ヒューリスティック評価とは? 評価項目やメリット、手順を解説|東京のWEB制作会社・ホームページ制作会社|株式会社GIG

ヒューリスティック評価とは? 評価項目やメリット、手順を解説

2023-02-05 制作・開発

自社サイトの立ち上げやリニューアルを行うにあたり、公開前に事前調査を行う手法として「ヒューリスティック評価」というものがあります。

ユーザビリティ評価のひとつでもあるヒューリスティック評価は、基本的に専門家の経験則からWebサイトやアプリを評価し、問題点の抽出・改善策の検討を行う際に役立つものです。

今回はこのヒューリスティック評価の手順やメリット、原則などを中心に解説します。

弊社GIGではヒューリスティック評価を行える専門家が在籍しているため、明確な根拠のあるヒューリスティック評価の実施が可能です。自社サイトのヒューリスティック評価の実施をご希望であれば、お気軽にご相談ください。  
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ヒューリスティック評価とは?

ヒューリスティック評価とは、UI/UXの専門家がその経験則(ヒューリスティック)にもとづいて、Webサイトやサービス、アプリなどを評価する手法のことを指します。

1990年代に、ユーザビリティ研究の第一人者でもある「ヤコブ・ニールセン博士」によって提唱された評価手法で、多くの開発現場で活用されています。

ヒューリスティック評価のおもな特徴として、決められた観点でチェックを行うことが挙げられます。そのため、まずはチェックリストを作成し、そのチェックリストに沿ったカタチでスコアづけをしていくことになります。

評価の観点が明確になるので、「このWebサイトはトータルで70点」といったスコアづけがしやすくなります。

ユーザビリティテストとの違い

ユーザビリティテスト(ユーザ行動観察調査)とは、ターゲットとなるユーザーに類似した仮想ユーザーに、実際にWebサイトやアプリを使用してもらい、言動やマウストラックから問題点などを探る評価手法のことを指します。

以前はインタビュールームに仮想ユーザーを呼んでテストを行うのが一般的でしたが、近年ではリモートでテストを行うケースも増えてきています。

ユーザビリティテストでは、実際のユーザー行動から問題点を探るため、ヒューリスティック評価に比べてより根深い問題の発見につながります。

また、仮想ユーザーにテスト中に考えを独り言としてつぶやいてもらう「思考発話法」を使ってテストを進行する点も特徴です。ただ操作を分析するだけでなく、操作中に何を考えているかも分かり、ささいな点も含めて多くのフィードバックが得られる手法でもあります。

一方で、ヒューリスティック評価と比較した場合、課題の検討や仮想ユーザー選定などが難しく、時間やコストがかかってしまうところはデメリットになるかもしれません。

認知的ウォークスルーとの違い

認知的ウォークスルーとは、UI/UXの専門家がその経験則にもとづいて想定ユーザーになりきり、利用の流れの中で課題を抽出する評価手法のことを指します。

ヒューリスティック評価のようにチェック項目は作成せず、「対象となるユーザー層はどのような層なのか」「ビジネスのゴールは一体何なのか」といった、比較的大きな流れの中で課題を発見していく際に活用されます。

ヒューリスティック評価と違って細かなチェックリストを網羅的に見るプロセスがないぶん、スピード感をもって取り組みやすいといえます。一方で評価が専門家のスキルや経験に大きく依存するため、同じ調査内容でも、専門家の知見や前提条件により全く異なる評価結果が出てしまう恐れも。「誰に評価してもらうか」が非常に重要となる評価手法でもあります。

ニールセンの10原則とは?

ヒューリスティック評価を正しく行うためには、チェックリストを作成することが何よりも大切です。このチェックリストを作成する際に大いに役立つのが、「ヤコブ・ニールセンの10のヒューリスティック(ユーザーインタフェースデザインのための10ユーザビリティヒューリスティックス)」です。

10原則の内容は以下の通り。

1. システム状態の可視化
2. システムと現実世界の一致
3. ユーザーに制御の主導権と自由度を提供
4. 一貫性と標準性を保持
5. エラー防止
6. 覚えなくてもわかるデザイン
7. 柔軟性と効率性
8. 美しさとシンプルなデザイン
9. ユーザー自身で認識、診断、回復ができる
10. ヘルプとマニュアルの準備

