Googleアルゴリズムアップデートの歴史 1998〜2025|SEOの今後は“過去”を知れば予想できる|東京のWEB制作会社・ホームページ制作会社|株式会社GIG

Googleアルゴリズムアップデートの歴史 1998〜2025|SEOの今後は“過去”を知れば予想できる

2025-03-14 制作・開発

Google検索の順位はどう決まる?

その秘密は、日々進化する「検索アルゴリズム」にあります。1998年のGoogle誕生から現在に至るまで、アルゴリズムのアップデートは検索結果に大きな変化をもたらしてきました。

本記事では、Googleアルゴリズムの主要な歴史について、Googleが設立された1998年から2025年までを年表で振り返り、各年の重要なアップデートとその影響を、株式会社GIGのMarketing事業部長の内田が詳しく解説します。(※かなーーーりマニアックな話も含まれるので、興味ある部分まで読み飛ばしながらご覧ください)

記事の最後では、これまでのアップデートの歴史を踏まえた上で、2025年以降の検索エンジンの行方と、これからのSEO担当者が取るべき戦略について考察します。

Googleアルゴリズム主要アップデート年表(1998年〜2025年)

以下に1998年〜2024年までの主要アップデートをまとめました。なお、アップデート名はそれぞれ通称のものが多く、Google公式ではないものが含まれることにご注意ください。

アップデート名

概要

1998年

ページランク導入

リンクの量と質を評価するPageRankアルゴリズムを導入し、検索精度を向上。

2003年フロリダアップデート

キーワード詰め込みやリンクファームなどのスパム的SEO手法を大規模排除。

2004年オースティンアップデート

フロリダアップデートに続くスパム対策。

2004年

ブランデーアップデート

文脈理解や関連性評価を強化。

2005年ジャガーアップデート

不自然なリンク構築を厳しく取り締まり。リンクスパム対策が本格化。

2006年ビックダディアップデート

クローリング・インデックス基盤を刷新。重複コンテンツとURL正規化の対策が進む。

2007年ユニバーサル検索導入

検索結果にニュース・動画・画像などを統合表示。垂直検索との境界が曖昧に。

2008年デューイアップデート

検索インデックスの再編成と、Google自社サービス優先表示の噂。

2009年ヴィンスアップデート

ブランドサイトの評価を強化。大手企業のサイトが上位に浮上しやすくなったと指摘あり。

2010年カフェインアップデート

インデックス更新を高速化し、リアルタイム検索の基盤を整備。

2011年パンダアップデート

低品質コンテンツやコンテンツファームを大幅排除。全検索クエリの約12%が影響。

2012年ペンギンアップデート

リンクスパムを徹底排除。不自然な被リンクやアンカーテキスト乱用が標的に。

2013年ハミングバードアップデート

クエリの文脈理解(セマンティック検索)を強化。会話型・ロングテールクエリへの対応力が大幅向上。

2014年ピジョンアップデート

ローカル検索を強化し、地理的関連性を考慮。マップ検索との連動が進む。

2015年モバイルフレンドリーアップデート

スマホ対応をランキング要因に追加。

2015年ランクブレイン導入

機械学習によるクエリ解釈が本格化。

2016年ポッサムアップデート

ローカル検索結果のフィルタ強化。類似ビジネスの重複表示を抑制し、所在地を精密に考慮。

2017年フレッドアップデート

広告過多・低品質コンテンツのサイトが大幅に順位下落。

2018年モバイルファーストインデックス

スマホ対応サイトを優先的にインデックス。

2018年メディックアップデート

医療・健康系(YMYL)に大変動。E-A-Tの重要性が急上昇。

2019年

BERT導入

自然言語処理モデルを導入し、前後文脈を踏まえた高度なクエリ理解が可能に。

2021年ページエクスペリエンスアップデート

ページ表示速度・インタラクティブ性・レイアウト安定性など、UX指標をランキング要因に追加。

2021年

スパムアップデート

AIによる検索スパムの自動検出が強化(現在も不定期で更新され続けている)。

2022年

ヘルプフルコンテンツアップデート

人間に有益なコンテンツを優先。生成AIによる量産コンテンツを抑制。サイト全体で低品質が多い場合はドメイン全体の評価が下がる恐れも。

……すいません、書きながら気づいたのですが、2023年〜2025年は今のところ名前のついたアップデートはありませんでした。

とはいえ、重要な出来事はたくさんありましたので、以下で詳しく解説します。

Googleアルゴリズムアップデートの歴史 年別解説

1998年:Googleの誕生とPageRankの導入

1998年、ラリー・ペイジ氏とサーゲイ・ブリン氏によってGoogleが創設され、検索アルゴリズムに「ページランク」が採用されました 。

ページランクは、Webページへの被リンク数やその質によってページの重要度を評価する仕組みで、当時主流だった他社の検索エンジン(キーワードの出現頻度に依存)よりも格段に関連性の高い検索結果を提供しました。

これにより「被リンクの多い、権威あるサイトほど上位に表示される」傾向が生まれ、検索ユーザーはスパム的なページではなく、信頼性の高いページを見つけやすくなりました。

【SEOへの影響】

WebマスターやSEO担当者は、ページ内にキーワードを詰め込むほか、「外部サイトからリンクを得ること(被リンク対策)」が重要であると認識するようになります。

実際、ページランク導入初期には多くのサイト順位が劇的に変化し、被リンクがSEOの最優先事項として注目されました。当時「SEO」という言葉自体がまだ生まれたてではありますが、「SEO=被リンク対策」と考える人も多かったくらいです。

1999年〜2002年:黎明期の改良とグーグルダンス

1999年から2002年にかけて、Googleは検索精度向上のための小規模なアルゴリズム変更やインデックス更新を頻繁に行いました。具体的なアップデート名は付けられていませんが、この時期に月次でインデックスを更新する運用が定着します。

インデックス更新のたびに検索結果順位が大きく変動し、この周期的な変動を「Google Dance(グーグルダンス)」と呼びました。更新が行われると、数日間は検索結果が不安定になり、上位表示されていたサイトが急落・消滅したり、逆に急浮上するケースもありました。この現象は「まるで検索結果が踊っているようだ」として親しまれ(恐れられ)ました。

【SEOへの影響】

SEO担当者にとっては順位が定期的に激しく変わるため、ストレスの多い時期でもありました。順位追跡と対策効果の検証が難しく、「今月のアップデートでサイトが飛ばされた!」「次のグーグルダンスで戻ってくれええええ!」といった議論(?)が活発化しました。なお、この時期くらいからアメリカではちらほらとSEOコミュニティが形成され、検索アルゴリズムの変動情報をいち早く交換する文化が育まれました。

2003年:フロリダアップデート – 初の大規模スパム対策

「フロリダアップデート」はGoogle初の大規模アルゴリズム更新であり、とくに検索スパム対策に焦点が当てられました。

それまで横行していたキーワードスタッフィング(キーワードの詰め込み)や、白文字反転させた不自然な隠しテキスト・隠しリンクを使った手法を狙い撃ちし、検索結果から排除しました。その結果、クリスマス商戦直前にもかかわらず多くの商用サイトが順位圏外に飛ばされ、業界に大きな衝撃を与えました。

Googleいわく、このアップデートでは一部「無実のサイト」が巻き込まれる誤検出も発生したとのこと。実際、無実の小売業者やアフィリエイターのなかには、これを機に廃業に追い込まれたケースもあったようです。あまりの反響に、Googleは「今後ホリデー直前の大規模更新は避ける」と約束したほどでした(参考:Google Florida: The First Major Algorithm Update|Search Engine Journal)。なお、この約束は近年破られつつあり、直近では2024年12月に大規模なコアアップデートが実施されました。なんでや。

【SEOへの影響】

先述の通り、小手先かつユーザビリティを損ねる悪質なSEOが効かなくなったため、外部からの評価(リンク)やコンテンツそのものの質に力を入れる必要性が出てきました。良質なコンテンツを作成し、自然な被リンクを獲得するという現在にも通じるSEOの基本系がここで確立しました。

フロリダアップデートは「検索エンジンを騙す」SEOから、「ユーザーに価値提供する」SEOへ転換するきっかけになったと言えます。

2004年:オースティンアップデート

2004年1月に実施された「オースティンアップデート」は、前述のフロリダの延長線上にあるスパム対策でした。

フロリダアップデートで取り締まれなかったスパム手法への対応とされ、隠しテキストやメタタグの乱用、関係のない相互リンクなどがさらに厳しく評価減となりました。これにより、なおも残っていた低品質サイトが整理され、検索結果の品質が一段階向上しました。

【SEOへの影響】

まだしぶとく生き残っていたスパマーが、ここで一定数離脱することとなりました。しかし、スパマーとアップデートはある種イタチごっこの関係。現在に至るまで、あらゆるスパム手法が開発されることとなります……。

2004年:ブランデーアップデート – 文脈理解の向上

オースティンアップデートのわずか1ヶ月後の2004年2月、「ブランデーアップデート」が実施されました。Brandyはスパム対策だけでなく検索アルゴリズムの質的向上を伴う大型アップデートでした。その主要な内容は次の通りです。

