BigQueryの新料金体系を解説。基礎知識からコストを抑えるコツまで|東京のWEB制作会社・ホームページ制作会社|株式会社GIG
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BigQueryの新料金体系を解説。基礎知識からコストを抑えるコツまで
2023-07-09 制作・開発
自社がもつビッグデータをどのように活用すべきか、悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。
ビッグデータを上手に活用するためには、データウェアハウス(DWH)が欠かせません。そのなかでも昨今、Google社が提供するクラウド上で活用できるデータウェアハウス『BigQuery』が、注目されてきています。
類をみない処理スピードでビッグデータを解析できるBigQueryは、今後ますます注目度が高まるでしょう。今回はBigQueryの料金体系に焦点をあて、新料金体系の「BigQuery Editions」などについて解説します。
BigQueryとは?
BigQueryとは、 Google Cloud Platform(GCP)で提供されているサービスのひとつで、大容量のデータを瞬時に解析できるツールです。一般的には、データウェアハウス(DWH)に分類されます。
Google社内で使用していた大規模なクエリを実行するサービス『Dremel』を、外部のユーザー向けにも利用できるようにしたものがBigQueryです。
BigQueryの強みは処理速度の速さ。数TBや数PBという大容量のデータをたったの数秒、数十秒という超高速で処理できます。
また、クラウドサービスであるがゆえに、サーバーレスでかつスケーラビリティであることから、コストパフォーマンスも抜群。GCPのほかのサービスとも円滑に連携できるため、扱いやすいのが特徴です。
くわえて、Webサイトのアクセス解析に使用されるGA4(Google Analytics 4)ともスムーズに連携でき、GA4単体ではできないようなアクセス解析にも大いに役立つでしょう。
BigQueryの新旧料金体系と変更点
そんなBigQueryですが、2023年に料金体系の変更がありました。2023年3月29日(米国時間)に「Google Data Cloud & AI Summit」において、BigQueryの新しい料金体系である「BigQuery Editions」が発表され、すでに適用されています。
BigQueryのおもな課金対象は以下の2つとなります。
- コンピュート料金(分析・処理量に対する課金)
- ストレージ料金(格納したデータサイズに応じた課金)
新旧の料金体系における変更点について、以下の表にまとめました。
項目 | 旧 | 新 |
コンピュート料金 | オンデマンドか、Flat-rateから選択 | オンデマンドか、BigQuery Editionsから選択 |
コンピュート料金の柔軟性 | 1. オンデマンド:利用状況に応じて柔軟にスケール可能 2.Flat-rate:事前にスロットを購入して定額利用 | 1. オンデマンド:利用状況に応じて柔軟にスケール可能 2.BigQuery Editions:事前にスロットを購入して定額利用か、BigQuery Autoscalerによる柔軟なスケールが可能 |
ストレージ料金 | Logical storage(圧縮前の額面データサイズに対して課金) | Physical storage(圧縮後の実データサイズに対して課金)か、 Logical storageから選択可能 |
オンデマンドについて | - | ・オンデマンド課金単価が約25%値上げ ・オンデマンドと同様の機能が揃っているのは、BigQuery Editions Plusのみ |
新料金体系:BigQuery Editionsとは?
