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アジャイル開発の費用/料金相場はいくら? 現役エンジニアが解説!
2022-07-31 制作・開発
「アジャイル開発」は、近年注目されている開発手法です。背景には、スピード感のあるアジャイル開発のスタイルが、トレンドの移り変わりが早い現代社会とマッチしているという事情があるでしょう。
こうした流行を踏まえ、「アジャイル開発を取り入れてシステム開発を依頼してみよう」と思った際、一番気になるのはコスト面ではないでしょうか。
今回は、アジャイル開発の費用や料金・見積もり手法など、コスト面を中心に解説していきます。
アジャイル開発とは?
アジャイル開発とは、「計画→設計→プログラミング→テスト」といった各工程を短いスパンで繰り返し、開発中にユーザーのフィードバックを得ながら完成度を高めていく開発手法のことを指します。 この短いサイクルのことを「イテレーション」や「スプリント」とも呼びます。
アジャイル開発という概念が生まれたのは、2001年です。当時アメリカのユタ州に集ったエンジニアたちが議論し、その結果としてまとめられた文書が「アジャイルソフトウェア開発宣言」と呼ばれるものです。これが公式にアジャイル開発を定義した文書だと考えられています。
また、「アジャイルソフトウェア開発宣言」の背後にある原則が記された「アジャイル宣言の背後にある原則」という文書もありますので、こちらも要チェックです。
近年では、アジャイル開発は主流な開発手法のひとつとなりました。2001年に宣言された内容が実際に価値を生み出し、世界中で広く受け入れられてきたことの証ともいえます。
なお、アジャイル開発の代表的な手法に、チームを組んで役割やタスクを分散し、チームでコミュニケーションをとりながら開発を進める「スクラム開発」があります。
ウォーターフォール開発との違い
「ウォーターフォール開発」とは、「要件定義→設計→プログラミング→テスト」といった各工程を段階的に完了させていく、一般的な開発手法です。
要件や機能を固めてから開発するため、プログラミングを始めるまでに時間がかかる傾向にあります。一方で、予算を立てやすい、開発計画が立てやすいといった特徴もあります。
ウォーターフォール開発では、機能ごとに開発サイクルを繰り返すアジャイル開発と違い、開発途中での仕様変更に対応するのが難しいです。仕様の間違いなどが発覚した場合、前の工程から見直すことになるので、追加費用が発生したり、リリース延期につながったりする可能性もあります。
また、ウォーターフォール開発で不具合が発生した場合には、クライアントは仕様書や設計書などのドキュメントの品質から原因を探ります。
一方、アジャイル開発ではそもそもこういったドキュメントを作成していないことが多いです。証拠となるドキュメントがない場合、意見の食い違いなどを引き起こし、やがて大きな問題へと発展する恐れがあるため注意しましょう。
アジャイル開発のメリット
アジャイル開発の大きなメリットとして、短期間の開発を繰り返すことで、トレンドやニーズの移り変わり、またそれらに対応するための要求や仕様の変更を行いやすいことが挙げられます。小さな単位で「計画→設計→プログラミング→テスト」を繰り返すため、仮にテストでバグが発覚しても、工程をほんの少し巻き戻すだけで済みます。
また、ウォーターフォール開発と比べると、早い段階からユーザーのフィードバックを得て開発に反映させることができるのも特徴。ユーザーにとって本当に価値のあるプロダクトをスピーディーに作りやすいのもメリットです。
アジャイル開発のデメリット
計画工程で仕様を固めていないため、開発の方向性がブレやすいのはデメリットでしょう。改善を繰り返しパフォーマンスをあげることが前提にあるものの、テストやフィードバックを踏まえた仕様の変更・追加の回数が増えるにつれ、当初の計画からズレが発生してしまうことも。
ウォーターフォール開発の場合は、最初に機能設計とあわせて、開発スケジュールも決めるのが一般的です。スケジュールを詳細に設定しておくことで、進捗具合を把握することができます。
しかし、アジャイル開発では細かな計画を立てないため、スケジュールや進捗具合が把握しにくくなります。チームごとに小さな単位で開発を繰り返すため、全体を把握しきれず「気付いたら納期に間に合わない……」なんてことも十分に考えられるでしょう。
アジャイル開発の見積もりで使われる手法
ウォーターフォール開発ではあまり聞きなれない手法で見積もりを出すのが、アジャイル開発の特徴です。ここでは、アジャイル開発で使われる代表的な見積もり基準や、算出手法について確認しておきましょう。