  • インデックスの大幅拡張:
    Googleが検索インデックスの規模を劇的に拡大。これにより、より多くのWebページが検索対象となり、ユーザーはニッチな情報でも見つけやすくなりました。
  • LSI(Latent Semantic Indexing)の導入:
    キーワードの同義語・関連語を理解できるよう、アルゴリズムが進化しました。たとえば、「ダイエット」という単語を含まなくとも、「減量」「痩身」といった語を含むページが適切に評価されるようになったとされています。
  • アンカーテキストとリンクの文脈評価:
    被リンクのアンカーテキスト(リンクに使われている文字列)の関連性や、リンク元・リンク先サイトのトピック的近さ(リンクの近隣関係)をより深く評価。単に大量のリンクがあるだけでなく、それらリンクがどのような文脈で貼られているかを考慮するようになりました。

これらの変更により、Googleは「単語」単位ではなく「意味」単位でコンテンツを理解するようになりました。

【SEOへの影響】

SEOにおいては、「単一キーワード」への対策から、「トピック全体の最適化」へと考え方が変化します。サイト運営者は特定キーワードだけでなく、その周辺の語彙や概念もページ内に盛り込み、テーマの包括性を高める戦略をとるようになりました(SEOにおける「共起語」という概念の誕生)。

また被リンクに関しても、「どんなサイトから・どういう文脈でリンクされているか」が重視されるため、関連性の高いサイトから評価を得る、質の高いリンク構築が重要となりました。

2005年:ジャガーアップデート – リンクスパムの撲滅

2005年は、前年までのコンテンツスパム対策に加えて、リンクスパム対策が本格化した年です。中でも有名なのが、9~11月に3段階で行われた「ジャガーアップデート」です。

ジャガーアップデートは、リンク関連の評価アルゴリズムを再調整し、リンクファーム(相互リンク集団)や有料リンクなど、人為的・不自然な被リンクを大量に持つサイトの順位を大きく下げました。

またリンクに関連して、この頃からリンク評価を無効化する「nofollow属性(rel="nofollow")」が導入されました。 これにより、ブログのコメントスパムなど、ユーザー投稿リンクを評価しないようサイト側で指定可能になり、リンクスパム抑制に寄与しました。

【SEOへの影響】

ジャガーアップデートの結果、リンク数ばかり多く実態の薄いサイトが淘汰され、代わって堅実にコンテンツと自然な評価を積み上げたサイトが相対的に順位を上げました。

また、当時横行していた「有料リンク販売ネットワーク」も次第に割に合わなくなり、SEO業者は手法の見直しを迫られます。しかし、この頃はまだまだ怪しい被リンクの検出制度は低く、「まだ被リンクスパムいけるっしょ!」と楽観的な業者も多かったようです。被リンクスパムについては、のちに続くあまりにも有名な「ペンギンアップデート」で頂点に達することとなります……。

2006年:ビッグダディアップデート – インフラ刷新

2005年末から2006年前半にかけて展開された「ビッグダディアップデート」は、検索アルゴリズムというより検索インフラ自体の刷新でした。Googleは巨大化するWebに対応するため、クロールからインデックスまでの仕組みを強化しました。具体的には以下のようなことが実施されました。

  • URL正規化と重複管理:
    同じコンテンツが複数URLで存在する場合の処理(例: example.com と www.example.com など)を改善。重複コンテンツによるインデックスの無駄や、ページランク分散の問題に対処しました。
  • リンク切れ・リダイレクト処理:
    404エラーやリダイレクトの扱いを見直し、古いリンク情報のクリーンアップ性能を向上させました。
  • スパム検出のインフラ強化:
    上記リンク処理改善により、ミラーサイトやドアウェイページ(リダイレクト間の中継ページ)などを検出しやすくしました。

【SEOへの影響】

SEOの面では、ドメインやURL構成の技術的最適化が注目されるようになります。先述した「wwwあり・なし」の統一、適切な301リダイレクト設定、サイトマップの整備などです。テクニカルSEOの萌芽ともいえるでしょう。これらはビッグダディアップデート以降、Googleに正しく評価してもらうための基本施策として定着しました。

2007年:ユニバーサル検索の導入 – 検索結果の多様化

2007年5月、Googleは検索結果表示の大改革として「ユニバーサル検索」を公式に開始しました。

従来、Web検索・画像検索・ニュース検索・動画検索・地図検索などは別々に提供されていましたが、ユニバーサル検索ではそれらを統合し、単一の検索結果ページにまとめて表示するようになりました。

たとえば「東京スカイツリー」で検索すれば、Webページだけでなく地図や料金情報、画像、ニュース記事などが、一つの統一されたSERP(検索結果画面)に表示されるようになりました。この変化は、現在まで続くGoogle検索のスタイルの基盤となっています。

【SEOへの影響】

SEOにとっては新たなチャンスと課題が生まれました。すなわち、Webページ以外のコンテンツ最適化です。具体的には以下のようなことが挙げられます。

  • 垂直検索への対応:
    画像SEO(適切な画像ファイル名やaltテキスト)、動画SEO(YouTube活用や動画サイトマップ)、ニュースSEO(Googleニュース掲載基準の遵守)など、各コンテンツタイプで上位表示を狙う手法が注目されました。
  • ローカルSEOの台頭:
    検索結果に地図や地域情報が表示されるようになり、店舗やサービス業者は「Googleマイビジネス(当時はローカルビジネスセンター)」に情報を登録し、レビューを集めるなどローカル検索対策が重要となりました。
  • ユニバーサル結果の競合:
    従来の「上位10件のWebページランキング」だけでなく、画像・動画・ニュース枠が上部に入るため、ページの1位表示でもクリック率が下がる場合が出てきました。結果として、総合的な検索画面で目立つにはどうするかという包括的なSEO戦略が必要になりました。

2008年:デューイアップデート – インデックス再編と噂

2008年の3〜4月頃、公式名称ではないものの大規模な順位変動が観測され、「デューイアップデート」と呼ばれました。ここでは検索インデックスの再編成が行われた可能性が高く、検索結果の順位が全般にシャッフルされた印象がありました。

またデューイアップデート時、一部のSEOコミュニティでは、たとえば「Googleが自社サービス(Googleブックスなど)を検索結果で優遇表示しているのではないか」という憶測が出ました。ただし明確な証拠は提示されず、Google側もそのようなバイアスを公式には認めていません。

また、2008年はGoogleが年間で約450ものアルゴリズム変更を行ったとも報告されており(参考:Tracking Google’s Algorithm Updates|seomarketing.com)、個別の大変動ではなく、常に微調整が繰り返される時代に入ったとも言えます。

なお、2008年後半には「オートコンプリート(サジェスト)」が正式に検索ボックスに統合されました。これによりユーザーの検索クエリ入力がガイドされるようになり、検索行動自体にも変化が生まれています(予測候補からクエリを選ぶなど)。

【SEOへの影響】

この頃から、Googleアルゴリズムは常に微調整される時代に入ったため、「アップデートごとに何か対策をする」という考え自体が徐々に変わりつつありました(とはいえ、今でもコアアップデートのたびに慌てる業者は少なくないのですが)。

また、サジェストをもとにSEO戦略を立てる業者も増え始め、それは今日につながるSEOの基本戦術となっています。

2009年:ヴィンスアップデート – 大手ブランド重視の傾向

2009年2月、「ヴィンスアップデート(別名:ブランドアップデート)」が実施されました。このアップデートは、ビッグキーワードで有名ブランドサイトが上位に来やすくなったことで知られます。たとえば「保険」「クレジットカード」などの競争の激しいキーワードで、大企業や老舗ブランドの公式サイトが検索ランキング上位を占める傾向が強まりました。

ユーザーにとってはよく知っている有名サイトが上位表示されるため安心感がありましたが、一方で中小ブランドはどんなに良いサイトでも検索下位に押し下げられてしまう懸念がありました。

【SEOへの影響】

ヴィンスアップデート以降、「ブランド構築がSEOに寄与する」という考えが広まります。つまり、単に被リンクやコンテンツだけでなく、ユーザーや検索エンジンから見た信頼性(ブランド認知・評判)がランキングに効いていると理解されるようになりました。

このため、オンライン上でのサイテーション(サイトやブランド名が言及されること)が重視されるように。コンテンツも広く浅くよりは、特定分野で卓越した品質を示すほうがブランド評価につながるとして、ニッチ専門サイト戦略も注目されました。

これらも今日のSEOにつながる流れですね。

2010年:カフェインアップデート – リアルタイム検索への第一歩

2010年6月、Googleは新しいインデックスシステム「カフェイン」の完成を発表しました。これは厳密にはアルゴリズムの変更というより、検索エンジンの裏側(インデックス更新技術)の大刷新です。カフェインの導入によって、以下のような改善が実現しました。

  • 素早いインデックス更新:
    旧システムでは主要なインデックス更新に数週間かかり、その間は情報の新鮮さに遅れが生じていました。一方、カフェインでは巨大なインデックスを小さなセクションに分割し、常時並行的に更新処理を行うことで、新しいページや変更を見つけてから検索結果に反映するまでの遅延が大幅に短縮されました。
  • 50%の「新鮮なコンテンツ」:
    Googleのキャリー・グライムス氏によれば、カフェインは以前のインデックスより50%の新しいコンテンツを提供できるとされます(参考:Google Caffeine Update|SISTRIX)。たとえばニュース記事やブログ投稿が公開されてから、検索に出現するまでの時間が劇的に短くなりました。
  • インデックス規模の拡大:
    カフェインはこれまでで最大規模のWebコンテンツを収容するインデックスとなり、秒間何十万ものページ処理やペタバイト級のデータ追加をこなす性能を備えました。