まずはコンピュート料金(分析・処理量に対する課金)の料金体系について確認していきます。
今までは、「Flat-rate pricing」という定額利用の料金体系が存在しておりましたが、それに代わるものとして「BigQuery Editions」が登場しました。「BigQuery Editions」は、BigQueryのコンピュート処理に対する新料金体系を指します。
BigQuery Editionsは、異なる3つのプラン(Standard / Enterprise / Enterprise Plus)で構成され、それぞれで利用できる機能にも差異があります。
またBigQuery Editionsは、後述の「BigQuery Autoscaler」機能とセットであるため、適切に設定すれば従量課金のメリットを最大限享受でき、料金の最適化もはかれます。
3つのプラン・料金表
BigQuery Editionsのプランごとの料金や機能の違いは以下の通り。なお、記載の情報は2023年08月現在のものです。
項目 | Standard | Enterprise | Enterprise Plus |
単価(Tokyo) | $0.051/slot/h | $0.0765/slot/h | $0.1275/slot/h |
1年/3年コミット | × | ○ | ○ |
SLA | 99.9% | 99.99% | 99.99% |
スロット数 | 最大1,600slots | 制限なし | 制限なし |
CMEK | × | × | ○ |
VPC Service Controls | × | ○ | ○ |
動的データマスキング | × | ○ | ○ |
列レベルセキュリティ | × | ○ | ○ |
行レベルセキュリティ | × | ○ | ○ |
BI Engine | × | ○ | ○ |
BigQuery ML | × | ○ | ○ |
Object table | × | ○ | ○ |
BigQuery Editionsでは、個々のワークロードの要件に適したプランが選択できます。
たとえば、Standard Editionでは、アドホック、開発、テストワークロードに最適です。一方Enterpriseでは、セキュリティ、ガバナンス、機械学習、データ管理機能といった点が強化されています。
Enterprise Plusは、高稼働率、可用性、リカバリ要件などが求められるワークロードや、複雑な規制ニーズがあるワークロードといったところまで対象範囲は広がります。
企業が利用するならば、「Enterprise Plus」が最適な選択肢となるケースが多いでしょう。
Editionsとオンデマンドの使い分け
オンデマンドとするべきか、適切なEditionsを購入するべきか、判断に迷う担当者の方も多いかと思います。この項目では、オンデマンドとEditionsの使い分けについても解説します。
オンデマンドでは、月あたり1TBのスキャンまで無料枠(Free tier)が使えます。スキャンする容量が1TBを超えない範囲ならば、オンデマンドとすることで無料枠内での利用が可能です。
1ヶ月内で、スキャンするデータ容量が1TBを超える見込みがあるケースでは、機能差などを確認したうえで、いずれかのEditionを選択するのがおすすめです。
ただし、オンデマンドでは、Enterprise Plus Editionと同等の機能が利用できるため、VPC Service Controlsや動的データマスキングなどのセキュリティ機能を利用したいケースでは、オンデマンドが一時的な選択肢となることも想定されます。
ただ、Enterprise Plus Edition + Autoscalerで最適化する方が、オンデマンドよりも安価な料金でサービスが使える可能性もあります。そのため、自社の使用量を考え、柔軟に切り替えることが求められるでしょう。
新機能:BigQuery Autoscalerとは?
BigQuery Editionsは新機能である 「BigQuery Autoscaler」により、コストをより柔軟化・最適化することが可能となりました。
「BigQuery Autoscaler」とは、BigQuery Editionsのスロット確保量を、クエリ要求に応じて自動で増減する機能のことを指します。この機能により、BigQuery Editionsをオンデマンドと同じように柔軟にかつ効率的に利用できます。
BigQuery Autoscalerの特徴はおもに以下の通りです。
- スロット数の自動増減により利用した分だけ課金
- Baseline(最低確保量)とMax(上限)の設定が可能
- 最低課金幅は「100slot/1秒」
BigQueryのスロットとは、BigQueryでSQLクエリを実行するために使用される仮想CPUのことを指します。クエリの実行中、BigQueryはクエリのサイズと複雑さに応じて、クエリに必要なスロット数を自動的に算出します。
BigQuery Autoscalerを利用してEditions費用を最適化する方法
BigQuery Editionsを利用する場合には、BigQuery AutoscalerのBaseline(最低確保量)を0slot とすることで、クエリが発生していない時間帯はスロット確保がゼロになるため料金が発生しません。これにより、オンデマンドと似た従量課金の使い方ができます。くわえて、Max値を指定することで、想定外の課金を防ぐことにも役立つはずです。
