“サルでもわかる”はずの初心者向けコンテンツが、ヒトにも全然伝わらないたった1つの理由|東京のWEB制作会社・ホームページ制作会社|株式会社GIG
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“サルでもわかる”はずの初心者向けコンテンツが、ヒトにも全然伝わらないたった1つの理由
2023-04-26 制作・開発
こんにちは。メディア事業部で編集者として働く齊藤です。
「サルでもわかる」「小学生でもわかる」「ゼロからわかる」……。
皆さんは、このように書かれた初心者向けコンテンツを一度は目にしたことがあるでしょう。
しかし、同時にこうも思ったことはありませんか?「サルでもわかるって言う割に、内容が難しくて全然よくわからないんだけど……」と。
では、なぜこのような「初心者に伝わらない」初心者向けコンテンツが生まれてしまうのでしょうか。GIG入社以前から、歴史ライターやファイナンシャルプランナーとして初心者向けにさまざまなコンテンツを制作してきた筆者が、その理由を分析してみました。
制作者の“初心者”に対する理解度が低い
先に結論を言ってしまうと、初心者向けコンテンツがわかりづらくなる原因は「制作者の“初心者”に対する理解度が低いから」とまとめられます。
そもそも、世のなかで制作されるコンテンツは、多くが「課題を解決する」ために制作されるもので、必然的に「専門家が初心者に教える」形式がよく採用されます。当然、初心者向けコンテンツの制作者は、その分野の専門家または有識者というパターンが大半です。
しかし、じつはこれこそがわかりづらさの理由になります。なぜなら「専門家」と「初心者」はある意味対極の存在なので、「専門家が初心者の求めているものや知識レベルを想像することが難しい」、もっと簡単に言えば「初心者の気持ちがぜんぜんわからない」という状態に陥りやすいからです。
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具体例を挙げましょう。私はこれまでファイナンシャルプランナーとして活動してきた以上、当然ながらお金への苦手意識はほぼありません。ところが、そんな私のもとには「お金に関して考えることに抵抗がある方でも、楽しく学べるコンテンツをつくってください」という依頼がよく届きます。
一見すると簡単ですが、じつはなかなか難しいお題です。なぜなら、私はお金を扱うことに苦手意識がないので「お金について考えるのが苦痛な人の気持ち」を想像するのは大変だからです。
このようなケースだと、自分は「お金のことを考えるのに抵抗がある人」に情報を発信しているつもりでも、実際はファイナンシャルプランナー視点のコンテンツにしかなっておらず、読者や視聴者との認識のギャップが生まれてしまうことも……。
そのため「初心者向け」にコンテンツを発信するときには、まず自分が初心者とは対極に近い立ち位置にあることを自覚したうえで、自分のなかの「これくらいの知識は前提だろう」「たぶん伝わるし説明を省略していいだろう」といった常識を見直す必要があります。
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ただし、世のなかには「素人から見ればどうでもいいようなポイント」でも、専門家から見れば「デマ・誤情報につながる」という理由で回りくどい表現になるケースも多いです(たとえば、「NISAとiDeCoは同じ積立投資なのでどっちを使っても一緒」という一文があったら、必ず誤りを指摘されるでしょう)。
専門家が回りくどい説明をしている場合、「単に好み(あるいはクセ)で回りくどい説明になっている」のか、「回りくどい説明をしないとデマ・誤情報になってしまう」のかは、よく確認する必要があります。
“初心者向けコンテンツ”の具体例
上記で初心者向けコンテンツがわかりづらくなる理由を解説しましたが、以下では初心者向けコンテンツの一例として、皆さんにはあまり親しみがないであろう「歴史」に関する2つの文章をご紹介します。
具体的には、「歴史がよくわからない初心者向けに、徳川家康をかんたんに300字程度で解説する記事を制作してください」という依頼があったと仮定します。
このとき、おそらく多くの研究者や歴史の専門家は、以下のような文章を書くのではないでしょうか。
徳川家康は江戸幕府の初代将軍です。三河国で松平広忠の嫡男として生まれ、今川義元に仕えました。
しかし今川義元が桶狭間の戦いで滅ぼされると、織田信長と同盟を結んで駿河を支配。本能寺の変で信長が討たれた後は豊臣秀吉と後継者の座を巡り対立するものの、やがて秀吉の家臣となり、関東を支配しました。