このようにカフェインは、リアルタイム検索の基盤を築きました。2009年末にGoogleはTwitter(現X)のつぶやきをほぼリアルタイムで検索結果に表示する試験も開始しており、カフェイン以後はそうした最新情報の取り込みがシームレスに行われるようになりました。ユーザーにとっては、地震速報やスポーツ試合結果など、従来は難しかった「今まさに起きていること」の検索が格段に使いやすくなったのです。

【SEOへの影響】

カフェインアップデートによって、新規コンテンツ投入後に即時効果が期待できるようになりました。具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • 「速報」の重要性が増す:
    ニュースサイトや企業ブログなどは、ニュースリリースや記事を出せばすぐ検索流入が得られる可能性が高まりました。これにより「最初に情報を出す」価値が上昇し、コンテンツマーケティングではスピードも競争要因になります。
  • 更新頻度のサイトが有利に:
    クローラーがサイトを巡回する頻度も、更新の頻繁なサイトでは上がる傾向が見られました。定期的なコンテンツ更新(リライト)を行うことで、検索エンジンからの評価(フレッシュネスシグナル)を得やすくなりました。
  • 技術的最適化:
    カフェインではクロールの効率も注目されたため、サイトマップの提供や、適切なキャッシュ制御など、クロール促進のテクニカルSEOがより重要となりました。1万ページ以上の大規模サイトでは、クロールバジェット管理(クロール優先度の最適化)も意識され始めます。

2011年:パンダアップデート – コンテンツ品質の重視

2011年2月下旬、Googleは「パンダアップデート」をアメリカにて先行展開しました。SEO界隈ではあまりにも有名なアップデートですね。このアップデートの主目的はコンテンツの品質評価で、とくに以下のようなサイトが大幅に順位を下げました。

  • コンテンツファーム:
    ネット上の情報を寄せ集めただけの大量生産サイト。ユーザーにとって実質的価値が低い記事を量産し、広告収益を狙うようなサイトが標的となりました。
  • 重複コンテンツ・薄いコンテンツ:
    他サイトからの転載だらけのページや、自動生成で中身が薄いページも対象となりました。たとえば商品レビューを機械的に再構成しただけのページ群など。当時は生成AIなんてものはなかったので、品質も極めてお粗末なもの(そもそも文章として成り立っていない等)が多かったのです……。
  • 広告過多なサイト:
    コンテンツより広告が目立つレイアウトも、ユーザー体験を損なうとして、パンダの評価減対象となりました。

パンダアップデートは検索クエリ全体の約12%に影響したと言われ、Google史上でも最大級のアップデートでした。まず英語圏で開始され、数ヶ月後には日本語含む他言語にも展開されました。

パンダアップデート適用後、低品質なコンテンツファームサイトはアクセスが激減した一方で、信頼性が高く内容の濃いサイトは相対的に順位上昇しました。Googleは「ユーザーが価値を見出さないサイトを排除し、質の高いサイトがより見つけやすくなるのが狙い」と説明しています(参考:Google's Farmer Update Live: 12% Of Google's Results Forever Changed|SEARCH ENGINE ROUNDTABLE)。

【SEOへの影響】

パンダアップデートは、SEO界隈に大きな転換をもたらしました。具体的には以下の通りです。

  • 質の高いコンテンツの作成:
    低品質な薄いコンテンツを量産する戦略は崩壊し、専門性・独自性の高い良質なコンテンツ作成が不可欠となりました。「ユーザーに有益か?」が最重要視されるようになり、SEO担当者は記事の長さより中身、情報源の信頼性、執筆者の専門性などを気にするようになります。(もっとも、今でもそれらを軽視する人はいるのですが……)
  • 重複コンテンツの排除:
    自サイト内外問わず、重複コンテンツを減らす取り組みが活発化しました。「カニバってる(重複してる)コンテンツを減らせ!」なんてことも現場ではよく言われます。canonicalタグの利用や、引用以上のオリジナル要素を付加する編集工夫が必要となりました。
  • ユーザーエンゲージメント指標:
    パンダアップデートは直接には言及されませんでしたが、間接的に「直帰率」や「滞在時間」といったユーザー行動がランキングに影響すると考える向きも増えました。実際、価値のないサイトはすぐ離脱されるため、そのような行動データをアルゴリズムが参照しているのではと推測されたのです。

2012年:ペンギンアップデート – スパムの徹底排除

2012年4月、Googleは「ペンギンアップデート」を実施しました。こちらもパンダに次いで超有名なアップデートですね。

パンダが主にサイト内コンテンツの質を評価したのに対し、ペンギンはサイト外(とくに被リンク)に関わるスパム対策が焦点でした。Google自身は当初「Webスパムアルゴリズムの更新」と呼び、以下のような行為をターゲットにしたと説明しています(参考:Google Launches “Penguin Update” Targeting Webspam In Search Results|Search Engine Land)。

  • 不自然なリンクビルディング:
    相互リンクの大量交換、有料リンク、リンクネットワークからのリンクなど、Googleのガイドラインに違反する被リンクを多数持つサイト。
  • キーワード乱用(過最適化):
    コンテンツ内での過度なキーワード詰め込みや、不自然なアンカーテキストの使用。
  • その他のスパム:
    クローク(検索エンジン向けとユーザー向けで異なる内容を見せる)や隠しリンクなど、テクニカルスパム全般。

【SEOへの影響】

ペンギンアップデートにより、それまで不自然なリンクで上位を維持していたブラックハット系サイトは軒並み撃沈しました。代わりに、真っ当な方法で評価を積んできたサイトが浮上するケースが見られました。

SEO業者にとってペンギンアップデートはとくに衝撃的で、長年通用していた「被リンク至上主義」が通用しなくなった転機でした。「リンクさえ買えば順位は上がる」という時代はここで終焉を迎え、以降は「リンクの質」が非常に厳しく問われることになります。

またペンギンアップデート実施後、GoogleはWebマスター向けにリンク否認ツールの提供を開始しました。これは、自分のサイトに向けられた悪質な被リンクをGoogleに無効化申請するツールです。ペンギンでペナルティを受けたサイトが、リンクプロファイルを浄化し、ランキング復帰するために活用されました。これによりSEO担当者は、単にリンクを増やすだけでなく、リンクの質を管理・場合によっては拒否するという全く新しい対応を求められるようになりました。

2013年:ハミングバードアップデート – 検索エンジンの頭脳刷新

2013年9月、Googleは創立15周年イベントにて「ハミングバードアップデート」を発表しました。これは検索アルゴリズム全体の近代化を図る非常に大きな変更で、2001年以来のアルゴリズム大改良とも言われています。

ハミングバードがもたらした主な進化点は以下のとおりです。

  • 自然言語処理の向上:
    ユーザーの検索クエリを、単語単位ではなく、文脈や意味で理解する能力が飛躍しました。たとえば「東京から大阪 日帰り 可能?」のような会話調の質問でも、その意図(東京から大阪への日帰り旅行が可能かどうか)を汲み取り、直接答えにつながる結果を返しやすくなりました。
  • 会話型検索・音声検索への対応:
    「〜を教えて」といった口語的な検索や、スマートフォンでの音声入力検索が増加していたため、Googleはこれに適したアルゴリズムへ転換しました。前後の質問の文脈を踏まえて答える、というような対話的検索も視野に入れています。(考えてみれば、これは現在の検索AIにつながる系譜ですね)
  • ナレッジグラフとの統合強化:
    ユーザーのクエリに対し、検索結果自体に回答(ナレッジパネルやリッチリザルトなど)が表示されるケースが増えました。

▲ナレッジパネルの例

検索結果に直接簡易回答が表示されたり、ナレッジパネルで人物や地物の情報がまとまって出たりするなど、Google自体が答えを返すスタイルが増加しました。これはユーザーにとって利便性が高い反面、従来の「どこかのサイトに行って答えを探す」という行動が減ることも意味します。

【SEOへの影響】

ハミングバードアップデートは検索エンジンの根幹刷新であったため、SEOへの影響は徐々に現れましたが非常に本質的でした。主なポイントは以下の通りです。

  • 「キーワード」から「インテント」へ:
    SEOの焦点が「このページは何のキーワードをターゲットにするか」から「ユーザーの検索意図(インテント)にどう答えるか」へと移りました。つまり、一語一語のマッチングより、検索者が求めている解決策や情報を的確に提供することが評価につながるようになったのです。
  • FAQやロングテールコンテンツの強化:
    長めのフレーズや質問形式での検索が増えてもGoogleが理解できるため、FAQ形式のコンテンツや具体的な質問を想定した文章などの重要性が高まりました。音声検索を意識して、「会話調キーワード + 具体的回答」をコンテンツに盛り込む工夫も生まれました。
  • 構造化データの強化:
    構造化データのマークアップ(Schema.org等)を用いてコンテンツの意味を検索エンジンに伝える手法がさらに注目されました。ハミングバード後のGoogleはコンテンツの意味理解に熱心なため、レシピやイベント情報などを構造化して提供することで、検索結果にリッチスニペットを表示させ目立たせるなどのSEO効果が期待できたためです。

総括すると、ハミングバードによってGoogleは単なる検索エンジンから「質問に答えるエンジン」へ進化を遂げ、SEOもテクニカルなキーワードマッチングゲームから「情報ニーズを満たすクリエイティブな取り組み」へとシフトしていくことになりました。

