デザインリサーチとは? 考え方や手法をWebディレクターが解説|東京のWEB制作会社・ホームページ制作会社|株式会社GIG

デザインリサーチとは? 考え方や手法をWebディレクターが解説

2022-12-26 制作・開発

デザイン思考やUXデザイン、デザイン経営。

イノベーションを起こす手段の一つとして、デザイナーの思考が注目され、いまではデザインと名のつく手法が世のなかにありふれています。

こんにちは、株式会社GIG DX事業本部 プロデュース事業部の藤原です。私も普段Web制作の情報設計をするにあたって、どういった手法でコンセプトに落とし込むか考える日々です。今回は、その過程で役立つ「デザインリサーチ」について紹介します。

デザインリサーチとは

デザインリサーチは、かなり広義の意味をもつ言葉です。学術的な世界ではプロダクトがどうデザインされているか、その手法や過程の研究を指します。一方で、産業の世界では、人々や社会など、プロダクトが置かれている環境をより理解するためのプロセスの総称のことを言います。

この記事では、主に後者のデザインリサーチについて、紹介していきます。

なぜデザインリサーチが注目されているのか

背景には、世のなかの不確実性が高まり、知識や機能のコモディティ化が進む現代において、より社会的にも価値があり、ユーザーニーズに応えているものが求められている状況があるようです。

そのような世のなかで、求められているものを作りだすにはどうしたら良いか。そのヒントを探すために、デザインリサーチが活用されています。

従来のマーケティングリサーチでは、前提となる仮説や統計データを検証するのに活用されますが、デザインリサーチでは「新たな問いを立てるヒントを探す」ところから始める。そういった点が従来のリサーチとは異なります。イノベーティブなプロダクトやサービスを作り出す突破口として、ウェルカムザインリサーチが注目されている理由なのです。

デザインリサーチとマーケティングリサーチの違い

では、デザインリサーチは、従来のマーケティングリサーチとはどう異なるのでしょうか。大きな違いとして、下記の3点が挙げられます。

・仮説検証と新たなアイデアの創出
・定性調査と定量調査
客観性と主観性

違い1. 仮説検証と新たなアイデアの創出

マーケティングリサーチとデザインリサーチでは、調査の目的が異なります。

簡単に言うと、マーケティングリサーチは、すでにある仮説やアイデアを、統計データを元に検証するものですが、デザインリサーチは、ユーザーの生活に入り込んで仮説やアイデアのヒントを探すところから始まります。

たとえば、有名な「顧客が欲しいのはドリルではなく、穴を空けること」の話で言うと、ドリルがほしいという声に対してドリルを提供しようと考えるのがマーケティングリサーチ。穴をあけたいというニーズを特定するのがデザインリサーチです。

このような違いから、デザインリサーチは、新たなイノベーションを起こす手段として、注目されているのです。

違い2. 定性調査と定量調査

目的だけでなく、主な調査手法も異なります。

マーケティングリサーチでは、統計データの分析など「定量調査」がメインです。それに対し、デザインリサーチでは、一人のユーザーに向き合ってニーズを探し出す「定性調査」が主な調査方法です。

インタビューを例に説明します。

マーケティングリサーチでは、アンケートをとる、あらかじめ用意した質問項目に回答してもらうなどといった手法がメインになります。

一方、デザインリサーチでは、ユーザーだけでなく、ユーザーのいる環境にも着目します。たとえば、ある商品の開発をする場合、ターゲットユーザーが多くいる土地に行き、どのような価値観が大切にされているか、どんな文化が大事にされているか、そのなかで、いつ・どのくらいの頻度でその商品を使うのかを観察していきます。

もちろん、どちらのリサーチにおいても定量調査と定性調査を行うことから、「マーケティングリサーチが定量調査」「デザインリサーチが定性調査」と明確に分けられているわけではありません。

違い3. 客観性と主観性

定量調査と定性調査の違いにもあるように、マーケティングリサーチでは、統計データをもとに調査する対象を分析することが多いのに対し、デザインリサーチでは一人ひとりのユーザーに注目します。

そのため、データを主とするマーケティングリサーチは、分析結果の客観性が重視されますが、デザインリサーチでは、一人のユーザーに対し「どのような考えをもってどのような生活を送っているのか」より主観的な観点でニーズを引き出すことが大切です。

