人も少なくありません。
しかし「JIS X 8341-3:2016」の規格票には、独自の附属票が添付されています。
・附属票JA(参考)ウェブアクセシビリティの確保・維持・向上のプロセスに関する推奨事項
・附属票JB(参考)試験方法
・解説
これらの内容は「WCAG 2.0」に記載されていません。附属票JAはウェブアクセシビリティ方針の決定、附属票JBは試験方法の理解に役立ちます。
JISの試験には欠かせないため、正しく試験をおこなうためにも「JIS X 8341-3:2016」を取得しておいたほうがよいでしょう。
JIS規格は改正されないのか
原則、JIS規格は5年置きに見直しがされるため、「JIS X 8341-3:2016」もそろそろ改正されるのではないかといわれています。
そもそも「WCAG 2.2」の内容もまだ反映されていません。「ISO/IEC 40500:2012」が更新されると追随して「JIS X 8341-3:2016」も改定されるでしょう。
2024年3月1日にはWAICが「WCAG 2.2」の日本語訳を公開しました。これは改正準備に向けたものであり、正式なJIS規格ではないことを公式サイトで伝えています。
さらに2024年5月28日にはW3Cより「WCAG 3.0」の草案が公開されました。正式にISOとして承認された場合、「JIS X 8341-3:2016」も改定される可能性があります。
新しい基準に対応するためにも、最新の情報を把握しておくことが大切です。
(参考:ウェブアクセシビリティ推進協会)
(参考:ウェブアクセシビリティ基盤委員会)
JIS X 8341-3にもとづくアクセシビリティの導入と設定方法
「JIS X 8341-3:2016」は、アクセシビリティを確保するうえで欠かせません。ここでは具体的な導入と設定方法について解説します。
ウェブアクセシビリティ方針を決める
まず、ウェブアクセシビリティの方針を定めます。これは、Webデザインやシステム開発の目標となるものです。
制作を進めるうえでの指標となり、一貫性をたもつことができます。
ウェブアクセシビリティ方針を定めるときは、「附属票JA(参考)ウェブアクセシビリティの確保・維持・向上のプロセスに関する推奨事項」を使用します。
どの部分にアクセシビリティを適用させるのか、どのページに対応するのか作業範囲と対応量を決めてください。ここで決めたことは難易度に大きく影響します。慎重に決めてください。
実装するものが多いときは要求定義書があるとスムーズです。リソースがないときは、制作会社に依頼することもできます。
関連記事:Web制作の要件定義で発注者側が知っておきたい4つのポイント
適合レベルと対応度を決める
アクセシビリティにはA、AA、AAAの3つの適合レベルがあり、A~AAAにかけて難易度が上がります。
例えば、レベルAでは色が視覚的に判別をするための手段とならないことが示されているものの、レベルAAになると「4.5:1」のコントラスト比が求められるといった具合です。
要素が同じでもレベルによって達成基準が異なるため、どこまで対応するのかを決めなければなりません。
基本的に公的機関は「適合レベルAAへの準拠」が求められています。レベルAAAを目標とすることは推奨されていません。
公共入札でWebサイトを調達する場合、仕様書には適合レベルと対応度、試験方法、結果の記載方法を明確にすることが大切です。
(参考:ウェブコンテンツのJIS X 8341-3:2016 対応度表記ガイドライン)
関連記事:アクセシビリティの「AA」とは?Webサイト制作における達成基準を解説
Web制作に関する技術要求をまとめる
適合レベルを決めたら「JIS X 8341-3:2016」に準拠するための具体的な技術要求をまとめます。「JIS X 8341-3:2016 対応発注ガイドライン」を参考にするとよいでしょう。
技術要求は、仕様書や提案依頼書(RFP)にも記載します。
入札公告時に添付する仕様書では、技術的な要求が明確に記載されていないことでトラブルも起きているようです。
担当者はガイドラインを参考にして、以下の項目を記載しましょう。
・適合レベルや対応度
・達成基準
・対象範囲
・使用するWeb技術
・確認・検収(試験)
・成果物
・保守・運用
公的機関は適合レベルAAへの準拠が求められています。WAICが公開している「対応発注ガイドライン事例(レベルAA準拠)」を参考に技術的な要件をまとめてみてください。
実装チェックリストを作成する
WAICの「JIS X 8341-3:2016 試験実施ガイドライン」の「3.1「達成方法及びその検証方法を特定できる技術的根拠」を示す補法の例」をもとに「実装チェックリスト」を作成します。