2014年:ピジョンアップデート – ローカル検索の改善

2014年7月、アメリカおよび英語圏が先行して、ローカル検索アルゴリズムの大幅な変更が行われました。業界ではこれを「ピジョンアップデート」と呼んでいます。

ピジョンアップデートの主な目的はローカル(地域)検索結果の質向上であり、具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • コアアルゴリズムとの統合:
    ローカル検索順位の決定ロジックが、通常のWeb検索アルゴリズムとより密接に統合されました。これにより、従来はローカル独自の要因だけで決まっていた順位に、ドメインの権威性やSEO要因がより影響するようになりました。
  • ユーザーの位置情報の活用:
    ユーザーの所在地や指定した場所に対して、より近距離のビジネスが上位に出やすくなりました。また検索クエリに地域名を含まなくても(例:「ピザ」とだけ検索)、ユーザーの位置情報から近隣のピザ店が表示されるようになりました。

【SEOへの影響】

ピジョンアップデートはローカルSEOと呼ばれる分野の重要性を一気に高めました。具体的な変化・対策は以下の通りです。

  • Googleマイビジネス最適化:
    企業や店舗はGoogle Places(現Googleマイビジネス)に正確な情報を登録し、カテゴリ設定・写真・営業時間・口コミ管理などを適切に行うことが順位に直結するようになりました。
  • NAP情報とWeb上の一致:
    Name(名称)、Address(住所)、Phone(電話)のNAP情報を自社サイトや各種ディレクトリで統一することが評価に影響すると考えられ、ローカルディレクトリサイトへの掲載や口コミ促進がSEO戦略に組み込まれました。
  • 高品質なWebサイト維持:
    通常のWeb検索アルゴリズムとの統合により、ローカルビジネスにおいてもWebサイト自体のSEO(コンテンツ内容や被リンク)が重要になりました。単に地図上の存在感だけでなく、サイトのドメインパワーもローカル順位を左右するためです。
  • 半径フィルタの変化:
    同一住所や近接エリアにある類似ビジネスは、結果に1件しか出にくくなるフィルタ(後述するポッサムアップデートに繋がる要素)が強まりました。たとえば同じ建物に複数店舗が入っている場合、1店舗だけ表示され、他は除外されることもありました。これに対し、事業者は「住所を変える」等の対応を検討する例もあったようです。

ピジョンアップデート以降、ローカル検索の動向は地域ビジネスにとって極めて重要となり、「SEO × MEO」の両輪で考える時代が本格化しました。

2015年:モバイルフレンドリーアップデート – スマホ対応サイトの優遇

2015年4月、Googleはモバイル検索結果において、モバイル対応がランキング要因になるアルゴリズム更新を実施しました。この更新は通称「モバイルゲドン」とも呼ばれます。モバイル検索が対象であること以外、国や言語を問わず全世界で適用されました。

具体的なアップデート内容は以下の通りです。

  • スマホ対応ページの優遇:
    スマートフォンで検索した際、画面サイズに最適化されていないページ(PC基準のため文字が小さすぎる・横スクロールが必要等)はランキングで不利に、逆にモバイルフレンドリーなページは上位表示されやすくなりました。
  • リアルタイム・ページ単位の評価:
    この判定は、ページ単位でかつリアルタイムに近い形で行われ、ページがモバイル対応になればすぐ有利になり、非対応ならすぐ低評価になる仕組みでした。なお、サイト全体ではなくページごとなので、一部未対応ページがあっても全体が落ちるわけではありません。

従来は検索上位でもPC向けデザインのページだと操作しづらいことが多々ありましたが、このアップデートにより、スマホユーザーは閲覧しやすいサイトを検索で見つけやすくなりました。

アップデート実施当初、「大変動になる」と過熱報道されましたが、実際の影響は緩やかで、一夜で検索結果が激変するようなことは起きませんでした。それでもトレンドとしては、以降スマートフォンで便利なページが着実に上位に来るよう変化しています。

【SEOへの影響】

モバイルフレンドリーアップデートは、多くのサイト運営者にスマホ対応の必要性を強く認識させました。具体的には以下の通りです。

  • レスポンシブデザインの導入:
    PCとスマホで別URLを用意していたサイトも、Google推奨のレスポンシブデザイン(同一URLで画面サイズに応じてレイアウト変化)に移行するケースが増えました。これが後の「モバイルファーストインデックス」にもつながる対応となります。
  • モバイルユーザビリティ改善:
    文字サイズ・ボタン間隔・プラグイン未使用(Flash排除)など、Googleが提供した「モバイルフレンドリーテスト」の指針に沿ってサイト修正が行われました。とくにFlash依存のサイトでは、HTML5化が進みました。
  • モバイルSEOの定着:
    以前からモバイルSEOはたびたび議論されてきましたが、このアップデートにより「モバイルで上位=SEO成功の必須条件」となりました。モバイル専用のキーワード戦略や、ローカル検索との連携も含め、SEO戦略はPC通信からスマホ中心へとシフトしていきます。

またモバイルフレンドリーアップデートは、Googleが「ユーザー体験」をランキングに組み込む姿勢を明示した例でもあります。この流れは、後の「ページエクスペリエンスアップデート」につながり、Core Web VitalsやHTTPSなどユーザビリティ要因を考慮したSEOが求められる時代へ進みました。

2015年:ランクブレイン導入 – AIによる検索体験

2015年10月、Googleは機械学習を用いたAIシステム「ランクブレイン」を検索アルゴリズムに組み込んだことを公表しました。

ランクブレインはAI(ディープラーニング)を活用し、とくに今までに見たことがない検索クエリの処理を得意とします。検索クエリの約15%は毎日新しくなると言われており、これまでGoogleはそれらに対しては推測で対応してきました(参考:Understanding searches better than ever before|Google)。しかしランクブレインでは、クエリ中の単語をベクトル(数学的意味空間)に変換し、過去の類似クエリとの関連から解釈することで、未知のクエリにも対応できるようにしました。

とくに文章で質問する検索(例:「冷蔵庫 異音 なぜ」→「冷蔵庫から異音がする原因は何?」の意図)に対し、ランクブレインが似た意味の過去クエリを類推して処理するため、最初から適切な結果が表示されることが多くなりました。またランクブレインは単語と単語の関連を学習するため、あいまい検索概念検索の精度も向上しました。たとえば「ニューヨークの人口は東京より多い?」のような比較ニュアンスの質問にもGoogleがある程度理解を示し、ナレッジグラフ等を駆使して答えを出そうとする傾向が見られます。

【SEOへの影響】

ランクブレイン自体はブラックボックス的なAI要素であるため、直接手を打つことは難しいとGoogleも説明しています(参考:Google: BERT now used on almost every English query|Search Engine Land)。しかし、SEOとしては次のような考え方が広まりました。

  • 自然な文章でコンテンツを書く: 
    AIが文脈理解するなら、無理にキーワードを詰め込むより、人間が読む自然な文章の方が評価されるだろうという方向です。結果として、問いかけに答える明確な文章構造や、話し言葉のフレーズを含めるなど、コンテンツ作成がよりユーザー会話に寄り添ったものになりました。
  • クリック率や直帰率などユーザーシグナル重視説:
    ランクブレインが実際にどうランキング調整しているかは非公開ですが、一部では検索結果のクリックデータや滞在時間をAIが学習しランキング改善に使っているという推測もありました。このためメタディスクリプションやタイトルを魅力的にしてCTRを上げる、コンテンツでユーザーを引きつけて直帰させない、といったユーザーエンゲージメント向上施策も重視されました。
  • FAQページや質問形式コンテンツの拡充:
    ユーザーの多様な検索表現に応じるため、サイト運営者はFAQページを充実させたり、同義語・関連語を本文中に散りばめたりと、様々な質問形にコンテンツを最適化するようになりました。これはハミングバードアップデート以降の流れをさらに推し進めたものです。

ランクブレインの導入は、Googleが人間のように学習し理解する検索エンジンを目指し始めた象徴であり、今後のAI時代の検索の先駆けでした。後述するBERTやMUMといったAIモデルの導入にも繋がっていきます。

2016年:ポッサムアップデート – ローカル検索結果の精度向上

2016年9月1日、Googleはローカル検索アルゴリズムのアップデートを実施しました。公式名称はありませんが、ローカルSEOの専門家たちが「ポッサムアップデート」と命名しています。

ポッサムアップデートの特徴は、ユーザーに表示されるローカル事業者リストの多様性・公平性を向上させたことです。具体的には以下の通りです。

  • 市区境界をまたぐビジネスの救済:
    たとえば「大阪市 美容院」で検索したとき、これまでは大阪市の境界すぐ外に所在地がある美容院は検索結果に出にくい問題がありました。ポッサムアップデート以降は、厳密な行政区より“地理的距離”が重視され、都市境近くでも近距離であれば表示されるよう改善されました。
  • 住所や電話が類似するビジネスのフィルタリング:
    同一住所や同じ建物内に複数の類似業種ビジネスがある場合、1つだけ表示して他はフィルタする傾向が強まりました。たとえばある医療ビルに10人の歯科医が開業していても、検索結果ローカルパックには代表的な1つしか出ないことがあります。これによりユーザーは重複した事業者を見せられずに済みます(ただし実際には存在する別業社が隠れることもあるため、サイト運営側には課題でもありました)。
  • 検索キーワード変化への敏感さ:
    ローカル検索で微妙に異なる語(略称や順序など)を使うと全く違う結果が出るケースが増え、Googleがキーワードの解釈を多様化させテストしているとも指摘されました。これはローカル検索の結果評価を高めるための調整と考えられます。