デザインリサーチのプロセス

デザインリサーチのプロセスについて、今回は「デザインリサーチの教科書」を参考に、一番メインとなる3つのステップを紹介します。

1. リサーチ設計
2. 調査
3. 分析

ステップ1. リサーチ設計

まずは、リサーチで明らかにすることを明確にする必要があります。

「ターゲットユーザーのニーズを明らかにする」といったような抽象的な書き方ではなく、どのようなターゲットで、どういう文脈の、どういう心理について知りたいのかを決めましょう。

その前段階でプレリサーチを行い、前提情報を得てから、リサーチの方向性を決めていきます。主に以下のようなプレリサーチの方法があります。

・オートエスノグラフィ
二次調査情報調査
ゼネラルリサーチ

方法1. オートエスノグラフィ

オートエスノグラフィとは、自分で体験した内容を、実地調査の記録や音声、映像などを使いながら文書化する調査方法です。調査の記録を残すときには、事実と解釈を分けて記載することがポイントです。

方法2. 二次調査情報調査

過去にほかのプロジェクトで調査されたデータがないか確認する調査です。これからリサーチするのと同じ内容の調査があるかを調べます。

方法3. ゼネラルリサーチ

業界や競合他社の製品に関する情報、SNSやコミュニティなど、製品やそのユーザーに関する情報を雑多に収集する方法です。TwitterやYouTube、ポッドキャスト、ブログ、口コミ、身近な人にインタビューする、などの調査も含まれます。

プレリサーチが終わったら、目的にそった意味のあるリサーチは何か、そのリサーチの結果から何がわかればいいか、を明らかにしましょう。

ステップ2. 調査

リサーチの目的を決めたあとは、調査プロセスを決定しましょう。今回は、主な調査方法である下記の2つを紹介します。

・インタビュー
観察

方法1. インタビュー

インタビューにも、さまざまな手法があります。もっとも基本となるリサーチは「デプスインタビュー」です。デプスインタビューでは、一人のユーザーに対して、状況やサービスの選択理由などを深く掘り下げて聞いていきます。

オンライン、オフラインの両方で行われますが、よりユーザーの理解を深めるため、対象のプロダクトが実際に使われている場所などで行う場合もあります。

方法2. 観察

観察は、調査者がユーザーの生活のなかに入り込んで、じっくり観察する調査です。その人を取り巻く環境を含めて、背景や思考の理由を考察します。

仕事に関することであれば、ユーザーの職場で一緒に働き、その人がほかの社員や顧客などと、どう会話するかを含めて観察します。同様に、日常生活であれば、その人が日々どう生活を送っているのか、数日間をかけて観察していきます。

ステップ3. 分析と機会発見

調査が完了したあとは、得た結果をチームで分析し、機会を見出します。機会とは、新しい事業やプロダクトの可能性、既存プロダクトの改善点などのことです。

分析

分析をする方法はいくつかあります。なかでも、ユーザーのインサイトを探る手法の一つに「ユーザーモデリング」があります。ユーザーモデリングとは、ユーザーの調査結果をモデル化(構造化)することです。構造化するために、下記の3点を作成します。

ペルソナ
カスタマージャーニーマップ
価値マップ

その3つを作成したら、ユーザーが抱える潜在的な課題や期待を洗い出します。

機会発見

ユーザーのインサイト(潜在的な課題や期待)が見えてきたら、そのなかから問いを作成して機会を見出します。

機会を定義する方法として、「How might we」という形式で書き出すのがおすすめです。ユーザーモデリングにより抽出したインサイトから「私たちはどうしたら〜できるのだろうか」という問いを考えていきます。問いができたら、そこから実際に実施するアイデア出しをします。

デザインリサーチに最適な手法とは

デザインリサーチは、デザイン思考やUXデザインと切り離されるものではありません。これらと共通する部分も持ちながら、デザイナー的思考を体系化するための一つの観点です。

もっとも大事なのは、デザインリサーチという考え方や手法を自分のなかで型化しながら、プロジェクトごとに最適なリサーチ方法をアップデートすることではないでしょうか。

まずは今回紹介したプロセスを取り入れながら、イノベーションを起こすプロセスのきっかけづくりになれば幸いです!


WebやDXの課題、お気軽にご相談ください。

藤原 英里

DX事業本部 プロデュース事業部 コミュニケーションデザインチーム リーダー。青山学院大学を卒業後、マーケターとして広告運用やSEOを担当。その後、2020年2月にGIGへジョインし、上流設計からWebサイト制作のディレクションを行なっている。