実装チェックリストとは、Web制作やシステム開発の過程で、アクセシビリティを確保するための技術的な要件が正しく実装されているかを確認するためのリストです。
要件定義や仕様書などをもとに、作成すると抜け漏れを防げます。
一般的な達成方法の一例をご紹介します。
・メインコンテンツエリアへ直接移動するリンクを各ページの先頭に追加する
・コンテンツを一時停止させて、一時停止させたところから再開できるようにする
・利用者が制限時間なしで捜査を完了できるようにする
・拡張音声解説がついたムービーを提供する
▲出典:WCAG 2.0達成方法集
WAICのガイドラインはExcel形式でダウンロードが可能です。ウェブアクセシビリティ方針をもとに、必要な要件のみ選定してカスタマイズすることで、効率よく作業を進めることができます。
実装チェックリストを使用して試験を実施するには、「JIS X 8341-3:2016」の達成基準を理解しておかなければなりません。
各達成基準の達成方法を理解するため、「WCAG 2.0解説書」の内容をしっかり把握しておきましょう。
試験を実施する
試験を実施するときは「JIS X 8341-3:2016」の「付属書JB(参考)試験方法」を使用します。「実装チェックリスト」をもとに各項目の適合・不適合をチェックしましょう。
総務省の『miChecker(エムアイチェッカー)』など、アクセシビリティチェックツールを活用することで、問題を早期に発見することが可能です。
ただし、機械的なチェックで確認できるのは2〜3割といわれています。
ツールだけに頼るのではなく、目視やスクリーンリーダーなどの支援技術を実際に使用して確認することが大切です。
パソコンやスマートフォンなど、デバイスごとにUIが異なることがあります。各デバイスのアクセシビリティ機能を設定したうえでチェックすることが大切です。
くわしい試験方法は「JIS X 8341-3:2016 試験結果ガイドライン」で確認してみてください。
達成基準チェックリストに記入する
試験結果をもとに、各項目がどの適合レベルに対応しているのか達成基準チェックリストを使用して評価します。
達成基準チェックリストの記載方法は以下の通りです。
・対応する達成基準がすべて適用なし:適用欄に-
・1つでも達成基準が適用あり:適用欄に〇
・達成基準がすべて適合:適合欄に〇
WAICでは「達成基準チェックリストの例」を配布しています。不要な行を削除するなどカスタマイズが可能です。
簡易チェックなら、「JIS X 8341-3:2016達成基準 早見表(レベルA&AA)」を活用する方法もあります。
各達成基準は「WCAG 2.0解説書」へリンクしており、詳細な達成基準や達成方法を確認することが可能です。
基本的に自己評価となるため、信頼性を確保したいなら、専門機関へ評価を依頼しましょう。
関連記事:ウェブアクセシビリティチェックリスト|診断項目と便利なツール
試験結果をホームページで公開する
試験結果をホームページで公開するときはウェブアクセシビリティ方針とあわせて、適合レベルや対応度をあわせて公開しましょう。
<対象範囲の記載例>
総務省のウェブサイト(https://www.soumu.go.jp)
優先度が高いと判断したページ (サイトマップの各項目及びアクセス数が多いページ)について、ウェブアクセシビリティ適合レベルAAの基準を満たすものとする(具体的な対象ページについては、試験結果を公開する際に公表する)。
なお、試験はウェブページ単位で実施する。
達成基準に適合していれば「準拠」、1つでも適合していなければ「一部準拠」となります。
<目標の適合レベルと対応度の記載例>
JIS X 8341-3:2016の適合レベルAAに準拠
注記:当ウェブアクセシビリティ方針における「準拠」という表記は、情報通信アクセス協議会ウェブアクセシビリティ基盤委員会「ウェブコンテンツのJIS X 8341-3:2016対応度表記ガイドライン-2021年4月版」(URL:https://waic.jp/docs/jis2016/compliance-guidelines/202104/)で定められた表記による。
▲出典:総務省「総務省ウェブアクセシビリティ方針」
アクセシビリティへの適合表明はだれでもできるものなので、具体的な取り組みや結果を公開することにより、信頼性の向上や透明性の確保につなげることが可能です。
とくに専門機関へ評価を依頼したときは、検査証明書を添付することが大切です。
アクセシビリティを理解した制作会社へ依頼するメリット
「JIS X 8341-3:2016」の達成基準の複雑さにお悩みなら、アクセシビリティの知識とスキルをもつ制作会社への依頼がおすすめです。
新規公開から適合レベルを満たせる
一度公開したWebサイトをチェックして改修するには、大きな手間がかかるものです。