ポッサムアップデート後、ユーザーはより現在地に近く適切なローカル結果を得られるようになりました。とくに都市名検索で境界外の有力店が表示されなかった不便が緩和され、探したい店舗やサービスを見逃しにくくなりました。また、重複するような結果が減ったため、1ページに異なる店舗候補が増え比較検討がしやすくなっています。総じてローカル検索のユーザー満足度向上に寄与しました。

【SEOへの影響】

ポッサムアップデートは、ローカルSEO業界で多くの変更が行われました。たとえば以下のような内容です。

  • 所在地戦略の見直し:
    市境ギリギリで検索圏外だったビジネスは救われましたが、逆に同じ建物内で競合が多い場合、表示数が制限されるため、オフィスの分散や住所表記の工夫を検討する企業も出ました。
  • キーワードバリエーション対策:
    ローカルSEOでは、サービス名+地域名の組み合わせごとに結果が異なるため、様々なキーワード組み合わせ(「東京 歯医者」「東京都 歯科医院」「品川区 歯科」等)での対策が意識されました。ビジネス名や説明文、口コミ誘導などにおいて、重要キーワードを網羅する工夫が取られています。
  • 口コミ・評価のさらなる重要視:
    ポッサムアップデートというよりはローカルアルゴリズム全体の話ですが、良質な口コミと高評価は依然として上位表示の鍵でした。ポッサムアップデート後もこの流れは強化され、実際の顧客からのレビュー獲得や返信対応など、“ローカルSEO=レビュー管理”の面が強まりました。

2017年:フレッドアップデート – 質の低いサイトへの警告

2017年3月頃、非公式ながらGoogleの大規模な順位変動が起こりました。

Googleは公式に認めていませんが、業界の分析ではコンテンツ品質や広告のユーザビリティに関するアップデートだと考えられています。典型的には以下のようなサイトが大きく順位下落しました。

  • 広告やアフィリエイトリンクだらけのサイト:
    訪問者の役に立つ情報より、収益目的の広告・誘導リンクがページの大部分を占めるサイト。フレッドアップデート実施後、こうしたサイトの多くがトラフィック90%以上減という極端な打撃を報告しました(参考:A Complete Guide to the Google Fred Algorithm|Search Engine Journal
  • 低品質なコンテンツ:
    一見ブログ記事だが、内容が薄く、キーワード誘導だけを狙ったようなページ。とくに健康や金融系(いわゆるYMYL領域)で根拠に乏しいまとめサイトなどが大きく順位を下げました。

フレッドは明確な公式解説がないものの、300以上のサイト分析からSEO専門家のBarry Schwartz氏は「フレッドで打撃を受けたのはコンテンツより収益を優先した質の低いサイト」と結論づけています(参考:Did Google’s Fred update hit low-value content sites that focus on revenue, not users?|Search Engine Land)。

【SEOへの影響】

フレッドアップデートにより、上述のようなアドセンス収益偏重サイトが検索上位からごっそり姿を消しました。その結果、これまでそうしたサイト群に押し下げられていた専門性の高い個人ブログや公式ページなど、有益なコンテンツ持ちサイトが浮上したと考えられています。

フレッドアップデート以降、サイト運営者は自サイトを見直し「ユーザーに価値あるページか?広告だらけでないか?」をチェックするようになりました。具体的な対応例としては以下のようなものが挙げられます。

  • 広告レイアウトの改善:
    ファーストビュー(ページを開いた最初の画面)に広告が占める割合を減らし、コンテンツ本編をすぐ見られるように改善。
  • コンテンツ品質向上:
    単に他サイトの内容をなぞっただけの記事や、自動化された生成コンテンツは排除し、専門家に書かせる・独自データを入れる等の質向上策が取られました。とくにYMYL領域(Your Money or Your Life=お金や生活に重大な影響を与える分野)では、一層高品質な情報提供が求められるという流れになります。
  • E-A-Tの重視:
    フレッドアップデートとは直接関係ないものの、Googleは2017年前後から品質評価ガイドラインでE-A-T(専門性・権威性・信頼性)の概念を強調しており、フレッドアップデートで下がったサイトはこのE-A-Tが低かったとの指摘もありました。よって信頼性を高める運営者情報の開示や、外部からの評価獲得(被リンクやSNSでの拡散)に注力するSEOが増えました。

フレッドアップデートは一部では「パンダアップデートの延長」とも見做されますが、収益源に踏み込んだ点でSEOスパムだけでなくサイト運営ポリシー自体への警鐘と捉えられました。以後のGoogleコアアップデートでも同様の傾向が続き、ユーザー軽視のサイトは順位維持が難しくなっています。

2018年:モバイルファーストインデックス – スマホ基準の時代へ

2018年3月、Googleは検索インデックス運用を「モバイルファースト」方式に切り替え始めたと発表しました。これは、スマートフォン用コンテンツを、検索インデックスとランキングの主な基準とするという重大な変更です。いわばモバイルフレンドリーアップデートの強化版でしょう。

従来Googleはデスクトップサイトを主にクロール・インデックスしていましたが、モバイルファーストではまずスマホ版を見に行き、その内容をもとに順位付けするようになりました。

モバイルファーストインデックスは段階的に実施され、2018年3月から2021年3月にかけてほぼ全サイトが移行されました(参考:Google’s Mobile-First Indexing is Complete: What Every Website Owner Should Know|seoReseller.com)。

【SEOへの影響】

モバイルファーストインデックスは、2015年のモバイルフレンドリーアップデート以上に、SEO戦略を“スマホ中心”に転換させました。影響・施策として以下のようなものが挙げられます。

  • レスポンシブデザインの加速:
    PCサイトとモバイルサイトで別URL(m.example.comなど)を運用している場合、両者のコンテンツ量や構造を一致させないとモバイル版にない要素は評価されなくなります。そのため多くのサイトがレスポンシブデザインを採用するか、少なくともSP/PC両版の内容を揃えました。
  • モバイルでのUX改善:
    モバイルファーストはクロール主体がスマホになることも意味するので、モバイルで正しくクロールできるか(たとえばLazy-loadされた画像も見れるか、モバイルでブロックされているCSS/JSはないか)の技術的確認が行われました。加えて、モバイルでのUXがランキングに直結する意識が高まり、読み込み速度や使いやすさをさらに最適化する動きが進みました。
  • SP/PCのデータ構造統一:
    モバイル版HTMLでも構造化データ等が抜け漏れないよう注意されました。PC版にはあったSchemaマークアップがモバイル版では省略されていると、正しく評価されません。よってデータ構造も統一する必要がありました。

Googleは移行時にサーチコンソール経由で通知を出しており、SEO担当者はそれを確認しながら段階対応していきました。モバイルファーストインデックスは、Web運営全体が「モバイルを主、PCを従」と見なす転換点となりました。

2018年:メディックアップデート – 健康・医療分野への警告

2018年8月、Googleは「広範なコアアルゴリズムアップデート」を実施しました。公式には単なるコアアップデートとされていますが、影響を受けたサイトの傾向から、業界では「メディックアップデート」と呼ばれます。

Barry Schwartz氏の調査によれば、この更新で大きく順位変動した約300サイト中42%が医療・健康・ウェルネス系のサイトだったことが確認されています。他にも金融・法律など、YMYL分野のサイトでも大きな影響があったとされます(参考:Google Medic Update: Google's Core Search Update Had Big Impact On Health/Medical Sites|SEARCH ENGINE ROUNDTABLE)。

メディックアップデートで下落したサイトの多くは、健康やライフスタイルに関する助言をしている個人ブログやアフィリエイトサイト、まとめサイトでした。一方で、上昇したのは専門医療機関のサイトや政府・大学など公的機関サイトが目立ったため、「Googleが医療情報の品質管理を強化した」と解釈されました。

また先述の通り、この頃はGoogleの品質評価ガイドラインにてE-A-T(専門性、権威性、信頼性)の重要性が強調されており、メディックアップデートはこのE-A-T評価をアルゴリズムに反映したものと考える専門家もいます。すなわち、専門家によって書かれていない医療助言サイトや、信頼性に疑問符が付くYMYLサイトが一斉に評価を下げられたのです。

【SEOへの影響】

メディックアップデートを受け、該当分野のSEO担当者は以下のような対応を行いました。

  • 専門家の関与・監修:
    医療や法律などでコンテンツを提供する場合、資格を持った専門家に監修・執筆してもらい、そのプロフィールを明示するようになりました。著者情報や運営者情報の充実がE-A-Tを高めると考えられたためです。
  • コンテンツの正確性とアップデート:
    健康情報は日進月歩で進化しているため、古い情報や根拠不明な内容があると評価が下がる可能性があります。そこで信頼できる出典を引用し、定期的に内容を見直してアップデートするように努めるサイトが増えました。

メディックアップデートは、「命に関わる情報は慎重に扱う」方向に舵を切った重要な転換であり、以降のコアアップデートでもE-A-T(あるいは後述するE-E-A-T)を軸に、YMYLサイトの浮沈が繰り返されることになります。