秀吉の死後、石田三成を関ヶ原の戦いで破ると、慶長8年(1603)には征夷大将軍となって江戸に幕府を開きました。嫡男の秀忠に将軍職を譲ったのちは駿府に隠退したものの、依然として幕府で実権を握ります。晩年には大坂の陣で豊臣氏を滅ぼし、武家諸法度などを定めて、幕政の基礎を築きました。
(参考:デジタル大辞泉)
上記の文章は、ある程度歴史を専門的に学んだ人なら何の違和感もなく読めますし、なんなら「易しい」と感じるはずです。しかし、歴史初心者が見たらどうでしょうか。「三河国ってどこ?」「嫡男ってなに?」と、冒頭からつまずいてしまうかもしれません。
私がこのお題をもらったら、「初心者に伝えること」だけを意識して以下のように書くと思います。
上記の文章は、ある程度歴史を専門的に学んだ人なら何の違和感もなく読めますし、なんなら「易しい」と感じるはずです。しかし、歴史初心者が見たらどうでしょうか。「三河国ってどこ?」「嫡男ってなに?」と、冒頭からつまずいてしまうかもしれません。
私がこのお題をもらったら、「初心者に伝えること」だけを意識して以下のように書くと思います。
「徳川家康」という名前はご存知の方も多いと思います。でも、「何をした人か」「何がすごかったのか」は意外と説明が難しいのではないでしょうか。
家康のやったことはいろいろありますが、一番は「江戸幕府をつくり、日本に約260年の平和をもたらしたこと」でしょう。江戸幕府の詳しい説明は長くなるので省略しますが、「現在の日本政府(内閣や国会)」をイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれません。
一方、家康は生まれたときから「将来の成功」が約束されていたわけではありません。今川義元・織田信長・豊臣秀吉といった戦国時代のめっちゃ強いヤツらの部下として働き、彼らに信頼されてめきめき勢力を拡大。秀吉の死後、ついに江戸幕府をつくったのです。
こちらのほうがだいぶ読みやすく、内容も頭に入ってくるのではないでしょうか。詳細は後で触れますが、工夫したおもな点は以下の通り。
- 専門用語を使わない
- たとえ話/具体例を盛り込む
- あえてフランクな表現をする
ただし、代わりに「文字数に対して盛り込める情報量」が非常に少なくなってしまっていることは事実です。初心者向けコンテンツはていねいな説明が必要なぶん、どうしても文字数がかさむ傾向にあります。
本当に「サルでもわかる」コンテンツを制作するためのコツ
初心者向けコンテンツの具体例をご紹介したところで、実際に活用できる初心者向けコンテンツ制作のコツをご紹介します。
コツ1. なるべく専門用語を使わない(使う場合は必ず説明する)
初心者向けコンテンツを見るうえで初心者がつまづく最大のポイントは、「いきなり登場する専門用語」ではないかと思います。先ほどの例で言えば「家臣」なんかがわかりやすいですよね。
こうした用語は、使わずに済むなら使わないのがベストではあります。この「家臣」という用語は、意味としては現代でいう「部下」とほぼ同じです。「家臣」といわれても関係性がよくわからないかもしれませんが、「部下」と書かれていればスッと頭に入るでしょう。
一方、避けては通れない専門用語もあります。たとえば、投資に疎い人向けに投資信託を紹介する一文があったとして、「インデックス投資」という用語を使わずインデックス投資について説明するのは困難です。
この場合、インデックス投資という用語は使いつつ、以下のような手法でしっかり説明してあげることが大切です。
- 本文中で注釈を入れる
→インデックス投資(株式市場全体に連動して値動きする商品を活用した投資方法)を活用すれば~ - 本文とは別に注釈をつける
→インデックス投資:株式市場全体に連動して値動きする商品を活用した投資方法。日経平均株価やダウ平均株価といった株式市場全体の動きに連動して商品の値段が変わるため、価値が暴落する可能性が低く、リスクの低い投資方法として知られる。
コツ2. 正確でわかりやすいたとえ話/具体例を盛り込む
専門用語を使う・使わない以前に、概念や構造そのものの理解が難しいケースもあります。先ほどの例で言えば「江戸幕府」がそれに該当し、江戸幕府を正確に理解してもらおうとすると、ものすごく複雑な説明が必要になります。
しかし、先の文章のねらいは「徳川家康をわかりやすく説明すること」でした。つまり、「江戸幕府」の説明はあくまでオマケ。江戸幕府を詳しく説明している余裕はないため、江戸幕府を「内閣や国会みたいなもの」と説明しました。