見積もり基準は「ストーリーポイント」
ストーリーポイントとは、ユーザーストーリーを実現するのに必要なコストを見積もるための単位です。
※ユーザーストーリー
開発するシステムがユーザーに対して提供する価値を表したもの。アジャイル開発においては要件定義の代わりに使われる。
ユーザーストーリーは「<who>として、<what>を達成したい。それは<why>だからだ。」といったテンプレートで表現されるのが一般的です。
例:銀行の利用者として、オンラインで口座振り込みを達成したい。それは外出するのが面倒だからだ。
つまり、ストーリーポイントを使った見積もりは、ユーザー視点に立った見積もり手法といえます。
ストーリーポイントを使った見積もりは、一般的な時間単位での見積もりと比較されることが多いです。時間見積もりの問題点は、見積もる人の経験やスキルによって見積もりに差が出ること。
見積もりをする人と実装する人が違う場合、感覚の違いから見積もり通りに実装作業ができないケースもあります。また、時間見積もりを行う場合、見積もりと実装は同じ人が担当しなければ、正確な見積もりを出すことが難しくなります。
しかし、ストーリーポイントを使った見積もりも、見積もり担当者がなんとなく行うだけでは良い結果が得られないでしょう。正確な見積もりを出す手法として、「プランニングポーカー」という手法が有名です。
プランニングポーカーとは?
プランニングポーカーとは、「1、2、3、5、8、13…… 」といったフィボナッチ数列が書かれたカードを使って、タスクの規模を相対的に見積もる手法です。
※フィボナッチ数列
イタリアの数学者・フィボナッチが紹介した数列。自然界に多く存在する数列で、数多くの分野で活用されている
やり方はとても簡単。まず、作業を行うメンバーを集め、それぞれに数字が書かれたカードを配ります。そして基準となるユーザーストーリーを設定し、そのストーリーに先ほど見た「ストーリーポイント」をあてはめます。
その後、それぞれのタスクに対して開発を担当するメンバーが思いのままに数字のカードを出し合い、提示したカードについて「なぜその数字なのか」を述べます。
このカードに書かれた数字は、先ほど説明した「ストーリーポイント」になります。つまり、基準となるユーザーストーリーに設定されたストーリーポイントと比べ、その作業が何ポイントといえるのかをメンバー同士で議論し、認識をすり合わせていくのです。
こうしてメンバー全員の考えを共有することで、ひとりで考えている時には漏れていたかもしれない懸念材料を洗い出すことができます。
一通りディスカッションを終えたら、再度カードを出し合います。このサイクルを数回繰り返すことで、メンバー全員が納得できる見積もりに近づけるようになります。
なお、ストーリーポイントはあくまでタスクを相対的に評価するための目安で、工数や難易度などと紐づくわけではありません。
ストーリーポイントを使った見積もりであれば、時間見積もりのような認識ズレも起こりにくいでしょう。
アジャイル開発の見積もりの流れ
アジャイル開発の見積もりは、以下の流れで行われるケースが一般的です。
1. ベロシティを割りだす
「ベロシティ」とは、チームの開発速度を表す指標のひとつ。1サイクルあたりに提供できる作業量をストーリーポイントで表します。
1サイクルのことは「スプリント」と表現するのが一般的です。1スプリントを2週間としている会社もあれば、4週間としている会社もあり、システム開発会社によって異なってくる箇所です。おおよその数値は、過去のスプリントで完了した作業量をベースに算出されます。
たとえば、1スプリントが2週間でベロシティが40ポイントの開発会社の場合、ストーリーポイントが8ポイントのユーザーストーリーを、2週間で5件消化するスケジュールを組み立てることになります。
2. タスクに必要な工数を見積もる
ベロシティを割りだした後、開発要件に合わせて必要な各項目の工数を見積もります。ここで必要な人員や工数、設計~テストまでの工程や期間などが決まります。
スクラム開発を採用している場合は、プロダクトバックログにリスト化されている項目が見積もりの対象となります。
※プロダクトバックログ
ロードマップと要件に基づいてチームが行う作業に優先順位をつけたリストのこと。リストの一番上に最重要項目が表示される。
また、アジャイル開発では、進捗などの報告に必要なミーティングや、その他の小さな工数なども見積もりに含まれますので、注意が必要です。
それぞれのタスクに必要となる工数が決まると、おおよその見積もり金額が算出できます。
アジャイル開発の費用/料金相場