この10原則について、各項目の概要をかんたんに解説します。

原則1. システム状態の可視化

これは「システムがいま現在どのような状態なのか」をユーザーにわかりやすく伝えることを意味します。

たとえば、ユーザーが何らかの操作を行うケースでは、データが処理中であればバーなどで進捗状況がわかるように表示し、処理が完了した際には完了通知を行うことで、ユーザーは自分の操作が完了したことを把握できます。

システムの状態をユーザーに伝えることで、ユーザーは安心感をもって次の処理へと進めるはずです。

原則2. システムと現実世界の一致

システム設計は、ユーザーが理解しやすい言語や概念で行いましょう。特定の組織や業界でのみ使われる専門用語を活用するのではなく、ユーザーにとって馴染みのあるフレーズやアイコン、画像、操作ボタンのレイアウトなどを採用することで、ユーザーは経験や知見にもとづいた直感的な操作や問題解決が可能になります。

たとえば、「戻る」や「進む」といったボタンを横並びにレイアウトする場合、「戻る」ボタンは左側に配置されることが一般的です。このように現実世界での慣例に従うことは大切な原則です。

原則3. ユーザーに制御の主導権と自由度を提供

ユーザーが間違った操作を行った場合、かんたんに元の状態に戻せるように設計することが大切です。

たとえば、処理途中でユーザーが操作をキャンセルしたいと感じた場合、それが滞りなく実行できることで、システムに対する決定権をユーザー側に委ねることができます。

ユーザーが自由に操作できる環境を提供することで、ユーザーは安心してシステムの探索・操作を行うことができるでしょう。

原則4. 一貫性と標準性を保持

システム内では、一貫性のあるデザインや用語を使用するようにしましょう。そうすることで、ユーザーは迷わずに操作ができるようになります。

また、業界標準や一般的なガイドラインに従ったデザインを採用することで、ユーザーが他のシステムで培った経験や知識を活用できるようになります。

原則5. エラー防止

デザインや操作面を工夫することで、ユーザーがエラーを引き起こす可能性を最小限に抑えることができるでしょう。

たとえば、入力チェックや確認ダイアログ機能などを設けることで、間違った操作・入力を事前に防ぐことができます。

システムがユーザーの意図を推測し、適切なサポートを提供できるようにすることも求められます。

原則6. 覚えなくてもわかるデザイン

ユーザーがシステムを利用する際の認知負荷を軽減させることも大切です。情報をシンプルにし、かつ適切なレイアウトやグルーピング、階層構造で設計することで、ユーザーが迷わずに情報を探すことができます。

また、不要な情報や選択肢は極力排除し、ユーザーが目的に集中できる環境作りも必要です。

原則7. 柔軟性と効率性

システムを利用するユーザーは、初心者から上級者までを想定し、幅広いユーザーが使いやすいように設計しましょう。

初心者向けのガイダンスやアシスト機能を提供する一方で、上級者向けにはショートカットやカスタマイズ機能を用意します。こうすることで、スキルレベルに合わせたカタチでユーザーがシステムを効率的に利用できるようになります。

原則8. 美しさとシンプルなデザイン

ユーザーインターフェース(UI)が提供すべき本質的な機能や価値に焦点をあて、無関係な装飾は極力なくし、オシャレさを維持しつつ最小限のデザインにすることを心がけましょう。

多くのデザインをすることが駄目なわけではありません。しかし本質的でない情報が多く含まれると、本来伝えるべき情報が伝わらない可能性も否定できません。

原則9. ユーザー自身で認識、診断、回復ができる

エラーコードのようなユーザーにとってわかりにくい情報は使用せず、エラーメッセージを使用しましょう。また、エラーメッセージはユーザーがわかりやすいように簡単な言葉で表現します。

何が問題なのか、何が起こっているのかをメッセージによって正確に提示することで、ユーザーが問題点を素早く理解し、ユーザー自身でトラブルを解決できるようになるでしょう。