2019年:BERT導入 – 自然言語処理の飛躍

2019年10月、Googleは自然言語処理モデル「BERT(バート)」を検索アルゴリズムに導入したことを発表しました。

BERTとは「Bidirectional Encoder Representations from Transformers」の略称で、単語の前後関係を考慮して文脈を理解できる当時最新のAI言語モデルです。Googleはこの変更を「過去5年で最大の飛躍、検索の歴史でもトップクラスの進歩」と位置付けました(出典:Understanding searches better than ever before|Google)。

BERTは、とくに長文・会話調・複雑なクエリで効果を発揮しました。ユーザーは質問文そのままや細かいニュアンスを含む検索でも適切な答えを得やすくなりました。また、音声アシスタントを使った検索(自然な口語)でも的確な結果が返ってくる場面が増え、音声検索普及にもつながると期待されました。

【SEOへの影響】

BERTに対してはランクブレインと同様、サイト側で直接対策できるものではありません。しかし、BERT導入はSEOのトレンドをよりユーザー本位の文章へと傾けました。具体的には以下の通りです。

  • より自然な言葉遣い:
    以前にも増して、「検索エンジンのためにキーワードを詰め込む」のではなく、ユーザーが尋ねそうな言い回しでコンテンツを書くことが推奨されます。BERTが文脈を理解するので、キーワードの細字一致に固執しなくても良くなりました。
  • FAQページへの対応強化:
    こちらもランクブレインのときと同様ですが、ユーザーの複雑な質問にもGoogleが答えようとするため、その答えを自サイトが提供できるようFAQページを設置したりするのが有効と考えられました。実際、FAQ構造化データを使った展開もこの頃増えています。
  • コンテンツの網羅性重視:
    一つのテーマについて幅広く丁寧に解説するコンテンツは、関連するどんなクエリにも答えられるため、BERT時代には強いとされました。逆に中途半端に浅い記事は、特定ニーズにはまらず評価されにくくなる傾向があります。

BERTに最適化しようとするより、良質なコンテンツ作りに集中すべきという論調が高まり、最終的にはE-A-Tとも合わさって「ユーザーにとってベストなコンテンツならAIがちゃんと見つけてくれる」という方向性が示されました。

2020年:コアアップデートの連発とBERTの進化

2020年は1月 / 5月 / 12月と、例年にも増してコアアップデートが頻繁に行われた年でした。とくに5月のアップデートは2018年8月以来の大変動との声もあり、COVID-19パンデミック下で変化した検索行動に対応する調整も含まれていた可能性があります。

2020年はCOVID-19の影響で、世界的に在宅・オンライン需要が高まり、検索でもニュースや健康情報、生活サービスなどに関心が集中しました。その中でGoogleのコアアップデート連発は、ユーザーに常に最新で信頼できる情報を届けるための調整とされています。たとえば医療系では公式情報へ誘導する傾向がより強まりました。

また、2019年末に多言語展開したBERTは、2020年中にさらに発展し、ほぼ全ての英語検索クエリに適用されるまでになりました(参照:Google: BERT now used on almost every English query|Search Engine Land)。日本語など他言語でも適用範囲が広がったと見られ、事実上BERTはGoogle検索の標準的なクエリ理解AIとなりました。

加えて2020年には「Passage Indexing(後にPassage Rankingと呼称)」という、長文ページ内の一部文章だけを抽出してランク付けする技術が発表され、これにもBERT系のNLPが応用されています。

【SEOへの影響】

2020年のアップデート群から学べるのは、アルゴリズム変動が一層頻繁かつ複雑になったことです。これによりSEO側では短期的にあれこれ手を加えるよりも、長期的な品質向上とユーザー満足度の追求がより重要と認識されました。具体的には以下の通りです。

  • コンテンツの継続改善(リライト):
    コアアップデートで順位が落ちても、低品質と判断された部分を直し続けるほかありません。そこで記事のアップデート、差別化、専門性の強化などPDCAを回し続けるリライト運用が定着しました。
  • E-A-Tと権威の構築:
    依然としてE-A-Tがテーマであり、とくにYMYLサイトは信頼性向上の取り組み(専門家起用、外部評価取得)が続きました。また結果として、ドメイン全体の権威を高めるブランディング的SEOが志向されました。
  • 検索トピックの変化への対応:
    2020年はコロナ禍で検索ニーズが激変した年でもありました。Googleのアップデートもこれに対応していたため、SEO担当者もユーザーの関心動向に敏感になり、コンテンツ戦略を柔軟に変更する必要性を痛感しました(例:旅行サイトが観光情報から「コロナ禍での旅行安全対策」記事にシフトなど)。

またテクニカルSEO面では、「Core Web Vitals」への準備も進み始めました。サイト速度改善や安定性向上は、この時期から多くの企業が投資を始めています。

2021年:ページエクスペリエンスアップデート – ユーザー体験をランキングに反映

2021年6月から8月にかけて段階導入されたこのアップデートは、ページのユーザー体験指標をランキング要因に加味するものでした。大きな変更点は以下の通りです。

  • Core Web Vitalsの導入:
    LCP(最大コンテンツ描画時間)、FID(入力遅延)、CLS(累積レイアウトシフト)の3つの指標が「良好」であることが、検索ランキング上有利に働くようになりました。それぞれページ表示速度・インタラクティブ性・視覚安定性などを測る指標です。よりわかりやすく言うと、高速で操作しやすくレイアウトが安定したページほど評価が高くなりました。
  • HTTPSの重視:
    以前からHTTPSは軽度のランキング要因でしたが、ページエクスペリエンスアップデートでその重要性が再確認されました。HTTPSでないページは「安全でない」とみなされ、ユーザー体験が低いと判断されます。

このアップデートのあと、ユーザーはストレスの少ないページにより多く遭遇するよう期待されました。上位に出てくるサイトは総じて読み込みが速く、画面がガタガタ動いたりしないものになるなど、ブラウジング体験が向上します。

ただ、実際のランキングへの影響は緩やかで、「劇的な変化は感じなかった」という声もあります。

【SEOへの影響】

ページエクスペリエンスアップデートやCore Web Vitalsは2018年頃から予告されていたこともあり、多くのSEO担当者は事前に対策を進めていました。具体的には以下のような内容が挙げられます。

  • サイトスピード・性能改善:
    画像圧縮、遅延読み込み、コードの軽量化、CDN利用など、ページ速度アップの施策が一層推進されました。LCP目標2.5秒以内を達成すべく、サーバー増強やSSR(サーバーサイドレンダリング)導入など本格的改善も行われました。
  • UXデザイン見直し:
    CLSを下げるため広告や画像のサイズ指定を徹底したり、FIDを下げるため不要スクリプトを削除するなど、設計・実装上の工夫が各所で行われました。また、ユーザーがイライラするポップアップ広告や過剰なデザイン要素を削減し、シンプルで使いやすいUIに変更する動きも見られました。
  • 定期的なモニタリングと改善サイクル:
    サーチコンソールのCore Web Vitalsレポートや、PageSpeed Insights等で計測を継続し、問題があればすぐ修正するという継続的最適化の意識が定着しました。SEO担当とフロントエンドエンジニアが協力し、データドリブンでUXを磨くケースも増えています。

総じてページエクスペリエンスアップデートは、Googleがコンテンツの質だけでなく「使いやすさ」も無視できないことを明確に示した出来事です。ユーザー体験とSEO成果がより直結するようになり、Webサイト開発においてSEO・UX・開発の連携がこれまで以上に重要となりました。

2021年:スパムアップデート  – 多方面におけるスパム対策強化

2021年はコアアップデートやページエクスペリエンスアップデート以外にも、スパム対策のアルゴリズム更新が複数回行われました。代表的ものは以下の通りです。

  • 一般的なスパムサイトの排除(2021年6月23日 & 6月28日):
    2回にわたるスパムアップデートが実施されました。GoogleのDanny Sullivan氏がTwitter(現X)で告知し、1回目のアップデート完了後、すぐ2回目も行われた形です。具体的な対象は明かされませんでしたが、フィッシングサイトやマルウェア配布サイト、偽情報サイトなど、一般的なスパム全般をより除去する試みと推測されています。
  • リンクスパムの排除(2021年7月26日):
    これは不自然なリンクへの対策で、有料リンクや相互交換リンク、フォーラムスパムリンクなどを検知し無効化する更新でした。nofollowやsponsoredが付けられるべきリンクに対し、付けていないサイトをGoogleが独自に判断し価値を無視すると説明されました。(参考:History of Google Algorithm Updates|Search Engine Journal

これらのアップデートはユーザーには気付かれづらいですが、水面下で検索エコシステムの健全性を保つ役割を果たしています。なお、スパムアップデートは現在も不定期で実施されています。

【SEOへの影響】

スパムアップデートは“健全なSEO業者”であれば直接関係ありませんが、次のような示唆を与えました。

  • リンクプロファイルの健全化:
    Link Spam Updateが明確にあったことで、SEO担当者は改めて自サイトへの被リンクを監視し、不自然なリンクは否認するなど管理する必要を感じました。また、将来的にスポンサーリンクにはrel="sponsored"を付与するなど、Googleのガイドライン遵守が叫ばれました。
  • ブラックハット離れ:
    これらの頻繁なスパム対策により、残っていたブラックハットSEO業者も徐々にリスクの高い手法から撤退を余儀なくされました。クライアント側も安易なリンク購入等を避け、コンテンツマーケティングなどホワイトハットな方法に予算を振る傾向が強まっています。
  • 自動生成サイトの排除:
    2021年当時増えつつあったのが、スクレイピング(他サイト転載)や自動文章生成によるコンテンツ大量生産サイトでした。スパムアップデートはこれらも対象にしていたと思われ、結果としてAIやボットで作られた低品質サイトは上がりにくくなりました。正攻法でコンテンツを積み上げているサイトにとっては追い風です。

