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DXのシステム内製化はなぜ必要? メリット・デメリット、注意点などを解説!
2022-10-23 制作・開発
経済産業省が「DXを推進できない日本企業は、2025年以降に膨大な損失を出す可能性がある」という一文、通称「2025年の崖」を公表してから、DXのシステム内製化を検討している企業が増えているように感じます。
とはいっても、「本当にシステム内製化は必要なの?」と疑問に思っているシステム担当の方も多いはず。
そこで今回は、DXのシステム内製化に企業が取り組むメリットやデメリット、内製化を進めるうえでの注意点などを現役エンジニアの目線から解説します。
DXのシステム内製化とは
DXのシステム内製化とは、企業が自社のDX実現に向けたシステム開発の場面で、開発を外部委託することなく、社内の機材や環境、人的リソースをフル活用して対応することを指します。
従来では、発注者の企業はシステム開発全般をSIerをはじめとした開発会社に外注するケースがほとんどで、発注者のやることはシステムの大枠や仕様などを決める打ち合わせに参加し、成果物を確認するくらいでした。
しかしDXのシステム内製化を行うためには、仕様を決めることはもちろん、開発体制の構築やプロジェクトの編成、戦略立案などを社内の人材で行うことが求められます。つまり、従来のシステム開発に対するかかわり方を大きく変える必要があるのです。
そうは言っても、いきなり畑違いの社員にシステム開発を担当させても、DXの推進にはつながらないでしょう。そのため、DXを推進できるDX人材の確保と育成は、システム内製化を成功へと導く重要なポイントとなっています。
関連記事:Think about DX 〜EPOCH × GIG クリエイティブ視点でのDXプロデュース〜
DXのシステム内製化が必要な理由
システム開発を外注すること自体が全くなくなるとは思わないものの、とくに大企業では積極的なシステム開発の内製化が進んでいるのも事実です。
その背景にあるのが、システム開発を外注した場合、「素早く臨機応変な対応が難しくなる」という問題点です。
たとえば、システム障害が発生した場合、求められることは即時の対応です。しかしシステム開発を外注しているケースでは、他社との情報連携を必要とするぶん、復旧までに時間を要することが多くなります。また、システムを少し改修するだけでも追加費用や余計な時間がかかることも。
市場変化のスピードが加速することが想定される現代では、その変化にスピード感をもって柔軟に対応できるシステムが不可欠です。また、社内にあるツールや他のシステムとの連携なども必要になり、開発要件は複雑化しています。
このような背景から、DXのシステム内製化に舵を切る企業が増えていると考えられます。
システム内製化のメリット
DXのシステム内製化には、どのようなメリットがあるのでしょうか? ここからはメリットを解説します。
メリット1. システムのブラックボックス化を防げる
DXレポートでは、古い基幹システムを「レガシーシステム」と呼んでいますが、このレガシーシステムがDXの足かせとなっているケースもあります。
その足かせとなる原因のひとつに、「システムのブラックボックス化」が挙げられます。
筆者も経験がありますが、長年使用されている企業のシステムは本当に複雑です。メインで稼働するプログラムであれば、社内エンジニアだけでなく、多くの委託先のエンジニアが入れ代わり立ち代わりで修正や追加を加えています。
こうなると、いくらドキュメントがあるとはいえ、肥大化・複雑化したシステムの全容を把握している社内エンジニアはほぼ皆無です。勤続数十年のベテラン社員だけがシステムの大部分を把握しているケースもありますが、その人材が引退すれば、もはやブラックボックス化は避けられないでしょう。
システムのブラックボックス化は、柔軟かつスピード感をもって情報連携を行うDXの実行に悪影響を及ぼします。ブラックボックス化を防ぐためにも、システムの内製化は効果的です。
メリット2. ナレッジやノウハウを社内に蓄積できる
SIer主導でシステム開発を行うケースでは、開発プロセスにおけるナレッジやノウハウが、自社の社員に蓄積されにくい傾向にあります。しかしシステムの内製化を行うと、ナレッジやノウハウの蓄積ができることはもちろん、得られた知見がDXエンジニアの育成環境作りにも役立てられる可能性もあります。
ただし、システム開発を内製化するだけでナレッジやノウハウが蓄積されるとは限りません。開発プロセスにおけるナレッジやノウハウも自社でマニュアル化し、社内エンジニア全員で共有できる資産にするための仕組みづくりが必要です。
筆者の経験ですが、こういったナレッジやノウハウをマニュアル化していない現場は多いです。エンジニア個人のPCにのみメモ書きが存在するケースもあり、そうなると情報がうまく引き継がれない可能性が出てしまうでしょう。
これでは、せっかく内製化してもナレッジやノウハウが社内に蓄積されません。ちょっとしたことでもいいので、ナレッジやノウハウを社内全員で共有する癖はつけるようにしましょう。