原則10. ヘルプとマニュアルを準備

ユーザーが必要な情報やサポートにアクセスしやすい環境作りは大切です。

オンラインヘルプやFAQ、チュートリアル、使い方マニュアルなどを充実させ、ユーザー自身で解決策を見つけられるようにします。

また、ヘルプ情報は簡潔かつ具体的に、検索しやすい形式で提供するように心がけましょう。

ヒューリスティック評価の手順

ここからは、ヒューリスティック評価の手順について解説を進めます。手順は大まかに分けて、

1. 評価する前提条件の設定
2. 評価基準の設定
3. ヒューリスティック評価の実施
4. 評価結果から問題点の抽出・解決策検討

の4段階になります。

また、1度だけでヒューリスティック評価を終えるのではなく、違う目的を設定してからさらに改善を図っていくのも選択肢のひとつです。

手順1. 前提条件の決定

まずは、ヒューリスティック評価を行ううえでの前提条件を決めることからはじめましょう。

■目的の設定

何を目的として評価を実施するのかを決めておくことで、評価する際に重点的にチェックすべき箇所が明確になります。やみくもにヒューリスティック評価を行うのではなく、目的を定めてから開始することが不可欠です。

■ターゲットの設定

Webサイトやアプリに訪問するユーザーの属性を設定します。性別、年代、職業、年収、趣味、家族構成など、より詳細なターゲットイメージ(ペルソナ)を設定することを心がけましょう。

たとえば、「20代~50代の男女」など幅広いターゲット層を設定してしまうと、「25歳女性」と「45歳男性」では趣味嗜好や年収などが大きく異なり、どの層をターゲットにしたいのかイマイチ見えてこないWebサイトやアプリができてしまいます。

「30歳~35歳の会社員男性、年収500万円以上、既婚・妻子あり」など、具体的にターゲット層を絞り込んだペルソナを設定することが重要です。

■競合の設定

自社サイトと競合する競合サイトを設定します。製品やサービス上での競合を中心に、複数件抽出しましょう。

抽出するサイトは、自社サイトよりも優れていると思われるようなデザインを持っていたり、ビジネス上で成功をおさめている競合サイトを設定します。そうすることで、自社サイトが抱えている課題も浮き彫りになるでしょう。

■端末の設定

Webサイトやアプリが、PCだけでなくスマホやタブレットなど多端末に対応しているケースでは、調査の範囲をスマホサイトまで広げるかどうかを決定します。

スマホサイトでの調査は、PCサイトと比べて時間が掛かる場合も多いです。予算や人手次第では、とりあえずはPCサイトに限定して調査を行い、結果次第で調査範囲を広げるのも選択肢のひとつです。

手順2. 評価基準となるチェックリストの作成

ヒューリスティック評価を行う際には、チェックリストの作成が不可欠です。チェックリストを作成する場合には、前に解説した「ヤコブ・ニールセンの10のヒューリスティック」を参考にするケースが多くなります。

10個の原則をもとにしたカタチでチェックリストの項目を作成していきますが、チェックリストの作成を他社に一任する場合、10原則については最低限きちんと押さえているかどうかのチェックが必要です。

また10原則に加えて、自社のビジネスモデルに合わせた観点でのチェック項目も作っておくことも重要です。

手順3. チェックリストに沿って評価を実施

前提条件・評価基準がそれぞれ決まったら、実際にヒューリスティック評価を行います。

ヒューリスティック評価は上記で定めたチェックリストをもとに進めます。実際のWebサイトやアプリを操作しながら、チェックリストをもとに動作を確認し、問題があると感じた箇所をリストアップしていきます。

良い点・悪い点も両方の意見を出し合いますが、矛盾する指摘(ひとりは良いと感じたが、別の方からみたら悪いと感じるなど)があった場合には、評価中はどちらを採用するかの判断ができません。その場合、最終的にレポートにまとめたうえで、事前に決めた評価基準にもとづき、どちらの意見が正しいかを判断することになるでしょう。

また評価する際には、Webに関する知見がある専門家を含む複数人(しかし5人以下)に依頼することがおすすめです。人数が多くなり過ぎると、かえって対立する意見が多くなり収拾がつかなくなるケースも。