スロット確保量がMax値に達したケースでは、クエリがエラーとなるわけではなく、投入済みのクエリはより時間をかけて計算が行われるようになり、新しいクエリはスロットが空くまで待たされることになります。
夜間や休日を含めて定常的にクエリが発生している場合では、BigQuery Editionsを1年/3年コミットメントで購入して、購入した分のスロット数をBaselineとして設定。Baselineを超える分に関しては、Autoscalerで必要なときのみ確保するといった使い方をすると、より費用対効果を高めた利用が可能となるでしょう。
新料金体制の課金対象:Physical storageとは
次にストレージ料金(格納したデータサイズに応じた課金)について確認していきます。
2023年7月に、Physical storageでの課金タイプが一般公開となり、それ以降はデータセットごとにLogical storage(データが圧縮される前のデータサイズの論理値)料金か、Physical storage(圧縮後のデータサイズ)料金かを選択できるようになりました。
Logical storage料金とPhysical storage料金とでは、単価が異なります。「東京リージョン」「Active ストレージ」「2023年8月現在」で確認すると、以下の通りです。
- Logical storage単価:「$0.023/GB」
- Physical storage単価:「$0.052/GB」
一見すると、Physical storageの方が単価が高いため、料金が跳ね上がってしまうかもしれません。しかし、実際には圧縮率によって課金対象となるGBが小さくなるため、従来のLogical storage単価よりも安く利用できるケースは多くなるでしょう。
圧縮率はデータの内容によって上下しますが、12分の1以上の圧縮率を達成したケースもあり、ストレージ料金を大きく下げる要因にもなります。
無料で利用できるBigQueryのオペレーション
BigQueryのオペレーションには、どのロケーションを選択したとしても無料で使えるものがあります。確認しておきましょう。
オペレーション | 内容 |
データ読み込み | 共有スロットプールの使用は無料。定額料金を選択すると、保証された容量を獲得できます。データがBigQueryに読み込まれると、ストレージの料金は発生します。 |
データコピー | テーブルのコピーは無料。ただし、新しいテーブルやコピーしたテーブルの保存には料金が発生します。 |
データエクスポート | BigQueryからCloud Storageにデータをエクスポートするケースでは、エクスポート自体は無料。ただし、Cloud Storageへのデータ保存には料金が発生します。 |
削除オペレーション | データセットまたはテーブルの削除、個々のテーブルパーティションの削除、ビューの削除、ユーザー定義関数の削除は無料。 |
メタデータオペレーション | 「list」「get」「patch」「update」「delete」 の呼び出しは無料。たとえば、データセットの一覧表示、データセットのアクセス制御リストの更新、テーブルの説明文の更新、データセット内のユーザー定義関数の一覧表示などが該当します。 |
BigQueryの料金を抑えるコツ
最後にBigQueryの料金を抑えるコツについても確認しておきます。
コツ1. 「SELECT *」はなるべく避ける
「SELECT *」を使ってのデータ照会は、もっとも費用がかかる方法だといえます。なぜならば、「SELECT *」使用すると、BigQueryはテーブル内のすべての列をフルスキャンするためです。
データのテストや検索には、全件対象となる「SELECT *」ではなく、データプレビューオプションを活用し、実際にクエリを実行する際には、必要な列のみを抽出して実行するようにしましょう。
コツ2. クエリを実行する前に料金を見積もる
クエリは基本的には読み取られたバイト数に応じて課金されますので、実際にクエリを実行する前に、プレビューして費用を見積もることもおすすめです。
クエリを実行する前に費用を見積もるためには、以下のオペレーションを行います。
- Cloud Consoleで、クエリ検証ツールを表示する
- GCP料金計算ツールを使用する
コツ3. 大容量のデータセットの費用を検討する
大容量のクエリ結果を宛先テーブルに書き込むケースでは、デフォルトのテーブル有効期限を適用して、不要になったデータは削除するようにしましょう。
BigQueryのストレージで大容量のデータセットを維持するには費用がかかります。
永続的にアクセスする必要性がないのであれば、デフォルトのテーブル有効期限を活用して、自動的にデータを削除することがおすすめです。
BigQueryの導入支援はGIGにお任せください
BigQueryは新料金体系となり、オンデマンドにするのか、Editionsで運用するのか、悩むところかと思います。
GIGでは、システムの開発からクラウド環境の構築・移行、運用・保守業務まで幅広い支援が可能です。単なるBigQueryの導入支援だけでなく、クライアント企業が抱える課題を明確化し、目的を達成するためのプラニングから運用・改善までを支援します。
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