メリット3. スピード感をもって、柔軟な開発ができる
システムを内製化する場合、開発途中の仕様変更なども社内調整のみで行えるため、スピード感をもって柔軟に対応できます。特にWebアプリやスマホアプリなどは、とにかく開発スピードが求められます。ゆっくり開発していては、トレンドの移り変わりが激しい昨今の市場で遅れをとり、売上減少などにつながりかねません。
外部に委託する場合では、「契約」という縛りがある以上、仕様変更の際は再度見積りやスケジュールの調整が必要になることも。そうなると対応スピードで差が出てしまう可能性があります。
また、社内だけで使用する業務システムならば、自社の業務内容をよく理解した社員が開発にたずさわるはずです。社員目線で業務内容に沿った柔軟なシステム開発が実現できるでしょう。
システム内製化のデメリット
システム内製化には多くのメリットがある一方で、もちろんデメリットも存在します。それぞれ確認しておきましょう。
デメリット1. 自社でIT人材の確保・育成が必要
近年、日本国内のIT人材不足が深刻化しています。経済産業省の発表によると、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足するといわれています。すでにIT人材の争奪戦は始まっており、人材の確保には、ある程度の時間やコストがかかってしまうのが現状です。
また、DXを推進できる人材は確保するだけでなく、育成も難しいといえます。DXの人材育成には短くとも数ヶ月、長い場合は数年かかります。
そしてさらに懸念されることは、人材の流出です。人材不足も相まって、優秀なエンジニアは引く手あまたなのが現状。残念ながら、IT業界では多くの時間やコストをかけて育成した人材が他社に流出してしまうことは珍しくありません。
依頼したその日からシステムの構築が始まる外注とは異なり、DXのシステム内製化には、DX人材の確保・育成にかかる時間とコスト、人材の流出などの懸念材料が消えることはありません。
デメリット2. コスト意識が希薄になりがち
システム開発を外注するケースでは、支払う費用の金額や内訳が明確なので、余計な費用をかけまいと工夫をするなど、コスト意識を強く持つことができます。
一方で内製化するケースでは「何に対して、いくらコストがかかっているのか」といった全体像が把握しづらくなる傾向にあります。特に、可視化しにくい人件費に関しては、増大する可能性が高いことも意識しておきましょう。
外注化と内製化を比較した場合、中間コストがなくなるぶん、内製化のほうがコストパフォーマンスには優れているとされます。しかし、その状況を整えるまでには、それなりの投資と期間が必要です。
内製化のコストを抑えるためには、外注先と同等のスキルを持ったエンジニアが社内に複数人おり、開発ノウハウも社内にあることが大前提です。
また、ソースコードは一度作ると再利用しやすいぶん、開発会社はコードを再利用して開発コストを下げています。しかし内製化の場合、同じようなシステムを何度も開発することがほとんどないので、流用できるコードも限られてきます。
そのため、「短期的には外注費用分の支出を抑えられたが、長期的に見るとむしろコスパが悪化した」という事態にならないよう注意しましょう。
デメリット3. 大規模なシステム開発には向かない
大規模な基幹システムなどの開発を行う場合、人材や開発ノウハウの不足などが原因で、自社のみで取り組むのが難しいケースはあります。
大規模開発の場合では、どうしても高度な知識やスキルを持った人材が多数必要です。自社でそれだけの人材を揃えることは難しいため、大規模なシステム開発に内製化は向いていないといえます。
内製化では、まずは小規模なシステム開発から始め、社員の経験やノウハウをためながら大規模なものにチャレンジしていくことが大切です。なるべくリスクの小さなものから内製化に取り掛かりましょう。
しばらくは事業収益に直接貢献できない期間が続き、投資期間も長くなりますが、ノウハウや経験を蓄積していくことを第一にシステム内製化を進めることも重要です。
システム内製化を成功させるための4つのポイント
DXのシステム内製化を成功させるポイントについて4つほど解説しますので、確認しておきましょう。
ポイント1. IT人材の採用と育成を進める
とにかく、DXのシステム内製化を行うためにはIT人材の確保が必須です。DXのシステム内製化を成功させるためには、DXに関する専門知識を持った人材の採用や育成が欠かせません。
採用については、外部の求人サイトを活用するのはもちろん、自社で採用サイトを設けたり、SNSなどを使った手法なども積極的に取り入れたりと、窓口を広げておきましょう。
そして、採用後のDX人材の育成プログラムも整えておく必要があります。DXを推進していくための人材育成には専門スキルが必要なため、すぐに整備を行うことが難しいかもしれません。そのため、外部研修なども上手く活用しながら進めていくことをおすすめします。
関連記事:採用サイトに強い制作会社の選び方。応募が集まるサイトづくりを徹底解説!