Googleは毎日何らかの更新をしていますが、公式に「スパムアップデート」と称して告知するのは珍しく、これは裏を返せば検索結果のスパム対策を今後本格的に強化していく意思表示と捉えられました。実際この流れは、2022年以降の「ヘルプフルコンテンツアップデート」や、2024年のスパムポリシー強化につながっていきます。

2022年:ヘルプフルコンテンツアップデート – 人間のためのコンテンツを評価

2022年8月〜9月にかけて導入されたヘルプフルコンテンツアップデートについて、Googleは「訪問者に満足感を与えているコンテンツを高く評価し、訪問者の期待に応えていないコンテンツとの差別化を図る」ことを目的としていると説明しています(参考:2022 年 8 月の Google の有用なコンテンツの更新についてクリエイターが知っておくべきこと|Google)。

ヘルプフルコンテンツアップデートは、サイト全体のコンテンツ傾向を分析し、もしサイト全体が検索エンジン向けの無価値な内容だと判断した場合、そのサイトの全ページランキングを下げるというものです。

ポイントはページ単体ではなく、ドメイン全体を見る点。少数の優良ページがあっても、他がひどければ巻き添えで落ちる可能性があります。逆に大半が有用なら一部薄いページがあっても大きな影響は受けません。

Googleは評価を下げる対象として、以下のようなページを挙げています。

  • 検索ユーザーが期待する答えを得られないページ:
    たとえば製品レビューなのに、実際にその製品を使った形跡がない記事、トピックについて十分な深さがない記事など、読者が不満を感じるコンテンツです。これに関連して、2022年12月には従来のE-A-T(専門性・権威性・信頼性)に新たなE(経験)を追加した「E-E-A-T」を品質評価基準として発表しています。
  • 自動生成・盗用コンテンツ:
    人工的に量産された文章や、他サイトからコピーしただけの記事も対象となります。
  • サイトテーマ外記事の乱発:
    サイトの専門テーマとかけ離れた記事をアクセス狙いで色々投稿している場合も、サイト全体の統一性を欠くとしてマイナスになるとされます。

ただし、導入直後の影響は限定的で、「劇的な変化は感じられない」との声もありました。しかし2023年以降はヘルプフルコンテンツアップデートが「システム」として常時動作し、日々強化されているとも報告されています。

【SEOへの影響】

ヘルプフルコンテンツアップデートは、SEO担当者に対し「検索順位だけを狙った中身のないコンテンツ作りは通用しない。読者本位で価値あるコンテンツを作れ」というメッセージを送っています。これを受けて、SEOの施策・姿勢も変化しました。

  • サイト全体でのコンテンツ品質強化:
    以前から言われていたことではありますが、自サイトの全ページが本当にユーザーの役に立っているかを見直す機運が高まりました。役立たないページは思い切って削除・統合する「コンテンツ棚卸し」も各所で行われました。
  • 専門性の追求:
    網羅的に何でも浅く扱うサイトより、特定分野に特化して深掘りするサイトの方が評価されやすいため、サイトテーマの統一が図られました。企業ブログなども、あれもこれも投稿せず、自社専門領域に絞った記事を充実させる方向に舵を切っています。
  • ユーザーファーストの執筆:
    記事を書く際に「この情報はユーザーにとって本当に必要か?」「検索意図を満たす構成か?」をより考慮するようになりました。いわゆる“釣りタイトル”や冗長な前置きなど、ユーザーを苛立たせる要素は極力排除し、シンプルに答えや価値提供をする文体が推奨されます。
  • AIコンテンツの扱い:
    当時ChatGPTはまだ一般公開されていませんでしたが、自動生成コンテンツ全般が狙われたことから、今後AI生成文章を使う際は必ず人間が付加価値を与える必要があると認識されました。後にGoogleも「AIか人かは問わない、有用であれば評価する」と声明を出しますが、裏返せば「役立たないAI量産記事は排除する」ということです。

2023年:コンテンツ重視の継続と生成AI&検索AI時代の序章

2023年も引き続き、年に数回のコアアップデートが行われました。2022年のヘルプフルコンテンツシステムや、ページエクスペリエンス、スパムアップデートの延長で、サイト全体の役立つ情報量や信頼性、専門性が高いサイトがコアアップデートで評価を上げています。

逆にAI文章を大量投入しただけの低品質サイトE-E-A-Tに欠けるYMYLサイトは度重なるアップデートで順位下落が続きました。このように、2018年頃からのコンテンツ品質重視トレンドが2023年も軸となっています。

また、2023年はChatGPTの登場によるAIブームがSEO業界を直撃した年でもあります。同年2月にはBingがいち早くGPT-4統合のAIチャット検索を開始し、Googleも対抗してAIチャットボット「Bard」を公開しました。

そして同年5月のGoogle I/O 2023では、検索結果ページに生成AIを組み込んだSGE(Search Generative Experience)という実験的機能を発表しました(参考:Supercharging Search with generative AI|Google)。SGEは検索結果トップにAIが質問の要約や回答を生成して表示するもので、米国をはじめとした各国でテスト運用されたのち、2024年に世界展開されました。

▲SGEの例。現在は検索ボックス下に「Seach Labs|AIによる概要」として出てくる

また、ユーザー側の検索行動に徐々に影響が現れ始めています。とくに若年層を中心としたAIネイティブ世代では、従来のキーワード検索より「AIチャットに質問する」ことを好む傾向も指摘されています。

【SEOへの影響】

2023年のSEO業界は、従来のコンテンツ重視路線を突き詰める一方で、生成AI時代への準備も始まりました。具体的には以下の通りです。

  • コンテンツのオリジナリティ強化:
    ヘルプフルコンテンツシステムが9月にも再調整され、AIコンテンツや空疎な記事を持つサイトが更に順位を落とす事例がありました。SEO担当者は一層、記事に独自研究や専門的見解を盛り込み、生成AIでは再現しづらいオリジナリティを出すことに注力しています。
  • 構造化データ・情報の文脈:
    AIに自サイトの情報を正しく拾わせるため、構造化データでコンテンツの意味付けをしておくことがより重要と考えられています。GoogleはSGEの回答に出典リンクを表示しますが、それに選ばれるにはページ内で質問に直接答えている段落がある、マークアップが適切などの条件があると推測され、対策が議論されました。
  • クリック率への懸念:
    SGEが浸透すると、「AIが回答してユーザーが満足すれば、そもそもサイトにアクセスしないんじゃないか?」といった不安の声が各所から挙がりました。これに対し、サイト自体のブランド力を上げて直接訪問やリピートを増やすなど、検索エンジンの仕組みに頼らないアプローチが求められるようになってきています。
  • 生成AI活用と人的付加価値:
    SEOコンテンツ制作でもChatGPT等の生成AIを補助的に使うケースが急増しました。しかしGoogleの方針は「AI利用は問題ないが、人間のレビューや付加価値が必要」というものなので、最終的には専門家チェックや独自情報の追加など、人間による質保証プロセスを入れる流れが一般化しました。

2024年:寄生サイト対策と生成AIコンテンツへの警告

2024年、Googleはスパム対策を更に強め、複数回のスパムアップデートを実施しました

とくに注目されたのが、Googleがスパムポリシーを改定し新たに3つの違反カテゴリーを追加したことです(参考:Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー|Google)。具体的には以下の通りです。

  1. 期限切れドメインの不正使用:
    有効期限が切れて放置されたドメインを第三者が取得し、中身をスパムサイトに変えて利用する行為。たとえばかつて政府サイトだったドメインで、現在はアフィリエイトサイトになっている場合など、権威を悪用したランキング操作とみなし対象にします。
  2. 大量生成コンテンツの不正使用:自動生成などで大量の役に立たないページを作り、検索順位操作を狙う行為。まさに低品質AI記事量産などが該当し、これらを厳格にスパム認定する姿勢です。
  3. サイト評価の不正使用:
    いわゆる「寄生サイト」への対策です。権威あるドメイン上に第三者が許可を得てコンテンツを公開し、その高いドメイン評価を利用して自サイトのようにランキングを稼ぐ手法を指します。とくに日本においては、大学や病院、公的機関などのサイト配下に別業社がアフィリエイトサイトを作成するスキームがこれまで横行していました。これらが非常に低品質で、サイト管理者の監視が及んでいない場合はスパム認定し排除する、と明文化されました。

2024年3月のスパムアップデートでこれらが導入され、5月から本格施行されました。さらに6月にも類似のアップデートが行われ、寄生サイトや中古ドメイン利用のスパムサイトが大打撃を受けました。

