品質向上に繋ぐデザイン指標の作り方【デザインコンサルタント・長谷川恭久氏 伝授】|東京のWEB制作会社・ホームページ制作会社|株式会社GIG

品質向上に繋ぐデザイン指標の作り方【デザインコンサルタント・長谷川恭久氏 伝授】

2018-12-13 勉強会

こんにちは、株式会社GIG インターンの岸です。

GIGでは先日、社外スピーカーをお招きした勉強会「Tech Trend Talk vol.8 品質向上に繋ぐデザイン指標の作り方」を開催しました。今回はその様子をお伝えします。 

品質向上に繋ぐデザイン指標の作り方

今回の講師は、デザインコンサルタントの長谷川恭久さん。「品質向上に繋ぐデザイン指標の作り方」と題して、Webサイトやアプリケーションのデザインに指標を設定する意義や、その実践方法について教えていただきました。

長谷川 恭久:Webやアプリに特化したデザインコンサルタント。組織の一員となるスタイルでデザインに関わる企業の課題を解決している。全国各地でデザイン関わる様々なトピックで講演を行う。

当日使用したスライドは以下からご覧いただけます。

品質向上に繋ぐデザイン指標の作り方 

デザイン指標とは

長谷川さんはデザイン指標を以上のように定義しました。

長谷川さん:
「データや数字などの組織における共通言語と組み合わせて、具体的な指標として提示する必要があります」 

デザインをどう計測するのか

デザインを計測する際に、ビジネスで用いられる指標がそのまま適用されていることに長谷川さんは警鐘を鳴らします。

長谷川さん:
「デザインの評価を、PVやMAU(月間アクティブユーザー)で判断していませんか?しかし、それはビジネスを計測しているだけです」

長谷川さんは、ビジネス指標に基づいた悪いデザインとして、Instagramで実際にあった広告を例に取り上げました。

長谷川さん:
「この広告は白い靴の上に髪の毛を模した線を配置しています。ユーザーがこれを払いのける(スワイプアップする)ことで、購入ページへコンバージョンする仕掛けになっています。コンバージョンは上がると思いますが、この広告から流入したユーザーは良い印象を感じるでしょうか」

長谷川さん:
「ビジネス指標においてコンバージョン率の上昇は良いことかもしれませんが、ユーザー体験が向上するわけではありません」 

なんでも数値化できる弊害

技術の発展にともない、PV数やコンバージョン率に限られずさまざまな指標が数値として計測できるようになりました。その結果、ビジネス的には正しい施策を行っても、ユーザー体験としては悪い影響を与える事例が出てきています。

長谷川さん:
「ビジネスにおいて指標は必要です。しかし、ビジネスの指標とデザインの目標達成がイコールで結ばれているとおかしなことになってしまいます」

長谷川さん:
「デザイナーは、『デザインの価値』という漠然とした価値観をしっかりと説明する必要があります」 

指標の判断次第で大きく変わる

指標を明確に定義していないと、デザイナーは最適なものづくりができなくなります。

長谷川さん:
「あるWebサイトにおいて離脱率が70%という状態は高いでしょうか、低いでしょうか。コンテンツが悪いから70%のユーザーが離脱しているという考え方もできますし、ユーザーのニーズが満たされたから離脱していると考えることもできます」

「離脱率が高い=悪い」とは一概に言えませし、判断を間違えると次の施策が正反対といって良いほど異なる場合があります。このように見方次第で良くも悪くも捉えることができる指標は役に立たないのです。 

「良くない指標」の共通点

長谷川さんは、デザイナーにとって「良くない指標」には以下のような特徴があると指摘しました。

  • 様々な解釈が生まれる(判断が属人化される)
  • 具体的なユーザーの姿・行動が見えにくい
  • ビジネス中心で計測されている

長谷川さん:
「デザイナーの皆さんは、これらの特徴がみられる指標をデザイン指標に置き換える必要があります」

デザイン指標の作り方

アクティブユーザーやページビューといったビジネスゴールだけでは、デザインに落とし込むことはできません。

長谷川さん:
「プロダクトの品質向上のための、デザイン指標を設定する必要があります。ビジネスゴールを、ユーザー視点から捉え直して定義することが、デザイン指標をつくる第一歩です」

長谷川さん:
「ビジネスゴールと紐づいたデザイン指標を設定することで、ビジネスサイドにも納得してもらえる提案ができます」 

良いデザイン指標の条件

長谷川さんによると、良いデザイン指標は、以下の5項目を満たしていることが条件なのだそうです。

  • 実行可能:指標を見ただけで、次に何をすべきか分かる
  • 理解可能:誰が見ても理解でき、複数の解釈が生まれない
  • 比較可能:目標をどれだけ達成しているか計測できる
  • 割合・比率:全体から見たシェアがどのくらいか分かる
  • 行動・態度:ユーザーの行動や態度が反映されている

長谷川さん:
「最初の条件4つはビジネス指標でも可能な限り含めるべきものですが、ユーザーの行動や態度を含めるのは、デザイン指標ならではかもしれません」 

良い指標の仕組み

長谷川さんは良いデザイン指標の具体例を挙げて、その仕組みについて解説してくれました。

長谷川さん:
「まず、『最後まで記事を読む』というユーザーのゴールに基づいて定義されています。次に他の期間と比較するために、『毎週』と区切っています。また、目標がすぐ分かるように全体の20%という数値を立てています」

長谷川さん:
「この20%という数値は、最初は適当に設定して大丈夫です。数値をいくらにするかについて議論をする時間はもったいないですし、結局決まらない可能性があります。最初に勘で設定して、あとから調整していくようにしましょう」 

デザイン指標を早期につくる理由

プロジェクトを進めるときに、デザイン指標を早期に作るメリットは以上のようであると、長谷川さんは述べました。

長谷川さん:
「デザイン指標を初期に設定することで、作られるデザインの批評・評価がしやすくなります。デザイナーも何を目的でものを作っているのか理解しやすくなるのもメリットです。」 

デザイン指標のポイント

最後に、デザイン指標のポイントをまとめていただきました。

  • ユーザーの成功体験を言語化する
  • ビジネスゴールをユーザーゴールに置き換える
  • 回数をこなして精度をあげる
  • 定期的に計測してデザインの価値を示す

長谷川さん:
「良いデザイン指標を作ることは非常に難しいですが、数をこなして精度を上げていきましょう。また自分が指標を計測できる立場にない場合は、まず計測できる環境を作ることが大切です」 

Q&A

Q:
ビジネス指標とデザイン指標の関係性をどうやって評価するのでしょうか?

長谷川さん:
「まずは、ビジネスサイドにビジネスとデザインでは計測する指標が違うことを理解してもらう必要があります。ビジネスゴールをユーザーゴールに置き換えた比較表を示すと、多くのステークホルダーは理解してくれます。ビジネス指標とデザイン指標は表現が異なるだけで、向いている方向は一緒です」 

まとめ

勉強会のあとは、懇親会です!参加者のみなさまと各々お酒やソフトドリンクを手に、乾杯しました!

長谷川さんに質問したり、意見を交換をするなど、社内外関係なく交流できる場はとても貴重です。

GIGでは月1回のペースで社外向けの勉強会を開催しています。デザイナーに限らず、エンジニアやディレクターなども勉強会に参加しており、全社的なスキル向上の良い機会となっています。

僕はデザイナーではありませんが、今回の勉強会を通じて、ユーザーにとってより良いものを提供するために、ビジネスサイドの視点だけでなくユーザー視点でものづくりをする姿勢が大切だと改めて感じました。

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