アジャイル開発は、プロダクトの価値を最大化することに責任を負う「プロダクトオーナー」、スクラム(チーム)のリーダーとしてメンバーをまとめる「スクラムマスター」、スクラムの一員として手を動かす「プログラマー」の三者によって構成されるチーム単位で進められることが多いです。
それぞれの役職の報酬相場は、以下の通り。
・プロダクトオーナー:100万円~200万円/月
・スクラムマスター:150万円~250万円/月
・プログラマー:70万円~120万円/月
彼らの単価を合計したチーム単価と、開発に必要なスプリント数を掛けると、開発費用を算出できます。式で表すと以下のようになります。
1スプリントあたりのチーム単価 × スプリント数 = 開発費用
この方程式が、アジャイル開発における基本的な開発コスト算出方法です。では、具体例を使って実際に開発費用を出してみましょう。
・プロダクトオーナー:150万円/月
・スクラムマスター:200万円/月
・プログラマー:100万円/月 × 4名
たとえばこのチーム体制の場合、1スプリントあたりのチーム単価の合計は、750万円となります。このチームが何スプリントを実施するかで総額が決まります。
見積もりしやすいように1スプリントを1ヶ月として考えると、初回リリースまでに6スプリントを実施するチームの開発コスト総額は、「750万円 × 6スプリント = 4500万円」となります。
スプリント数の見込みは「ストーリーポイント」や「工数」を利用して算出できます。
なお、チームの体制が決まっている場合は、別案件で稼働していたチームがそのまま今回の案件にアサインされるケースが多くなります。その場合は、初期要求から見積もったポイントと過去案件で実証済みのチームベロシティからスプリント数を算出できます。
関連記事:アジャイル開発に強い開発会社の選び方とは? 現役エンジニアが解説!
アジャイル開発の費用を抑えるコツ
品質を確保したうえで、できるかぎり費用を抑えるにはどうすれば良いのでしょうか。費用を抑えるコツについて解説します。
コツ1. システム開発に使える補助金を活用する
システム開発を行う場合、国の「補助金」制度を活用できることはご存知でしょうか。システム開発の規模感や目的にもよりますが、利用できる補助金はおもに4種類存在します。
補助金 | 詳細 | 補助額(通常枠) |
ものづくり補助金 | 競合優位性に優れたサービス開発を計画している | 100万円~1000万円 |
事業再構築補助金 | コロナの影響で売上が減少して事業転換を計画している | 100万円~8000万円 |
IT導入補助金 | ITツールを導入して業務効率化・生産性向上を計画している | 30万円~450万円 |
小規模事業者持続化補助金 | システムを活用して販路拡大を計画している | 50万円 |
1つのシステム開発で活用できる補助金は1つだけです。ただ、申請すれば必ずもらえるものではなく、補助金によっては事業計画案や賃上げ計画案などの書類を提出したうえで、審査を受ける必要があります。申請手続きは正直に言ってかなり複雑です。
しかし、審査が通り採択されれば、システム開発の費用は抑えられるはずです。こういった補助金制度があること自体あまり知られていませんが、活用できそうなら積極的に活用するようにしていきましょう。
コツ2. 準委任契約(ラボ型契約)を活用する
日本のエンジニアに開発依頼を行えばコストが高くなるため、 アプリ開発のコストを安く抑えるために海外のエンジニアに委託・発注する手法を「オフショア開発」といいます。
オフショア開発には、おもに「請負型開発」と「ラボ型開発」の2つの契約形態があります。このうち、アジャイル開発と相性がいいのはラボ型開発とされています。
ラボ型開発とは、特定の業務に対して報酬が発生する準委任契約で、基本的には3ヶ月〜1年ほどの一定期間で契約を締結します。人材ベースでシステム開発を発注する点が特徴で、案件ベースではありません。
通常、システム開発における準委任契約とは、クライアント先に常住する形(SES)の契約形態のことを指します。ラボ型開発はクライアント先に常住するタイプではありません。受注を受けた開発会社で、クライアント専任のチームを形成して開発を行います。
アジャイル開発で見積もりをしないで開発をスタートさせたい場合には、こういった定額制の契約を結ぶことがおすすめです。おおよその枠組みだけを決めてプロジェクトをスタートでき、仕様が変更されてもコストが変動しないのは、システム担当者にとって心強いのではないでしょうか。
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