【SEOへの影響】

2024年のアップデートはSEO業界に対し、スパム行為は即排除という強いシグナルを送りました。具体的には以下の通りです。

  • 寄生サイト手法の終了:
    「パラサイトSEO(権威サイトを利用する手法)」は事実上終焉を迎えました。SEO業者も寄生ページ作成サービスなどは提供不能となり、クライアントにも正攻法への転換を促しています。
  • 中古ドメイン戦略のリスク:
    期限切れドメインを使ってサイトを立ち上げページランクを引き継ぐ手法も、下手をするとドメイン全体がスパム認定されかねず危険になりました。そのため、過去の歴史が怪しい中古ドメインは敬遠され、新規ドメインで堅実に育てる方針が推奨されます。
  • AIコンテンツの取扱い明確化:
    大量のAI生成記事を垂れ流すだけでは一瞬上がってもすぐ圏外、という事態が相次ぎ、AIはあくまで補助であって、人間の知見・編集を必須と多くのSEO担当者が認識しました。「生成AIで1000記事量産」より「エキスパートがAIも駆使しながら1つ1つ質を担保」へとシフトしていきます。
  • 品質運営への安心感:
    ホワイトハットSEOを続けるSEO担当者から見れば、Googleの厳格化はポジティブです。努力して良いサイトを作れば、いっときスパムに抜かれても、最終的に勝てるという信頼感が強まりました。実際、「2024年のアップデートでスパムサイトが落ち、自サイトが長年の努力の末にようやく上位表示された」という声もあります。

2024年の変化は、Google検索が本格的にAI時代へ突入する前に、スパムの大掃除をしたとも言えるでしょう。検索結果を乱す要素を可能な限り排除し、今後のAI統合に備えて信頼できるコンテンツ群を維持しようとする意図が感じられます。

2025年以降の予測と、これからのSEOへの向き合い方

長々とお付き合いいただきありがとうございました。

ここまで読んでいただいた皆様ならすでにお気づきかと思いますが、Googleの今は、数多くのアルゴリズムアップデートの上に支えられています。それらは決して別個のものではなく、すべて地続きです。つまり、過去のアップデートの変遷を見れば、未来のSEOはだいたい予測がつくのです。

最後に、2024年までの傾向を踏まえたうえで、2025年以降のSEOについて、私見を交えながらお話しできればと思います。

予測1. ゼロクリック検索の加速

GoogleのSERPsで展開されているSGE(Search Generative Experience)により、ユーザーは検索結果画面上だけでも十分な情報を得られている状況です。その結果、従来のリンククリックを必要としない「ゼロクリック検索」が一層加速するでしょう。私自身、最近はSERPs上だけで検索行動が完結するケースが増えてきました。

これにより、サイトへの直接的な訪問数は減少する可能性があります。代わりにAIが自社のコンテンツを引用・要約してくれることで、ブランド認知や信頼性が評価される新たな価値指標となることも考えられますが、検索流入をメインに集客していた業者にとってはかなりの痛手です。

そのためこれからのSEOでは、いわゆるKnowクエリ(「〜〜とは」などの知識情報を求めるユーザー向けクエリ)よりも、GoクエリやBuyクエリなど、実際の行動が発生するようなキーワードを対策していく必要が高まりそうです。

予測2. 対話型検索の浸透

若年層を中心としたAIネイティブ世代の台頭により、検索行動が従来のキーワード入力から、対話形式による自然な質問へとシフトしていくことは避けられません。

ユーザーは、ChatGPTをはじめとしたチャットボットのような対話型インターフェースで複雑な情報を尋ね、リアルタイムで回答を得ることに慣れるでしょう。たとえば、旅行プランや製品比較、健康相談など、ユーザーは従来のリンク一覧ではなく、AIとの対話を重ねながら、答えを見つけにいく検索行動が増えていくことが予想されます。

これに伴い、サイトコンテンツも「質問に直接答える形式」を意識し、構造化データやQ&A形式でマークアップするなど、AEO(Answer Engine Optimization=質問エンジン最適化)に取り組む必要がでてくるでしょう。

予測3. 検索ツールの多様化

これまでのGoogle一強の時代から、ChatGPTやPerplexityといった生成AI検索、あるいはTikTokやInstagram、Xを検索代わりに使うSNS検索など、検索行動においては多様な選択肢が当たり前になっています。

Googleの世界シェアは今なお圧倒的ですが、若年層や特定領域のユーザーは別のプラットフォームで検索を完結させるケースが少なくありません。「Googleだけ意識しておけば十分」という考え方ではユーザーを取りこぼしかねないため、コンテンツ提供側は様々なプラットフォームに合わせた最適化や情報発信が求められます。

いわゆるSEOも、単なる検索エンジン対策ではなく、総合的なデジタルプレゼンス戦略へ拡張していくでしょう。

予測4. 検索履歴に基づくパーソナライズ化の深化

現在も位置情報や過去の検索履歴によるパーソナライズは進んでいますが、今後はさらにユーザーの趣味・関心、閲覧履歴、さらには対話履歴まで考慮し、一人ひとりに最適化された検索結果が提供されるようになると予測されます。

事実、2025年2月にはGoogle Chromeにおいて、ユーザーの検索履歴をもとにした高度な検索機能の提供が告知されました(参考:AI を使って Chrome の履歴を検索する|Google)。

2025年以降のSEO基本方針と未来像

これからのSEOはこれまで以上に「総合格闘技的なWeb戦略」となっていくでしょう。以下が重要なポイントです。

  1. E-E-A-Tを極める:
    「経験・専門性・権威・信頼性」の4要素を高める取り組みは今後も最優先です。AI時代でも信頼されるWebページであることが、AI回答に引用される条件となります。具体的には専門家との協業、調査データの公開、ユーザーからの高評価レビュー獲得、そして自社ブランドの認知・評価向上が鍵となります。
  2. 構造化データとコンテンツマークアップ:
    サイト内のコンテンツを、クローラーが理解しやすくマークアップすることは、検索AIに情報を取り込ませる上で一段と重要になります。FAQやレビューの構造化データはもちろん、将来的にはAIに要約・引用されやすいデータ構造を考慮した執筆も必要かもしれません。たとえば明確なQ&A形式、箇条書きのポイント整理などが考えられます。
  3. コンテンツの差別化と独自性:
    汎用的な情報はAIがどこからでも学習できるため、自社だけが提供できる価値が求められます。一次調査結果や独占インタビュー、コミュニティからのUGC(ユーザー生成コンテンツ)など、AIが簡単には真似できない強みを持つコンテンツが生き残ります。また、人間味やストーリー性など、読み物としての魅力もAIとの差別化要素となるでしょう。
  4. UXとエンゲージメントの向上:
    SGEが充実するとクリック率は下がる可能性があるため、一度サイトに訪れたユーザーを逃さずファン化する工夫が必要です。優れたデザイン、直観的なナビゲーション、関連コンテンツの提示など滞在したくなる仕掛けを作り、ブックマークやSNSフォロー、メルマガ登録などリピーター確保につなげます。検索に依存しすぎない集客経路を持つこともリスクヘッジとなります。
  5. 継続的なスパム対策と品質維持:
    Googleは今後もアップデートを繰り返しスパムを排除しようとします。SEO担当者はこれまで通りガイドラインを遵守し、短期的な裏技に走らず、地道な改善を続けることが最善策です。また競合が不正をしていれば逆にチャンスと捉え、Googleにスパムレポートを送るなど、健全なエコシステム作りにも関わっていくべきでしょう。
  6. AIの活用:
    防御だけでなく、SEO側もAIを活用し効率化できます。キーワード調査やコンテンツアイデア出しにChatGPTを使ったり、サイト内検索ログを分析して不足コンテンツを特定したり、またユーザーサポートにAIチャットボットを設置しUX向上を図るなど、AIを使いこなすこと自体が競争力となります。ただし、最終アウトプットの質は「人間が担保する」という基本を忘れずに運用していくことが重要です。

Googleアルゴリズムの進化史を振り返ると、常に目指しているのは「ユーザーに最高の情報を届ける」ことでした。そしてそのために行ってきたアップデートは、その時々の場当たり的なものではなく、全てが現在まで繋がるものとなっています。

今後検索がどんな形になろうとも、その本質は変わりません。SEO担当者にできるのは、ユーザーを知り尽くし、それに応えるコンテンツと体験を創出することです。AI時代は確かに未知数な部分も多いですが、質の高いものを積み上げてきたサイトにはむしろ追い風でもあります。変化を恐れるより楽しみつつ、技術とユーザー志向の両輪でこれからのSEOに向き合っていきましょう。

また株式会社GIGは、SEOをはじめとした包括的なコンテンツマーケティングの支援をしています(コンテンツマーケティング総合パートナー「コンマルク」という屋号でも展開中)。記事制作、動画制作、インタビュー取材はもちろん、SEO設計、コンセプト設計、ペルソナ/CJM設計などの上流設計や、アクセス解析、Webコンサルティングなどの運用支援も対応可能です。

これからのSEOやコンテンツマーケティング戦略にお悩みの方は、ぜひ一度お問い合わせください。無料コンサルも承っています。

■株式会社GIG
お問い合わせはこちら
採用応募はこちら(GIG採用サイト)
採用応募はこちら(Wantedly)

WebやDXの課題、無料コンサル受付中!

内田 一良(じきるう)

早稲田大学および同大学院卒。株式会社GIGにてMarketing事業部長。日本最大級のフリーランス・副業メディア『Workship MAGAZINE』のほか、数々のメディアのプロデュースを担当。メディア運営、コンテンツ制作、SEO、SNS、AIに詳しい。ウイスキーとストリートダンスが好き。