新規制作の時点でアクセシビリティを確保していれば、公開後に大きな改修を避けることができます。
最初から厳しい条件で制作するため、それなりの費用がかかりますが、以降の改修を考慮した場合、コストを抑えられる可能性があります。
関連記事:「Webサイト保守」の費用相場はどれくらい?東京のWebサイト制作会社が解説
方針やガイドラインの改善や策定も依頼できる
「JIS X 8341-3:2016」の理解が深い制作会社は、クライアントに応じたガイドラインの策定や技術的な面のサポートが可能です。
実装漏れがないように、独自のチェックツールや検収書を用意している制作会社もあります。
関連記事:アクセシビリティ対応がSEOへ与える影響を解説|対策やチェックツール
アクセシビリティに関する法的要件を満たせる
アクセシビリティ対応の制作会社へWebサイトの制作を依頼することで、法的リスクを回避し、信頼性の向上や見込み顧客の獲得、コスト削減など多くのメリットを得ることが可能です。
障害者差別解消法の改正により、2024年6月よりこれまで公的機関のみ義務づけられていた「合理的配慮の提供」が民間事業者にも義務づけられました。
ウェブアクセシビリティへの対応は「合理的配慮の提供」を実現するために必要な環境の整備に欠かせません。これはSDGsの目標「10:人や国の不平等をなくそう」達成にもつながります。
関連記事:ウェブアクセシビリティの義務化とは?対象範囲と2024年の対応策
株式会社GIGのWebサイト制作事例
株式会社GIGは東京のWebサイト制作会社です。ウェブアクセシビリティの適合レベルA/AAに標準対応したWebサイト・システムの制作・開発を行っています。
AAAへの対応もオプションでご依頼可能です。
ここでは、GIGのWebサイト制作実績をご紹介します。
国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)様
国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)様が運営する『サイエンスポータル』のサイト制作、システム開発、インフラ構築まで担当しました。
公的機関のウェブアクセシビリティの適合レベルに準拠するため、レスポンシブデザインに対応した幅広い年齢層にアプローチできるWebデザインを制作。
科学技術情報を発信するサイトとしてPV数を伸ばしています。
国立研究開発法人産業技術総合研究所 様
国立研究開発法人産業技術総合研究所様が運営するコーポレートサイト『ゼロエミッション国際共同研究センター』のリニューアルを担当しました。
デザインやコピー、コンテンツの内容は、既存の情報や仕様書にもとづいて制作しています。ヒアリングを密に行うことで認識齟齬を防ぎ、洗練されたデザインを制作しました。
更新しやすいように情報量の整理や設計も工夫しています。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)様
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)様が推進するDXポータルサイト『DX SQUARE』のサイト制作、コンテンツ制作を担当しました。
要件定義やペルソナなどコンセプト設計、SEOキーワード設計、CMS構築などWebサイト制作を一気通貫で担当しています。
掲載するコンテンツは記事だけではなく、動画やインタビュー、成功事例など幅広い情報を掲載しています。納品後、IPA様からもサイトデザインとコンテンツともに評価をいただいています。
アクセシビリティ対応のWebサイト制作はGIGにおまかせください
アクセシビリティのJIS規格は、日本産業規格の「JIS X 8341-3:2016」のこと。国際規格ISO/IEC・標準規格WCAG一致規格ですが、ウェブアクセシビリティ方針や試験方法は規格票にもとづいて実施しなければなりません。
しかし「JIS X 8341-3:2016」は達成基準が一部しか記載がなく、詳細な内容は「WCAG 2.0」で確認しないといけないうえに、内容が複雑で見落としてしまわないか不安な人もいるのではないでしょうか。
ウェブアクセシビリティを確保したWebサイトの制作をお考えなら、東京のWebサイト制作会社株式会社GIGへご依頼ください。
GIGはウェブアクセシビリティに対応したWebサイトの制作を承っています。適合レベルA/AAは標準対応し、AAAへの対応もオプションでご依頼可能です。
公的機関や大手企業のWebサイトの制作実績があり、SEOキーワード設計や企画立案、コンテンツの内製化も支援しています。まずはお気軽にお問い合わせください。
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