もちろん、両者は厳密に言えば別物です。が、「江戸幕府ってなんなの?」という疑問を放置することなく、かといって江戸幕府の説明に集中しすぎてテーマから脱線することもないよう、バランスをとった調整の結果です。
ただし、このようにたとえ話を活用する場合に注意したいのは、「たとえ先(今回で言えば内閣や国会)」と「たとえ元(今回で言えば江戸幕府)」の両方をしっかり理解している必要があること。
実際、たとえ元については理解が進んでいるものの、ヘンに初心者目線を意識した結果、たとえ先に関する理解が甘くなるケースが多いです(若い人に理解してもらおうと「戦国武将」を「アイドル」にたとえたが、肝心のアイドルへの理解が甘く、よくわからんたとえ話になった……というようなケース)
なお、この手のたとえ話をするときは「~のようなもの」「~というイメージ」のように、「厳密には別物である」ことはしっかりと明示しておきましょう。炎上や誤解のもとになります。
コツ3. 図解やイラストを最大限活用する
専門用語を避けても、たとえ話を使っても、なおわかりづらい説明になってしまうことは珍しくありません。とくに多いのが「関係性」や「位置関係」「情景」などを伝える場合です。
これらは、頑張ってテキストで説明しようとしても限界があります。そんなときは、図解やイラストの出番です。図解やイラストは、テキストだとかなり回りくどくなる内容を一発で説明できる効果があります。
またまた具体例を使いましょう。皆さんは、古代の日本を攻めてきた「刀伊」という異民族と、その侵攻経路をご存じでしょうか?
おそらく「知らないし聞いたこともない……」という方が大半でしょう(かなりニッチな分野なので、まったく問題ありません)。しかし、以下の図解を見ればどうでしょうか?
皆さんは「刀伊」なんて見たことも聞いたこともなかったはずなのに、とりあえず「ああ、ヤバそうな奴らが朝鮮半島のほうから博多に攻めてきたっぽい」ということをパッと理解できたのではないでしょうか。これが図解とイラストの力です。
ただし、図解やイラストはとにかく制作コストがかかるため、乱用するのは避けたいところ。大切なのは、初心者がつまずきやすい「ここぞ」というポイントを正確におさえ、図解やイラストを効果的に活用することです。
4. “素人”の力を借りる
先ほどから繰り返しているように、専門家が初心者目線をもつのは非常に難しいです。そこで大切なのは、あえて「素人」の意見を聞くことでしょう。
たとえば、自社が「資産運用で日本最高峰のパフォーマンスを発揮している投資会社」だとします。しかし、自社のことをよく知らない人に向けて情報発信したい場合、「資産運用ってなんなの?」「投資会社ってなんのために存在するの?」と、事業内容以前の疑問をもたれることを考慮しなければなりません。
そこで大切なのは、コンテンツ制作の段階で「素人」の意見を聞くことです。この「素人」とは、言い換えれば「編集者」のこと。とくに初心者向けコンテンツを制作する場合、編集者は「コンテンツ制作に強く、専門分野には弱い」くらいがちょうどいいと思っています。そのほうが、ターゲットとなる初心者の目線に寄り添えるからです。
現代は、誰もが「発信者」となり、編集者を介さず情報発信できる時代です。そんな時代でも、編集者が必要とされる理由はここにあります。
「初心者目線」と「専門分野への深い理解」が必須
ここまで、初心者向けコンテンツについて詳しく解説してきました。制作に大切なのは、「初心者目線」と「専門分野への深い理解」を両立させることです。
もちろん、一人あるいは一社では限界があるでしょう。そんなときは、「初心者目線」に気づかせてくれる外部のコンテンツ制作チームとタッグを組み、対極にある二つの視点をもちつつ制作を進めていくのがベストでしょう。
GIGのコンテンツ制作チームは、多種多様な専門分野・領域をもつクライアントのコンテンツ制作に並走し、コンテンツ制作のプロとして、そしてユーザーの代弁者として、ニーズにマッチしたコンテンツを制作してきました。
「言われてみれば、コンテンツ制作に初心者目線が足りなかったかも……」と思った方、GIGまでお気軽にお問い合わせください!
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齊藤 颯人(とーじん)
1997年7月生まれ。大学3年次に学生フリーライターとして独立。卒業後は新卒フリーランスとして活動し、2020年秋に業務委託でGIGにジョイン。Workship MAGAZINEでの記事執筆・編集などに従事し、2023年4月に社員転換。歴史ライター・ファイナンシャルプランナーとしても活動中。