競合サイトも同時に評価する場合には、同条件のもとで操作を行い、評価対象と比べるのが良いでしょう。

手順4. 問題点を抽出して改善案を作成

ヒューリスティック評価が終われば、評価する際に使用したチェックリストをもとに、結果をまとめて問題点の抽出や改善案を作成していきます。

たとえば、「入力エラーはリアルタイムで表示されるか」という項目が、「×」と判断されたケースでは、エラー表示に関する改善策を検討します。

改善後にはあらためて評価を行い、前提条件・評価基準をそれぞれクリアできているかなどの振り返りも忘れずに行うことが大切です。

ヒューリスティック評価のメリット

ここまでヒューリスティック評価やチェックリストについて確認してきましたが、あらためてヒューリスティック評価を行うメリットについて理解を深めておきましょう。

メリット1. 定性的な評価ができる

アクセス解析などは、データにもとづいてWebサイトやアプリの状況を分析することから「定量調査」にあたります。一方、ヒューリスティック評価は、実際にユーザーが操作したうえで、Webサイトやアプリの使いやすさ、見やすさ、ストレス要因といったことを調査する「定性調査」にあたります。

近年では、ビッグデータの活用の広まりなどから、ユーザーの行動データがこれまで以上に取得しやすくなりました。しかし、ビッグデータは膨大な量の数字でしかないことも事実で、ユーザーの行動背景を知り、より具体的なWeb戦略を立てるためには、定性調査が不可欠です。

メリット2. 評価コストを抑えられる

ヒューリスティック評価は、分析・評価手法のなかではコストが低くなるのもメリットのひとつです。

専門家とはいえ、あくまでも個人の視点で分析を行うため、多くのユーザーを集めたり、テストとして広告費をかけたりする必要がありません。

もし自社にWebに関する知見がある方がいれば、その社員の意見を聞くだけでも十分なヒューリスティック評価になります。

メリット3. スピーディに評価できる

ヒューリスティック評価では、評価する方と評価基準となるチェックリスト以外に用意しなければいけないものがないため、スピーディに調査・評価を行うことができます。そのため、ヒューリスティック評価を行うために開発スケジュールをタイトにする必要はありません。

また、実施コストの低さゆえに、ヒューリスティック評価はスピーディかつ小まめに調査することができます。

メリット4. 制作途中でも評価できる

ユーザーテストを行う場合、ある程度完成されたWebサイトやアプリを用意しないと、あまり効果が得られません。一方、ヒューリスティック評価は制作途中のWebサイトやアプリに対しても効果があります。

これはWebに関する事情に精通した専門家に見てもらうため、制作途中であっても十分に有用な意見をもらえることが理由です。極端に言えば、コーディング前の設計段階でも評価できるでしょう。

本格的にコーディングするフェーズに入る前に問題点や改善点が発見できれば、修正するのに必要な手間やコストなどを大幅に削減することにもつながります。

ヒューリスティック評価を実施する際の注意点

ヒューリスティック評価を行う際には、「評価者の主観が影響する可能性が高い手法である」ことは理解しておきましょう。

評価基準となるチェックリストを作成できていても、評価者のレベルはダイレクトに結果に影響を与えます。仮に評価者が誤った評価を下すと、現状を悪化させてしまう可能性も否定できません。

また、評価者のレベルは判断しにくいものでもあります。事業やWeb関連について深い知識を持っている方でも、なかにはユーザー心理に関しては無関心という場合も。

この場合、多少知識レベルでは劣っても、ユーザー心理を理解できる方に評価してもらうほうが、良い結果につながる可能性が高くなるかもしれません。

このようにヒューリスティック評価を実施するうえでは、評価者の選定が非常に重要なステップであるといえます。まずは適切な評価者を探すところから始めましょう。

ヒューリスティック評価はGIGにお任せください

ヒューリスティック評価を行うことで、Webサイトやアプリの問題点を見つけることができます。それを適切に改善できれば、ユーザビリティの向上が期待でき、かつPVやCVアップといった成果にもつながるはずです。

ですが今まで解説してきたように、ヒューリスティック評価は評価者の選定が第一。専門家の経験則にもとづいて評価結果を出すことから、評価者に「知見」や「実績」があることが絶対条件です。

そのため、UI/UXデザインの領域で多くの実績を持つ制作会社に評価を依頼することをおすすめします。GIGでは、ヒューリスティック評価を行える専門家が在籍しているのはもちろんこと、過去には社内で勉強会も実施し、全社的にヒューリスティック評価を学習しています。



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