ポイント2. 社内の開発環境を整える
人材を確保できれば、次は開発環境を整えることが大切です。システム開発を進めるうえでは、基本的にプログラミングができる人材の確保が不可欠です。しかし、そうしたプログラミングスキルを持つ人材の確保・育成は困難なため、自社の状況にあった最適な開発ツールの導入を検討することが大切です。
近年注目されている開発手法に「ローコード開発」があります。ローコード開発では、直感的な操作をベースにしながら高度なプログラムを組めるため、コードの記述を最小限に抑えることができます。同時に工数も削減できるため、システム内製化には欠かせない手法となるはずです。
また、障害対応やその際のマニュアル作りなども自社で行うことになります。最初は段階的でもいいので、開発環境を整えていきましょう。
ポイント3. 社内で品質管理できる体制を整える
自社のエンジニアたちがシステム開発できる環境が整えば、出来上がったシステムを社内で評価できる仕組みづくりも必要です。
開発会社にシステム開発を委託するケースでは、委託先の企業でまず品質基準をクリアしているシステムかどうかをチェックします。そのため、基本的には自社に納品される段階で一定の品質が担保されたシステムになっているはずです。
しかしシステムを内製化する場合、開発したシステムの品質を自社で管理しなくてはなりません。
その場合、システム開発のプロに委託するケースより、品質が低下する可能性も十分に考えられます。また他社が関わらないぶん、「こんなもんで良いだろう」と詰めの甘いシステムが完成してしまうリスクもあるでしょう。品質管理の体制作りは、しっかりと行いたいところです。
ポイント4. 状況によっては、内製化支援サービスの利用を検討する
DXのシステム内製化を行うといっても、ゼロから社内リソースのみで実現を目指すのは難しいケースも多いかと思います。繰り返しになりますが、DX人材の確保も育成も難易度が高いからです。
そこで、DXのシステム内製化を成功させるために、最初は「内製化支援サービス」の利用も検討してみることをおすすめします。
たとえば、GIGでは都度外注するとコストが膨らんでしまう業務を月額制の範囲内で承り、クライアント企業のエンジニアと連携を取りながら、クライアント企業の技術力向上をサポートする内製化支援サービスを展開しております。
このような「内製化支援サービス」の利用もぜひこの機会に検討してみてください。
システム内製化の注意点
システムの内製化には多くのメリットがある反面、内製化の方針などを誤ると期待した効果が得にくくなります。内製化を進めるうえでは、次のことに注意する必要があるでしょう。
注意点1. IT部門に丸投げしない
「DXの実現が思うように進まないのは、IT部門の責任だ」という意識が強いと、DXの成功は難しくなります。
企業によっては情シスやIT部門を「DX推進部」などに改称しているケースもあるようですが、IT部門にDX実現を丸投げすることは、単なる「社内外注」といっても過言ではないでしょう。
DXのシステム内製化を行ううえで、IT部門が主導すること自体は間違っていないと思います。しかし、DXの成功には経営陣をはじめとする全従業員の理解が不可欠です。
さまざまな意思決定には経営陣の判断が必要となり、DXを内製化することが社内にどのような影響を及ぼすのかなどを全従業員が把握し、サポートする姿勢が求められます。社内での協力なしに、DXのシステム内製化を進めることはできません。
注意点2. レガシーシステムを放置しない
先ほども触れましたが、レガシーシステムにおいては、システムのブラックボックス化が顕著です。
こうしたレガシーシステムによく使われているメインフレームで動作するシステムは、COBOLなどのプログラミング言語を使って開発しています。
しかし、COBOLの知識を持つ技術者は年々少なくなってきています。その影響で、レガシーシステムの改修はもちろん、レガシーシステムの再構築も難しくなっているのです。そのため、この部分は内製化にこだわらず、開発会社と協力して進めることをおすすめします。
レガシーシステムの放置は、柔軟かつスピード感をもって情報連携を行うDXの実行に悪影響を及ぼすでしょう。レガシーシステムは放置することなく、マイグレーションや再構築を視野に入れましょう。
注意点3. いきなり外部委託を完全にストップしない
DXのシステムを内製化を成功させるためには、内製と外注のバランスが重要です。開発会社にシステム開発を丸投げしないことは当然ですが、はじめから全工程を内製化することにこだわるのも失敗のもとです。
システム開発はプログラミングするだけの作業ではありません。要件定義にはじまり、詳細な仕様決定やプログラミング、テスト、保守・運用など、やるべきことは多岐にわたります。
こうした複雑な工程を一度にすべて内製化してしまえば、知識やノウハウ不足により失敗する可能性が高いです。そのため、最初は将来の内製化を前提にシステム開発のプロと一緒に作業を進め、自社に開発ノウハウをためていきましょう。
段階的に委託先のエンジニアを減らし、最終的には自社の社員だけでシステムの内製化を進める方針もおすすめです。
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